加温設備がなくても夏野菜の育苗が出来る 陽だまり育苗とポケット芽だし

 市販の苗を買わずに、自分で種から育てた苗で野菜作りをしたくなるのは家庭菜園家が必ず通る道だろう。実際、種まきから始めた野菜はとても愛情が湧くものだ。

 販売されている苗は年々早売り傾向が強まり、良い苗を手に入れられたとしても、定植適期からはちょっと早い気がする。生産農家や販売側に様々な事情があるのだろうが、購入側としては少し困る。
 当地ではトマトやナスの苗を露地植えするなら、早くても五月下旬になってからが望ましい。だがゴールデンウイークにはちょうど良い苗が販売されてしまう。その時期に植えられないことは無いが、マルチやトンネル、行灯といった防寒対策は欠かせない。また季節外れの低温に当たる心配もあり、やはり寒い時期に無理させたくないのが本音である。

 また、自分で苗が立てられれば市販されていない品種の野菜も作ることができる。販売されている苗なんて、数ある品種の中で極極一部にすぎない。種から育てれば、魅力あるたくさんの野菜を作ることができる。

 というわけで、自家育苗を試みるのだが、特に夏野菜の苗はまだ寒い時期での育苗になるため失敗することが多い。特に問題となるのは温度である。温度が足りずに、発芽しない、もしくは生育が進まないことが多々ある。ビニールハウスがあるなら、温度確保は幾分か容易にはなるが、小規模の家庭菜園や畑ではなかなか用意が出来ないことがある。

 そこで自宅の中で育苗する際に便利な、お金や手間をかけない育苗テクニックを紹介しようと思う。

芽だしはポケットに入れておく「ポケット人肌芽だし」

 数ある野菜の中でトマトやナス、ピーマンは発芽適温が25-35℃とかなり高めだ。まだまだ寒い日が続く三、四月ではなかなかこの温度を確保するのが難しい。特にうちのような、加温設備もビニールハウスもないような環境ではほぼ不可能だ。

 発芽さえうまくできれば、その後の温度管理はそこまでの高温は必要とされない。そこで簡単かつお金のかからない方法を紹介する。この方法はわたしたちが昨年から実践し、ミニトマトやトウガラシなど30℃近い温度を要求する種の発芽を成功させている。

 その方法とは、人の体温を利用して発芽を促す「ポケット芽だし」法だ。「めんどり催芽」や「人肌芽だし」とも呼ばれる。わたしたちは、は農文協の「自家採種コツのコツ」という書籍に紹介されているのを見て、実際にやってみて有用な方法だと実感している。他にも様々な人から紹介されている有名な?方法である。

 人間の体温は常に36℃に保たれていて、高温を必要とする夏野菜の発芽適温にかなり近い。そこで種をポケットに入れておくことで発芽を促進させることが出来る。
 36℃だと温度が高すぎて、発芽率が落ちるだろうが、実際にポケットに手を入れてみれば分かる通り、まず35度を超えることは無い。丁度25-30℃付近に落ち着くはずだ。

 数日で発根してくるので、すぐにポットやセルトレイに播く。すでに発芽は始まっているので通常種をまくよりも圧倒的に早く芽が出てくる。発芽後はそれほど高温にする必要は無いため、寒い地域でも無理なく育苗ができる。

ポケット芽だしのやり方・注意点

 ポケット芽だしに必要な物
・密閉できる小袋・霧吹き・キッチンペーパーやガーゼ

 ポケット芽だしのやり方
①小袋に日付、品種名を書く
②キッチンペーパーを霧吹きで濡らす
③濡らしたペーパーに種をおく
④種を包んで、小袋にしまい密閉する
⑤ポケットで保管する

2022年の ポケット芽だし

 以上だ。とてもかんたんで誰でも、今すぐ実践することが出来る。

 最低でも一日に一回、できれば朝昼晩と袋を開けて、種の様子を確認する。袋を開けることで種に新鮮な空気を吸わせることができる。空気(酸素)は発芽にとても重要な要素だ。我が子だと思えば、確認の手間も惜しくないだろう。

 植物にもよるが、三日から七日ほどで発根してくる。発根を確認したらただちに土に播く。既に発芽寸前のため、二、三日で芽が地上に出てくるはずだ。

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日だまり育苗で厳しい環境に慣れた強い苗にする

 無事発芽したら、今度は日だまり育苗で管理する。

 これは日中は直射日光のあたる場所で地温を確保し、夜間は家の中に入れることで寒さから苗を守る管理方法だ。加温設備を必要としないため、どこでもできる。必要なのは日当たりの良い場所だけだ。

 日だまり育苗の苗は、直射日光、外気や風に当てながら育つので定植後の環境への適応能力が高い苗になる。特に風の有無は大きいと思っている。風が当たり、身体が揺さぶられることでがっちりした苗に育っていくような気がする。

 やり方は簡単で、午前中の9時頃、気温が上がり始めたら苗を外の日のあたる場所に出す。日が落ちてくる午後4時頃から急激に冷えてくるため、家の中に取り込んで夜をしのぐ。雨天や曇天で太陽が出ない日は室内の、できるだけ明るい部屋で管理する。

 育苗全般に言えることだが、水のやりすぎは禁物だ。水やりは午前中の早い時間に済ませ、日中、特に夕方以降はやらないようにする。夜間、水が多いと徒長の原因になるからだ。実際、2020年のミニトマト栽培では水やりの下限が分からず、育苗初期にかなり徒長してしまった。

 日差しの強くない日はしおれない程度に水やりを制限する。ここで水をやり過ぎると徒長するため、しっかり観察して水分量を調節する。代わりに良く晴れる日はたっぷり水やりしよう。

 この育苗方法は自然農法国際研究開発センターのホームページに詳しい説明がある(こちらをクリック)。
 または「これならできる! 自家採種コツのコツ(農文協)」や「無農薬野菜づくりの新鉄則(Gakken)」でも紹介されている。

定植は平均気温16度以上になったら。

 育苗期間は野菜の種類にもよって変わり、大体一ヶ月から二ヶ月である。種まきする日は育苗期間と定植時期から逆算するが、その定植時期は地域ごとの平均気温に合わせる。

 例えば、当地でもナスの苗はゴールデンウイークには市場に出る。一般的には五月初旬がナス科野菜の植え付け時と言われているからだろうが、まだ寒すぎる。特に冷え込んだ日は霜が降るくらいだ。寒さに弱いナス科野菜は一発で大ダメージを受けることになる。

 果菜類の定植目安となるのは平均気温16度を超えたら。このくらい気温が上がってくると、遅霜の心配がなくなるため夏野菜の定植ができる。特に高温を好むナス、ピーマン、ゴーヤなどは平均気温17度を超えるまで待つ方が良い。トマトの植え付けから一週間ほどたってからの植え付けとする。

私たちもポケット芽だしを開始しました

 3/26にわたしたちも今年の夏野菜の種まきをスタートした。もちろんポケットに種を忍ばせるところからだ。トマト、ナス、ピーマンは六月第一週の定植を予定している。
 ほぼ無肥料での育苗となるため、育苗日数は65日ほどを目安にしている。ズッキーニは苗が早く仕上がり、寒さにも若干強いため五月下旬の植え付けで育苗日数は一ヶ月の予定だ。種まきは四月下旬に行う。このころには夜間の気温も大分上がるため、そのままポットに播いても問題ないだろうと思う。

2022年の ポケット芽だし

  順調に発芽して、徒長せずに本葉二枚くらいまで育つまでそわそわしてしまう。じっくり良い苗に育てていきたい。

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