【自然農】2021年のミニトマトが全然できなかった理由とその対策【不耕起・無肥料】

上手くいかなかった原因を考察する

 昨年のミニトマト栽培はロッソナポリタン(パイオニアエコサイエンス)を栽培し、かなり豊作だった。次々と開花し、霜の降る10月下旬まで収穫が続いた。背丈は2m近くまで伸び、緑のカーテンのようになっていた。収穫終了間際に自家採種も行った。

 今年はロッソナポリタンの自家採種1代目の種を使用した(→2020年の自家採種はこちら)さらに育苗の手間を減らした栽培を目指した。栽培方法を自然農に切り替えたこともあって、肥料は前年から一切加えていない。耕すこともせず、伸びた草を畝上に刈っては敷くことを繰り返した。
 育苗は4月上旬から35日程度で、本葉3枚ほどで仕上げる予定だった。標準では約60日間、第一花房が付き始めるころまで育苗するのでかなりの若苗になる。畑に定植したのが5月20日前後の十分に気温が上昇してからだったが、その後の成長がよくなかった。不耕起による弊害でモグラの巣穴で根が伸びず、成長が止まってしまった株も多く見られた。

育苗の失敗した点

 今回の栽培において、失敗に終わった大きな原因は育苗にあると考えている。そのうちの一つは苗が小さすぎた(成長ステージが手前過ぎた)こと。もう一つは育苗土の肥料分が多く、圃場の栄養分が少なかったこと。この二つがお互いに影響し合ったのではないか。

 育苗土はタキイの種まき用土を使ってみた。肥効が長く、保水力が高いとのことだった。本来であれば、育苗土も自前で用意したいのだが、準備するのに時間が掛かるため、市販の土を使用した。
 この土はNPK=600,1200,570(mg/l)で肥効が30-40日の長期肥効型の種まき培土だ。肥料分が多く、長い期間育苗できる。これを50穴セルトレイに詰めて使用した。発芽は良く、順調に生育していた。

21051 発芽はばっちり


 育苗を終え、畑に定植したのが5月20日ごろだった。その後活着は早かったものの、成長が遅く、50株植えてまともに収穫できたのは3株ほどしかなかった。
 これは育苗土には十分すぎる肥料が含まれていた一方、定植後の畑の土にはほとんど肥料分がなく、その環境変化に対応出来なかったのではないかと考えている。私たちの圃場は前述の通り、施肥を二年間していない。雑草の生え方もそこまで旺盛ではなく、地力は低めだった。
 植物にはその時の環境に合わせて、伸ばす根を変えているという話しを聞いたことがある。肥料たっぷりの育苗土で過保護気味に育てられた苗は、自然農的な土の厳しい環境に適応できなかったのだと思う。

 また省力化を考えて50穴のセルトレイを使った。これが苗が大きく育たなかった原因ではないかと考えている。セルトレイだと普通の大きさのポットと比べて、土の量が少なくなる。すると根が伸びる空間も狭くなってしまう。
 根が伸びないと地上部は大きくならないので、小ぶりの苗になってしまった。小さい苗の方が根付きが良いのでは、と考えたが光合成量が少なく、根も少ないためその後に成長スピードが著しく落ちたのだろう。

来年の育苗での改善点

 失敗した結果と原因を踏まえ、育苗は次のように行うことにした。

 育苗に使う土は市販の培養土ではなくて、実際に定植する畑の土をそのまま使用する。雑草の種が含まれているため、育苗中に生えてきたものは適宜除去する。もし、手間が掛かり過ぎるようなら高熱処理などをして雑草の種を除去することも考えるが、今回はそのまま使用してみる。
 こうすることで育苗と定植後の環境変化が最小限に抑えられるし、元々肥料分に乏しい土で育苗する事で、栄養を吸収する力が強い根が育つではないかと考えている。

 また容器を大きい物に変更する。今回は50穴セルトレイ(1穴約80ml)を使用したが、12cmポリポット(約800ml)にする。こうすることで土の容量が10倍近く増える。土に含まれる栄養が少ないので絶対量を大きくして、育苗に必要な栄養素を確保しようという考えだ。土は植える場所のものをそのまま使うので足りなくなることは無い。
 根が伸びる空間を大きくなるのでたくさんの根が伸びた良い苗になるのではないかと期待している。

 育苗と定植後の環境をなるべく近づけることで定植によるダメージを少なくすることに重きを置いた。特に育苗土を圃場そのものの土を使用することは、良い結果になると思っているので楽しみだ。

 育苗は引き続き室内で日当たりの良い部屋を使って育苗することになる。夜間はストーブや電気毛布を利用して、地温を確保する必要があるため少々温度管理が難しい。十分な土地が確保できれば踏み込み温床を使ってビニールハウスでの育苗にも挑戦したい。

育苗は寒冷地では必須の技術。栽培の良しあしを大きく左右する。

 寒冷地はもちろん、温暖地でもトマトやナスのような発芽・生育に高温を必要とする野菜の栽培には育苗が必ずと言っていいほど必要になる。自然のあるがままに、を目指す自然農で育苗するのは反自然になるかもしれないが、真夏に良く育つ野菜はやはり夏に食べたいところ。すべてが全て、自然でなくてもいいんじゃないかと思うので、育苗はやってもいいんじゃないかと思う。

 「苗半作」という言葉があるほど、野菜作りにおいて苗作りは重要なポイントだ。急激な気候変動や、病害虫の蔓延といった環境変化に柔軟に対応できる苗作りを目指して、これから色々と試してみようと思っている。

