【自然農】初期生育を確保する為の里芋の芽だし栽培【寒冷地】

水はけの悪い場所でも栽培しやすい里芋

 里芋はねっとりとした食感が特徴的で、主役にはなれなくとも縁の下の力持ち的な野菜だ。日持ちしやすいし、収穫物をそのまま翌年の種イモに出来るため自給用にはかなり相性の良い野菜だ。販売用の栽培としても、直売所ではライバルが少なく、でも需要はありそうなイメージがある。

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 里芋の栽培上の特徴は何といっても、水を大変好むと言う点だ。ナスが水食いであることの比にならないくらい水を欲しがる作物だ。雨が降ったら水浸しになるような畑や水田でも栽培できる、むしろ向いている圃場だと言えるくらいだ。

 水はけの悪い畑は基本的に扱いずらい。雨が降ったらぬかるみやすいし、乾くとカチカチに固まってしまいがちで、多くの作物には不適な場所だ。そのため、硬盤層を物理的に破壊したり、排水路を掘ったりして普通の畑として使えるようにする必要がある。

 里芋なら労力と時間のかかる土壌改良をそんなにしなくてもそのまま植え付けできる。むしろ水はけの悪い土を好む里芋は大変ありがたい作物だ。

芽だしをして梅雨までにある程度の大きさまで育てる

 里芋の一般的な栽培では黒ビニールマルチを張り、十分に地温を上げる。発芽適温が20~25度と高く、寒さに弱いため霜の心配がなくなる頃に種イモを植え付ける。

 私たちはなるべく、石油資材を使わずに、不耕起で栽培したいのでマルチは使わない。すると、どうしても植え付けが遅れがちで発芽も遅い。無加温だと発芽が揃うまでに最長一ケ月ほどかかる。里芋は水を好むため、梅雨時期にぐっと大きくなる。そのため、梅雨入りまでにはある程度の大きさまで育っていてほしい。

 長野県の標高800m付近の当地は、五月中旬にようやく最高気温25度に届き、最低気温が10度を超えてくるほど冷涼な気候だ。五月中下旬に種イモを植えても、六月半ばの梅雨入り頃にやっと地面に顔を出してくるくらいだ。そこで一工夫する。

 それは種イモの芽だし(催芽)だ。畑にそのまま植え付けるのではなく、あらかじめ芽が伸びてくるまで家の中や日当りの良い場所で管理してやる。それを四月の終わりごろにやっておけば、植え付けてすぐに発芽してくる。

 芽だしは簡単で、育苗用のビニールポットに種イモが隠れるように土を詰めておくだけだ。後は日中は火のあたる場所、夜間は室内に取り込んでおく。一月ほどで発芽するため、植え付ける予定日から逆算して準備する。

220424 里芋芽だし
ポリポットで芽だし

 数株であればポットが楽だが、数が増えると面倒になる。今回、私たちは15株(種イモ1kg分)で育苗トレイ一枚で済んだ。数が多い場合は大き目のプランターを用意して、そこに並べていけば50株くらいまでは楽に管理できるだろう。

 夜間や天候の悪い日は家の中に取り込んでおけば、土が乾かない様に気を付けておくだけで簡単に催芽できる。逆に水やりしすぎると種イモが腐る為注意する。上から不織布を掛けておくと保湿・保温になって良いだろう。

植え方の工夫

 私たちは五月二十五日ごろに芽だしした種イモを畑に植え付ける予定だ。不耕起栽培のため、今年も耕されていない場所に植える。通常の土に植える場合と違って、少し工夫がある。

 里芋栽培において重要になってくるのは、適切なタイミングで土寄せをすることだ。というのも、里芋は種イモの上に親芋ができて、その周りに食べる部分の子芋や孫芋ができる。そのため、土寄せをして種イモの上に土がないと芋が出来ない。
 草が生えていなければ土寄せは簡単だ。私たちは草を生やしながら栽培するため、土寄せがやりづらい。

 これを何とかするためにyoutube上で自然農の営農・栽培技術を公開なさっている「島の自然農園」のこちらの動画(→動画タイトル: 【自然農】耕さない里芋栽培 「親芋」を植えるメリット 2021年4月10日 【natural farming】)が参考になった。

 この方の方法はスコップで深さ15cmほどの植え穴を掘り、その底に種イモを植え付ける。芽が出て、地上部が生育するにつれ、掘りあげた土で穴を埋め戻すことで土寄せの代わりにするという手法だ。
 これなら極力土を動かすことなく、土寄せをすることができる。詳しくはぜひ、動画を見て頂きたい。