 また、育苗に頼らない、夏野菜の栽培法がこれならできる! 自家採種コツのコツ: 失敗しないポイントと手順(農文協)に紹介されていた。「自然生え(じねんばえ)選抜法」という方法で、栽培が終わった後、完熟の果実をそのまま土に埋めて。春になって一斉生えてくる芽の中で強いものを選抜して育てていく。元々は育種法の技術だが、これでしっかりと収穫できれば、育苗に頼らない、より環境適応力の高い栽培法になると思う。さらに自家採種の手間を省くことが出来る。
 昨年の秋に完熟トマトを数個、地面に埋めてあるので、その経過も観察していく。また食用ホオズキも同じように土に埋めてある。

自然農で野菜を育てるときの最重要ポイントになる「種」の話し。

種を変えたら人参がしっかり太った

 2020年から不耕起、無肥料での草生栽培(自然栽培と言った方がわかりやすいかも)を始めてから、たくさんの種類の野菜を栽培してみた。肥料をあまり必要としないマメ科の野菜(大豆やスナップエンドウ)は比較的よく出来た。一方で大量の肥料を必要とするトマトやナスなどのナス科の野菜は出来が悪かった。

 出来の悪かった野菜のひとつに人参がある。最初に栽培したのは夏播きで黒田五寸だった。発芽はばっちり決まったが本葉が数枚でたあたりで成長がすっかり止まってしまって収穫できたものはほとんどなかった。

 次に今年の春に春蒔金港五寸を栽培した。春まきに適した品種だったがこれもイマイチ成長が悪かった。

 そして今年の夏播き。今回は自然農法国際研究開発センターで育種された筑摩野五寸を栽培した。4か月後の12月中旬、ばっちり太った人参が初めて収穫できた。ほぼ丸二年、不耕起、無肥料でも結構いい人参が採れた。

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筑摩野五寸は何が違ったのか

 これまで栽培していた種と自然農法国際研究開発センターの筑摩野五寸、どこが違ったのか。一番違うのは種が作られた環境にあると考えた。一言に環境といっても、そこには実に様々な要因が含まれている。

 黒田五寸、春まき金港五寸ともに採種地の記載があるだけでどのように栽培されたかまでは書かれていない。その採種地も国外の圃場のようだ。 

 おそらくだがいわゆる慣行農法の、化学肥料、農薬を普通に使用し、草が生え過ぎたら除草剤で対処するといった、よくある栽培方法で育てられているに違いない。種を売って、利益を得ているのだから、最も効率の良い方法をとっているはずだ。

 これは私たちの、肥料をできるだけ減らし、農薬・除草剤を使わず、草を敵にしない栽培と正反対である。つまり種がまかれてからの環境と全く異なる環境でできた種なわけだ。

一方、筑摩野五寸はどうかというと、これは自然農法に則って栽培され、栽培しやすいものを選抜されて固定化された品種だ。つまり、無肥料・草生栽培下で作られた種だ。この品種が出来たのは長野県で採種地も長野県となっている。土の状態も、栽培された気候・風土もかなり私たちの圃場に近いものだと思う。

 これが今回、自然農法二年目となる私たちの畑で筑摩野五寸だけがしっかりと栽培できた理由ではないかと思っている。

種の持つ記憶

 私が思うに、種は私たちが考えるよりはるかに多くの記憶を持っていると思う。

 種を買うときに見るのは、どんな姿に育つか、病気に抵抗性はあるか、収量がとれるか、味はいいかなどだろう。これらは目に見えるし、簡単に数値化して比較する事も出来る。交配種は全部同じ遺伝情報を持っているため、育つものはサイズ、味ともに揃いが良い。

 でも、そういった見えやすい情報以外に大事な点が含まれていると思う。種は自分が育った環境を遺伝子レベルで記憶しているはずだ。人間だって、何世代も日本に生まれ育った人たちと、アフリカの砂漠地帯で生まれ育った人たちで確実に違っている。

 体に合っている食べ物、気候、住居、生活リズム、全部違うはず。アジア人とアフリカ人から生まれた子供は、その後どちらの地域で育つかでもはや全く違う人間になってしまうほど大きな違いが生まれるはずだ。

 それは野菜も同じはずで、栽培に使われた肥料、農薬、その他資材や気温、水分、風の通り方によって、その種は最適な環境が変わると思う。三大栄養素はもちろん、微量要素もたっぷりの土で育ったら、その種も栄養たっぷりの土を好むだろうし、逆にあまり栄養がない土で育ったら少ない栄養でもしっかり育つ野菜になるだろう。

 肥料だけではなく、例えば気温や水分や湿度も同じだと思う。タイで育ったナスの種と、長野県で育ったナスの種、同じ品種でも同じようには育たないのではと思う。その採種を数世代繰り返したらその差は歴然だろう。
 土壌の組成も、そこで生きている微生物などの土壌生物も、国や地域、さらにはそれぞれの圃場ごとに多様な組成をしている。一つとして同じ土はない。植物は土の中の生き物と共生して生きているから当然共生関係にあった生き物の記憶も持っているだろう。

 たねがどんな環境で育ったのかがもっと重要視されてもいいはずだ。

自家採種をする、私たちなりの考え方

 自家採種は私たちの周りの環境、考え方を種に記憶させていく事だと思う。

 同じ土地で自家採種を繰り返す事で、その風土に一番合った品種に育っていくと思う。適切な養分量はもちろん、病害虫への対応力、生育ムラなども少しずつ最適化されていくはずだ。

 野菜を育てる一連のプロセスに、種を採ると言う事を加えることでより環が閉じていくと思う。野菜という命の環がぐるぐる回っていく手助けができる。

 それに種はなんといっても可愛い。自分で採った種は想像以上に気持ちがこもる。普段の栽培よりも長い時間がかかる採種だけど、少しずつ取り組んで行きたい。そして、この種に関する考察が正しいか、観察して行こうと思う。