210514 里芋植え付け

 実は昨年この方法で栽培してみた。しかし、なかなか発芽して来ず、発芽しても生育が良くなく、収穫まで至った株はほとんどなかった。この原因として、寒さによる発芽・初期生育不良と水はけの悪さから植穴の冠水があげられる。

 動画でも触れられているが、穴が深いため穴の底まで日があたりづらくなかなか地温が上がらないと言う欠点がある。私たちの圃場は地域的に寒い事もあり、なおさら地温が確保できなかったと考えている。
 さらに里芋の圃場はかなり地下水位が高く、雨が降ると掘った植穴が冠水してしまった。いくら水を好む里芋といえど、芽が出る前に冠水すると種イモが腐り発芽しないそう。

210521 水のたまった里芋の植え穴
冠水した植穴


 そのため、私たちの圃場ではこの手法の里芋栽培は難しいだろうと考えている。

 そこで今年は通常通り、深さ10cmほどの深さに種イモが埋まるように植え付けようと思っている。発芽は催芽してあるため活着すればすぐに育ってくるはずだ。初期生育を邪魔しない様になるべくこまめに株元は草取りをして、生育に合わせて土寄せをする予定だ。
 梅雨が明けて暑さと乾燥が本格化する時期になるまでに土寄せを終えて、草マルチを厚く敷いていく。

栽培結果はいかに……

 今週からこのあたりも最低気温が10度を超えるようになってくる。昨日しっかり雨が降ったので地温が上がるのを待って、今週中に植え付けようと思う。
 すでに里芋の芽だしは順調で本葉が展開しかけている株があるため、早めに植えたいところだ。

 この栽培方法に加えて、今年から複数の野菜に「垂直仕立て栽培」を試してみようと思っている。「垂直仕立て栽培」は道法正徳さんが考案した無肥料で真価を発揮する栽培技術だ。わたしたちの方針とも合うため、色々な野菜で試してみようと思っている。

 その結果も踏まえて、収穫を迎えたら報告記事を作成しようと思っている。日々の栽培過程はインスタグラムでも更新して行くため、そちらもぜひ見ていただきたい。

【草生】草生栽培なら勝手にコンパニオンプランツを活かした栽培が出来る【混植】

コンパニオンプランツとは

 コンパニオンプランツは、育てたい植物と一緒に(コンパニオン: companion =共生)育てる植物をさす用語だ。これを一緒に育てることで病害虫の発生を抑えたり、被害を軽減することができたり、連作障害を予防することができると言われている。最近では雑誌や農業書でも広く取り扱われ、一般的に活用されるようになった栽培技術だ。

 例えば、トマトを栽培したいときはコンパニオンプランツとして、マリーゴールド、バジル、ネギなどがあげられる。
 マリーゴールドはセンチュウを抑制し、バジルはその香りで虫をよける効果がある。ネギは根に共生する微生物が殺菌作用のある分泌液を放出し病害対策になる。ネギの代わりにニラを植えても良い。

 どの野菜にも相性の良い植物というのは少なく、組み合わせによってはお互いの成長を阻害することもあるため、注意が必要だ。

 自然界を見ても、単体の種の植物が繁茂している光景はあまりない。植物はお互い助け合いながら群生しているということだ。これを畑でも再現することでより自然に近く、健康的に野菜を育てることができる。

 畑が狭い時にも有効で、少ないスペースで多くの野菜を育てることができる。本来ならトマトだけの畝も、間にバジルを植えればそれも収穫できる。しかもお互いが助け合って良く成長する。

 良い事だらけのコンパニオンプランツだが、欠点もある。それは管理作業が増えたり、やりにくくなることだ。
 通常、一つの畝には一つの植物しか植わっていない。そのため、同じ作業はまとめて行えるしやりやすい。しかし、コンパニオンプランツを植えると、植わっている植物が増えるため、畝が混雑し手間取ることがある。特に草取り・草刈りが大変になる。これは工夫次第で多少は気にならなくなる。一直線上にピシッと並べて植えたり、株間をきちんと一定にしておいたりすると、作物が植わっていない所を一気に作業できるようになり効率があがる。

コンパニオンプランツとして利用される植物

 色々な植物がコンパニオンプランツとして利用されるが、代表的な種類と効果を少し紹介しようと思う。

①マリーゴールド
 キク科の植物で、オレンジの花がきれいなマリーゴールドは虫よけ効果があるとされてている。根菜類の肌を傷つけるセンチュウ抑制に効果的とされており、よくジャガイモや大根などと混植される。また、トマトやきゅうりなどの果菜類とも相性がなく、アブラムシを寄せ付けにくくなると言われている。

2021 マリーゴールド

②ニラ
 ニラは土の殺菌効果あると言われている。殺菌と言っても全ても殺すわけではなく、悪い菌と良い菌のバランスを整えてくれる。苗を植えるときに一緒に植えると、ピーマンなどに良くみられる青枯れ病や萎凋秒などを抑制する。
 もちろんニラ自体も収穫可能で、畑の収穫量をあげることができる。しかも、多年草なので不耕起栽培の場合は毎年同じ場所に生えてくる。植えなおさなくとも、コンパニオンプランツとして利用できる点も優れている。

③マメ科の植物
 ざっくりしているが、マメ科の植物もコンパニオンプランツとして利用されることが多い。落花生や枝豆など食用にもなるものやクローバー、ヘアリーベッチなどのカバークロップ、グラウンドカバーとしても利用されるものもある。
 マメ科の特徴は根粒菌と呼ばれる共生菌による窒素固定だ。これによって空気中の窒素を植物が利用できる形で地中に取り込んでくれる。その栄養分を使って、育てたい作物の育ちが良くなる。

 これら以外にも効果的と言われている植物の組み合わせはたくさんあり、畑をにぎやかにしてくれ、健康な野菜が育つ手助けになる。「コンパニオンプランツ」でアマゾンで検索すると参考になる書籍が多数見つかるので見てみると良いだろう→(Amazon検索結果)」。

雑草がコンパニオンプランツになるのではないか

 雑草と書いたが、雑草という名の草は無い。それぞれ名前があり、どんな環境を好むのか、どんな植物と一緒だと育ちが良いのか異なる。つまり、一つ一つ独立した植物だ。

 コンパニオンプランツは多品目栽培や自給的な小規模栽培で効果的な栽培技術だ。当然コンパニオンプランツを栽培に活用するには自分でタネを購入して、種まきや育苗をして畑に植えることになる。持続的で自分達の生活の範囲で循環する農業を目指している私たちとしては、外部から種を持ち込まないといけないのであればちょっと利用しにくい。

 余談だが、私たちは緑肥用にライ麦を自家採種している。まだまだ量が少ないがほぼ放置で栽培できるので、使いたいところに好きなだけ播ける自家採種はやる価値がある。最初の土壌改良には重宝する。またマリーゴールドも採種が簡単なので、今年栽培に使う分は簡単に採種することが出来た。

 自然農では基本的に耕さず、草や虫を敵とせず、自然の中でともに生きている仲間として見る。ときにはこちらに牙をむく事もあるが、それも自然の一部であり、大きな循環の中でいずれこちらに好影響をもたらしてくれる。
 不耕起で草生にしていると一年中なにかしらの草が生えている。それはイネ科の草(イタリアンライグラスやエノコログサ、メヒシバなど)やシソ科(ホトケノザ、ヒメオドリコソウなど)やマメ科(クローバーやカラスノエンドウなど)などこれだけではなく、多種多様な種・属の草が季節に合わせて生えてくる。

 単にコンパニオンプランツとして目的の作物に合わせて1・2種類植物を植えておくよりも、はるかに多様性に富んだ植生が草を生やしておけば勝手にできあがる。生物的に多様性のある畑の中に一つ育てたい野菜があったとして、それだけが集中的に攻撃されると言うことが格段に減る。
 実際スナップエンドウの畝の脇に生えているライグラスにアブラムシがつき、それを狙ってテントウムシがたくさんいるのを今年も見た。スナップエンドウにアブラムシがついても、そのまわりには既に生態系が出来ているため、そこまで大きな被害にはならない。

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 草はわざわざ種をまかなくても、勝手にそのときの土の状態に合わせて生えてくる。どの草が生えてくるかである程度どんな性質の土かわかり、育ちやすい野菜の種類も決まってくる。そういった共生環境に自ずからなっていくのが自然農、自然農法なのではないだろうか。

 しかも、草なら管理しやすい。思い切ってざっと刈りこんでもこれからの時期、すぐにまた生えてくる。背が高くなる作物なら光合成や風通しに悪影響が出ないくらいまで放っておける。自然農では刈った草を畝上に戻す草マルチをすることが多く、数回草刈りをすれば草の勢いも落ち着いて来る。

自家採種でさらに草と共育ちするようになる(かも)

 ここでもう一つキーになることが自家採種ではないかと思う。一般的に自家採種実施者の経験をまとめると、自家採種を繰り返すほどに「畑に馴染んで」栽培しやすくなると言う。

 自家採種については自分自身の経験も少なく、実践者の実際の体験談から判断するしかない部分が大きい。だが多くの人が自家採種によって、育てやすくなり収量が上がった、さらには味も良くなってきたと言う実感を得ているのは確かだ。

 彼らの多くは自然農法実践者でもあり、草生で栽培している。そこで育った種は草と共に育った記憶を持っていて、より草と一緒に育ちやすくなっていくのかもしれない。

 自家採種にはたくさんの利点がある。これからも出来るだけ多くの種を自分たちの手で採っていきたい。

草生栽培(自然農)=コンパニオンプランツの宝庫

 常に圃場に草を生やしておくメリットは多い。土壌の劣化を防ぎ、昆虫などの小動物や微生物の生態系を守ることにもつながる。

 作物を植えた後も、なるべく草を全て取り除かずに共存させることでコンパニオンプランツとしての効果も期待できる。自然農や草生栽培で農薬を使わなくても綺麗な野菜が育つのはこうしたコンパニオンプランツ的な共存が良い影響を与えているのかもしれない。

 さらに緑肥を栽培することで生物多様性も深まり、土壌の保護にもなる。このあたりもまた詳しく記事にしたい。

 実際の栽培の様子はインスタグラムで随時更新して行く。

【自然農】畑の土と陽だまり育苗の夏野菜苗。種まきから約40日経ってどうなった?

寒い日や雨の日が多かった2022年の春

 私たちは今年も加温設備を必要としない「陽だまり育苗」で夏野菜の苗を作っている(→詳しくはこちらの記事をどうぞ)。より循環の環が閉じた野菜作りを目指して、市販の培養土や石油資源や資材をなるべくつかわず、身の周りのものを活用して育苗をしている。

 加温設備はほぼ使っていないが、私たち自身が寒いと思った日にはストーブやこたつを使っていたのでその熱は最大限有効利用した。また、家が断熱材などがほぼ入っていない古い家で朝にはその気温をほぼ変わらないことが多いので保温用に「種まきカバー」を購入した。

 これは使い捨てではなく、大切に使えば数年は使えそうなので良しとした。全部を全部自給するのは大変なので頼るところは頼っていこうと思う。こちらの製品はコメリなどの大手ホームセンターで販売されており、どこでも手に入れられる。サイズが51型育苗箱に合うサイズで、そこには底面給水トレイが便利だった。
・種まきトレー51型→https://www.komeri.com/disp/CKmSfGoodsPageMain_001.jsp?GOODS_NO=1447594
・種まきカバー→https://www.komeri.com/disp/CKmSfGoodsPageMain_001.jsp?GOODS_NO=1981892

 この種まきカバーのおかげで大分温度管理が楽になった。いずれは育苗ハウスを構えて踏み込み温床での育苗にも挑戦したいが、その際の保温資材として有用かもしれない。

 今年の三月・四月、また五月の第一週は例年に比べて寒い日が続き、雨も多かった。周りで営農されている方は降り続く雨でなかなか作業が進まず、全体的に生育も遅れがちなようだ。

 うちは自然の天候に苗作りを任せているため、雨の日・曇りの日は特に温度が上がらずちゃんと成長しているか心配な日々だった。徒長しやすい日が続いたため、少しでも晴れたらすぐに太陽に当て、曇りの日もできるだけ窓際で管理した。

 結論から言うと、今のところ順調に生育している。ただ、自家採種・自然農・自家製畑の土培土による問題や違いが出てきているのでそれぞれ紹介しようと思う。

トマトは自家採種の結果、生育がかなりばらついた

 うちのミニトマトは交配種の自家採種1年目の種を使っている。広く知られている通り、交配種は自家採種すると、親の形質がランダムにでて来て、同じものは採種できない。そのことから自家増殖禁止の登録品種であっても、交配種であれば自家採種しても良い事になっている。

 育苗段階でも、かなり株によって生育に差が出てきている。これは悪いことではなくて、どのトマトがうちの畑にあっているか判断することができる。つまり、様々な性質の出ている、交配種(F1)からの自家採種(F2)は自分の畑に合った品種を作っていくことができると言う意味だ。

 今年の育苗は定植予定地の土をそのまま培土に使っている。この土でしっかり育っている苗は畑に定植してからも良く生育すると考えられる。逆に育苗の段階で上手く育たないものは次の自家採種の対象からは省くことができる(これを選抜育種という)。

 40日の時点で本葉4枚になり、鉢上げを終えたものは32株あり、そのうち16株は四月二十九日に鉢上げしてある。この16株は特に生育の良かった、いわば1軍だ。同じ日に播種したものでも、一番大きな差があるもので写真の通りだ。種が違えば同じ土、環境でこれだけの差が出る。

220508 播種40日目のロッソ
同じ日に種まきしたミニトマト

 中には周りと比べて特に葉色が濃いもの、背丈が短いのに葉数が多いものもある。これらは特徴が他の大部分から外れているので種採りの対象にはしないが、収穫まで育ててみたいと思う。個人的には葉色が濃いものは吸肥力が強く、畑に植えたら良く生育するのかも。

成長がゆっくりなナス、低温障害が出てる?

 ナスは国際自然農研究開発センターの自農丸ナスを栽培することにした。ナスはトマトよりも生育が遅いため、より早く種まきをするのが基本のようだが、今年はすべて同時に種まきした。販売されている種なので、発芽率はほぼ100%だった。何とか種採りまでつなげたいところだ。

 昨日六日の土曜日に鉢上げした。まだ葉っぱの数は三枚と少なかったが、7.5cmポットで育苗していたため、肥切れになる前に鉢上げした。やはりトマトほどは根鉢ができておらず、少し苦労した。

 背丈は5cmほどでまだまだ小さいが、ここ数日で一気に大きくなった。ここ長野県は五月になっても数日は最低気温5度以下の日がある。第一週をすぎるとぐっと春らしくなり、夏の兆しも見えてくる。ナスにとってはこれからが生育適温だろう。

220508 播種40日目の自農丸ナス
本葉3~4枚


 陽だまり育苗は夜間、家の中にしまうが我が家は外の気温とほぼ同じくらいまで室温が下がる。一応、カバーをつけて毛布を掛けておいたがやはり低温障害らしき症状が出た。数日だけなので、この後何事も無く育ってくれることを願っている。

220508 播種40日目の自農丸ナス 低温障害?
低温障害

一番高温を要求するピーマン類は順調!

 ナス科作物の中で、発芽や生育に最も高温を要求するピーマンは一番小さいかと思っていた。実際、鷹の爪(自家採種1代目)はまだまだ本葉三枚ほどでナスよりも小さい。
 ところがこちらも初栽培の国際自然農研究開発センターの自生えピーマンはかなり順調に生育している。本葉は四枚展開しており、葉色も良い。中にはあまり大きくならなかったものあるが、15/20株はいい感じだ。

220508 播種40日目の自生えピーマン
葉色が良く、つやがある

 ナスとピーマンは同じ畝に作付予定なので、同じ土で育苗している。ナスよりも生育が遅いはずのピーマンが大きくなっている所を見ると、ここの土はこのピーマンに合っているのかもしれない。加温設備がないと、ピーマン類の育苗は、特に発芽の段階で難しくなるようだが今のところ順調だ。

 既に7.5cmポットの鉢周りを超えているため、早急に鉢上げしてあげたいと思う。

 ピーマン類の中で小果種にあたる鷹の爪は、今年自家採種一年目の種を使っている。同じ場所の土を使っているのもあって、生育ムラが少なく揃って生育している。

220508 播種40日目の鷹の爪
自家採種い

番外編。ズッキーニ

 ズッキーニは育苗してから畑に出す予定だ。品種は二種類で、二カ所の畑でそれぞれ栽培する。種採りもできるが交雑しやすいため、圃場を完全に分けた。
 一つはトキタ種苗のバンビーノ。豊産性でたくさん実がなるし、味も美味しい。普通のズッキーニよりもうまみが感じられる気がする。薄緑色の中太型のズッキーニだ。
 もう一つは品種名は不明だが、つる新種苗で取り扱われていた自然菜園採種のズッキーニだ。形状はごく普通の細長型で、おそらくブラックビューティを自然菜園で採種した種だと思われる。自然菜園はAZUMINO自然農スクールの竹内孝功さんが営まれている菜園で、自然農法で野菜を作っている。自然農法で採種された種ならすぐにうちの畑に馴染んでくれると思う。

 種まきは10.5cmポットに直接した。通常五日もあれば発芽しても良いが、種まきから数日気温が低い日が続いたため、なかなか発芽せずに一週間経ってからようやく発芽した。ウリ科の野菜は生育が早く一ヶ月で定植できる苗になる。

 既に本葉が一枚出て、背丈もぐっと大きくなってきた。順調にいけば五月二十日頃には定植できる予定だ。

220508 播種20日目のズッキーニ
割りばしで仮支柱を作った

 ズッキーニはうちの育苗方法だと徒長しやすく、強い風が吹くとかなり揺さぶられてしまう。小さい時に過度のストレスになると思い、割りばしを株元にさして麻ひもで誘引してみた。風が吹いても揺さぶられることが無くなり、元気に育っている。
 この支柱に結びつけるのは道法正徳さんの提唱する「垂直仕立て栽培」を参考にしてみた。これについては今度詳しく記事を書いてみようと思うが、自然栽培で真価を発揮する栽培法で科学的にも理に適っているので今年から挑戦してみたいと思う。主にインスタグラムで栽培の様子を発信していくつもりだ(→インスタグラムアカウント 百姓日記)。

畑の土でも問題なく育苗できる!

 今年、初めて畑の土、しかも定植予定の畝から採取した土を使って育苗に挑戦しているが、今のところどの野菜も順調に育ってくれている。もちろん、肥料分に乏しい自然農の土に合う品種をなるべく選んでいるので、その影響もあると思うが、十分実用レベルだ。

 一つ難点を挙げるとすれば、どうしても草の種が入っているので育苗途中に発芽してしまうことだ。普通、自然農では草を敵としないがポットという土の量が限られている環境では草に栄養をとられてしまうので取り除く必要がある。これが少し手間ではある。

220426 草が生えた育苗ポット
草が生えてしまう

 あと少しで植え付けシーズンとなる。気を抜かず管理していきたい。

【自然農】真夏に収穫できる葉物野菜、エンサイ(空芯菜)を作るコツ【育苗】

真夏にも簡単に栽培できる葉物、空芯菜

 真夏は草や虫たちが活発に活動する季節で、特に無農薬栽培では小松菜、青梗菜、レタスなど言った葉物野菜の栽培は難しい。農薬や防虫ネットなどの資材を活用しないと栽培がかなり難しくなる。そもそもこれらの葉物野菜は軟弱野菜とも言われ、高温や梅雨時期の雨で成長が鈍り、病害が多発する。

 そんな中で空芯菜という野菜は真夏の高温多湿な環境でも旺盛に生育し、収穫を見込める。近年続く、ゲリラ豪雨や酷暑、大型台風にも耐える強健な野菜だ。

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7月中旬頃の空芯菜

 自給作物としても、販売作物としても真夏に収穫できる葉物野菜は貴重だ。私たちも毎年栽培に挑戦している野菜である。食べても独特の風味と食感で美味しい。サッといためるだけで一品出来るため疲れている時にも重宝する。

空芯菜の特徴・栽培方法

 空芯菜はスーパーなどではエンサイ、エンツァイという名前で販売されている葉物野菜だ。空芯菜という名前は標商登録されている関係で一般には使われない。茎に穴が開いていて、筒状になっていることから空芯菜という。エンサイというのは中国名だそう。

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 もともと東南アジア原産でヒルガオ科サツマイモ属に分類される植物だ。高温多湿の熱帯地域で多く栽培され、水耕栽培も可能なほど多湿を好む野菜である。フィリピン、タイ、ベトナム、マレーシアや中国、オーストラリアなどの国でも盛んに栽培されている。

 日本でも沖縄や九州で昔から栽培され、最近では真夏の高温下でも収穫できる葉物野菜として栽培が広がっている。スーパーでも時期になれば目に入ることがある。

 とにかく寒いのが苦手なため、種まき時期はシビアだ。九州などの温かい地域でも四月中旬、私たちの住む寒冷地では六月に入り気温が安定して高くなってからでないと上手くいかない。

 乾燥にも非常に弱い。梅雨時期は大量の水分を確保でき、盛んに成長するが梅雨が明け降雨が減ると乾燥によって草勢が落ちてしまう。そのため、乾燥高温期はマルチや敷き草の活用、潅水も場合によっては必要になる。

 水持ちの良い畑を好み、雨が降ったら冠水してしまうような畑でもしっかり根が張れていれば、十分育てることができる。水はけのあまり良くない場所で育てることができるため、どうしても土壌改良が上手くいかない場合は空芯菜を栽培してもいい。

育苗して初期生育期間をクリアする

 そんな空芯菜だが、気温の低い時期はあまり成長しない。特に種まき直後から梅雨入りまでは寒い日が続くこともあるため、競合となる雑草に負けて大きくなれないことがある。

 私たちも里芋を栽培している畑で昨年直播で栽培してみたが、初期生育が草に負けてあまり大きくならなかった。空芯菜好みの比較的じめじめとした土壌なのだが、初期の根張りが良くなかった。かといって、マルチを使うのもしゃくなので今年は一工夫しようと思う。

 それはある程度の大きさまで苗の状態で育ててから畑に定植することだ。寒冷地では特に初期の低温にあたりやすいため、寒い日は家の中に取り込んで温度管理をする。育苗期間は1ケ月ほどとし、背丈が10~15cmほどになり、六月に入ってから定植するつもりだ。この地域では六月に入れば遅霜の心配もないし、最低気温も10度を下回ることはほぼない。初期生育段階で勢いの出てくる夏草に負けずに育つ。

 もちろん育苗には定植する予定地の土を持って来て使うつもりだ。かなり水はけが悪いため、草堆肥やもみがら燻炭を入れて排水性を高める必要がある。。
 定植予定地はクローバーの群生地になっていて、かなりクローバーの根がはびこっている。クローバーはマメ科の植物で根についている根粒菌が空気中の窒素を固定する。空芯菜は多めの窒素を要求するらしいが、このクローバによる窒素供給に少し期待している。地上部を刈り払えば、その根っこが分解され窒素が土中に放出されるはずなので、長期間窒素を供給してくれるはずだ。
 さらに言えば、クローバーは低い位置で密生する。そのせいで土が湿り気をかなり保持するようになるらしい。作物によってはそれがマイナスに働くこともあるだろうが、湿気を好む空芯菜ならそれを活かせる。ある程度空芯菜が大きくなれば、クローバーを少し残してリビングマルチみたいに使えるかもしれない。

 と、ちょっとクローバーについて長くなってしまったが、そこに生えている植物の力を借りて栽培するのが自然農では重要だと思っている。これでうまくいけば、クローバーをナスなんかの湿り気を好み、必要肥料分が多い野菜の畝間や株間に使うこともできるかもしれない。

種採りは寒い地域ではできない……

 私たちは自家採種にも力を入れている。種代の節約にもなるし、畑にあってくる感じもしている。さらに種から循環する野菜作りは現代において、最高の贅沢だと思っているからだ。

 この空芯菜に関していえば、ほとんど品種がない。販売されている種にも「エンサイ」や「エンツァイ」と書かれているだけで特別な品種名があるわけではなさそうだ。小松菜や白菜などと比べたらマイナーな野菜で、そもそも病害虫の被害を受けにくかったり、通年栽培できない野菜のため、品種改良・開発が進んでいないのだろう。つまり、固定種の物がほとんどだろうから種採りしやすい。

 しかし、残念なことに空芯菜は九州以北の地域では採種が出来ない。というのも、ほとんどの地域で花が咲かず、咲いても種が残らない。長野県では間違いなく種はつかないだろう。ビニールハウスで暖房を使えば、もしかしたらできる……のかもしれないがそこまで試す余裕はない。空芯菜は毎年種を購入する必要がある。

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朝顔に似た花を咲かせる

今年は空芯菜をモリモリ食べて夏を乗り切ろう。

 空芯菜の種まきはこれからできる。特に関東以北であれば連休明けからが適期だ。多少種まきが遅れても、梅雨に入ればぐんぐん成長してくれるため、焦らず準備できる。2,3株植えれば自家消費には十分な量が収穫できる。
 種はホームセンターでも種屋さんでも手に入る。私たちが大部分の野菜の種をオンラインショップで購入している。自家採種可能な品種や珍しい品種を探したい場合は参考にしてみて欲しい。→【固定種・在来種】自家採種できる野菜の種が手に入る場所【海外品種】

 実を言うと、昨年は空芯菜もほとんど失敗した。種まきを少し焦ってしまい、気温が上がり切らないうちにしてしまった。自然農に切り替えて一年目ということもあって草の勢いもあり、大きくならないうちに草に埋もれてしまった。

 今年は育苗を活用して、しっかり収穫まで育ってほしい。夏の暑さには暑い気候でたくましく育つ野菜を食べるのが一番だ。酷暑が予想される今年の夏、元気に乗り切りたい。

【自然農】寒冷地でのオクラ栽培。直播か育苗かどっちがいい?

オクラは高温性の野菜です

 ねばねばで健康的なイメージがあるオクラは、疲労回復に効果的でビタミンも多く含む人気の野菜。オクラのねばねばは食物繊維であるペクチンで、身体の中で水分を吸収し、排便を促す機能がある。真夏の暑い時期に刻んだオクラとおかかでご飯がもりもり食べられるのでわたしたちもかなり好きな野菜だ。

 新しい品種が毎年のように出ていて、市場も活発。定番の五角オクラや長くなっても柔らかい丸オクラや赤オクラ、白オクラなど種類がとても豊富。家庭菜園でも人気で、スーパーにはあまり売っていない品種を育てている人も多いだろう。

 そんな人気なオクラはアフリカ原産の野菜。そのため、高温を好み、最適温度は25-30度と高く、真夏の高温と強い日差しに耐える。
 一方で10度以下の低温では成長が止まり、霜に当たると枯れてしまう。よって、寒冷地に被る長野県ではかなり栽培期間が短くなる。遅霜の心配がなくなる五月中下旬でやっと種まきが出来る。生育初期に低温に当たりやすく、播き時がシビアといえる。

 私たちもビニールマルチを使用した一昨年は密植栽培でそれなりの収穫に恵まれた(→オクラの密植栽培)が、昨年はほとんど育たなかった。原因は発芽後の低温とモグラの生活道による根の痛みだと考えている。特にマルチを使用しないのに、五月中旬に種まきしたのが良くなかった。

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 オクラは手が掛からず、それなりの収穫を見込める野菜なので今年もチャレンジする予定だ。今回は昨年の失敗を踏まえて、少し工夫してみるつもりなので、それを紹介しようと思う。

育苗で生育期間を稼ぐのが一般的だけど……

 オクラのような典型的な夏野菜は育苗することで早播きして、生育期間を長くとるのが一般的だ。トマトやナス、きゅうりなどではどの地域でも取り入れられている技術だ。

 オクラの場合も、苗の状態で一ケ月くらい育ててから植え付ければ早くから収穫出来ると考えるのは当然だろう。だが、オクラは植え替えを非常に嫌う。というのも、オクラは主根が一本伸びていく直根作物だ。この手の野菜は大根やニンジンと同じで移植で根が傷みやすい。一度痛んでしまうと致命傷になってその後の生育が悪くなるため、注意が必要だ。
 育苗期間はなるべく短い方が良いため、二週間ほど育苗したら植え付けとする。長くとも三週間で植えてしまいたい。

 セルトレイなどの深さがない容器で育苗すると、すぐに根が出てしまい痛んでしまうため、大き目のポットで育苗する。今回は10.5cmポットを使ってみるつもりだ。

 種まきは五月十五日前後ごろを予定している。発芽後、様子を見ながら根が下から出ないうちに定植する。6月頭には植えてしまいたいところだ。

地温が足りない直播は、もみ殻燻炭で保温

 育苗がだめなら直播で、といきたいところだが寒冷地の長野県でビニールマルチも使わないとなると、六月に入って十分な地温が確保できてからになる。五月中でもなんとか発芽まではできるだろうが、その後に低温(10度以下)が何度か来るとかなり根が傷む。生育初期のアブラムシ被害も深刻のため、なるべく遅まきで健康に育てるのがセオリーだ。
 オクラは種まきから約二カ月かかって収穫となるため、このあたりでは八月に入り梅雨が明けてから収穫が始まり、十月半ばまでの二ヶ月ほど採れることになる。

 マルチは不耕起栽培では取り入れにくいが、トンネル栽培ならやりやすい。トンネル栽培は撤去後も支柱を誘引用に利用できるためかなり有効な手段だろう。

 今回は資材はほぼ使わない。一つだけ、もみ殻燻炭を株元に敷き詰めて地温の上昇効果を期待する。もみ殻燻炭はもみ殻を炭化させたもので、主に土壌改良に使われる資材だ。今年は市販のもみ殻燻炭を購入したが、もみがらの入手ができれば自分で作ることも簡単にできる。

 もみ殻燻炭は黒いため、黒いビニールマルチと同じで太陽光を吸収し地温を上昇させてくれるのではないか期待している。さらにもみ殻燻炭はアブラムシの忌避効果もあるらしい。アブラムシはオクラの生育初期に大きなダメージを与えるのでこれを回避できるなら一石二鳥だ。

 昨年は種まきを五月中旬にしてしまい、発芽後に温度が足りずに弱ってしまった。そのため、今年は六月に入ってから畑に種まきをする予定だ。

どちらの方法が寒冷地でのオクラ栽培に合っているのか検証します

 今年は寒冷地でオクラを栽培する上で育苗・直播のどちらが良いか検証して行く。

 6月に入ってから直播する場合と5月上旬に育苗する場合で約三週間の差がある。この差が移植を嫌うオクラでどのくらい埋まるのか気になる所だ。もみ殻燻炭による地温上昇、アブラムシ忌避の効果も楽しみだ。

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八月中旬頃のオクラの様子

 今年わたしたちが栽培するオクラは、エメラルドとダビデの星だ。エメラルドは一昨年自家採種した種(→オクラの自家採種はとても簡単)と今年新たに購入した種を使用する。ダビデの星は自家採種に至らなかったため、購入した種を使う。

 オクラは自家採種しやすいため、二品種とも自家採種したい。オクラは虫によって簡単に交雑するため、圃場を分けて栽培する予定だ。オクラの自家採種については、採種株の選定、採種果をつけるタイミング、保存方法について詳しくまとめてみようと思う。狭い畑で二品種以上を自家採種する際に交雑を防ぐ方法も紹介したい。