ミニトマトの育苗をやってみよう! 幼苗定植で省力化と樹勢の強い株に仕立てる。

ミニトマトの栽培は苗作りからスタート

 ミニトマトをはじめとしたナス科、ウリ科などの果菜は、栽培期間が長く(長いもので4ヶ月ほどかかる)、発芽温度も25度前後の高温を必要とするため、その栽培には育苗することがほぼ必須となります。芽が出るくらい暖かくなってから畑に直播しても、実がなり始めるころには生育適温を過ぎて寒くなってしまいます。

 ということで、まだ寒い時期に種まきして、室内やハウス内で加温等によって生育温度を確保して苗を育てます。ホームセンターや種苗店では苗も取り扱っています。

 今年、私たちがメインに栽培しているミニトマトは自家採種した種を使っているので必然的に自家育苗となります。今回は、自分で育苗すること、そしてミニトマトの定植についてまとめていこうと思います。

自分で育苗してみる

 ホームセンターなどで売っている苗を買わずに、自分でミニトマトの苗を作るメリットは大きいです。

 まず、うまく育てれば十分良い苗ができることです。
 ミニトマトは発芽に比較的高温(25~30度)を要求しますが、その後は最高気温25度、最低気温10度以上の管理で十分です。日中日当たりのよいところにおいて、夜間は室内に取り込むこと(日だまり育苗という)でほぼ達成できます。あとは水を与えすぎないことに注意します。夜間に湿り気が多すぎると徒長しやすくなります。
 温度と水分の管理と日光にあてることを守れば自分でも育苗できます。写真は今年育苗したトマトの苗です。発芽直後に日光が乏しかったのと、50穴セルトレイで込み合ってきたので若干徒長しています。葉色、背丈、葉数ともになかなか立派に育ってくれたと思います。

210519 葉3枚目
育苗22日目のミニトマト苗

 また、好きな品種のトマトを栽培できます。ホームセンターなどの販売店では決まった苗しか取り扱いがありません。世の中にはいろいろな品種のトマトがごまんとあるので、自分の好きな品種を育てられるだけで、育苗にチャレンジする甲斐があります。私たちはトマトだけでも5品種ほど栽培するので必ず育苗しないといけません。

 そして、トマトに無理をさせない、最適なタイミングで定植できます。
 私たちが住む、長野県ではGW前後にミニトマトの苗が並びます。この苗はすでに定植サイズで花がついているものです。さっさと植えてしまわないとどんどん苗が老化していきます。
 しかし、GWではまだまだ寒い日もあり、最低気温は一桁になることもしばしば。霜は降ることもあります。1,2週間すればかなり暖かくなって植えごろになるのですが、そのころにはひょろひょろで、葉っぱが黄色くなったような売れ残りの苗しかない場合が多いです。

 自分で育苗すれば、定植日を設定して、育苗期間を逆算すれば最適なタイミングで植え付けができます・

幼苗定植のメリット、デメリット

 通常ミニトマトの苗は、本葉が8枚で果房が咲き始めているものを植えつけるのが良いとされています。これはすでに花がついている株は収穫が早い(ミニトマトは開花40日ほどで収穫になる)、成長が実をつけるほうに傾いているからといわれています。一方でまだ花がついていない苗を「幼(若)苗」と呼びます。

 植物の成長には、樹(茎や葉っぱ)が育つ「栄養成長」と花や実(いずれは次世代の種になる)が育つ「生殖成長」の二種類に分けられます。
 通常の定植サイズの苗はこのうち、栄養成長がすでに始まっているといえます。ミニトマトであれば花が咲いてから40日ほどで収穫にいたりますので、植え付けから1か月ほどで収穫できます。
 幼苗は本葉5枚ほどで定植になるので、まだまだ栄養成長真っ只中です。育苗ポットの狭い環境から広い畑に植え替えられると、一気に根を広げて葉っぱを茂らせていきます。

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2020年に植えつけたミニトマトの苗
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定植から1か月後。ちゃんと花がついた。

 樹ばかりが育ち、花がつかなかったり落ちてしまう状態を「樹ボケ」、「樹が暴れる」といいます。これは樹を伸ばすほうにだけ栄養が集中してしまい、実がつかないことをいいます。幼苗の場合、葉っぱが5枚程度とまだ花がつくには時間がある状態で植えるので、樹ボケが起こりやすいといわれています。

 樹ボケしてしまうと収穫が減ったり、遅れてしまうので困り者ですよね。ということで、最初から花がついた、「生殖成長」が始まった苗が好まれるわけです。

 一見幼苗定植は良くないじゃん、となりますが適正サイズの苗にも問題があると考えています。それは①一般に9-12cmポットで花がつくまで育っているため根が弱りやすいこと、②ポットの土に対して地上部が大きいので活着にエネルギーを使うこと、③すでに生殖成長が始まっているので樹が育たない(根張りが良くない)ことです。

 つまり、大きな苗は植えつけてからの栽培が難しくなるということです。定植直後の苗はまだまだ小さいのでどんどん根っこをのばして、枝葉を茂らせ光合成をしたい状態です。そのときにもう実がついているので、栄養をそっちに持っていかれてなかなか樹を充実させられません。結果、真夏本番のころには樹が弱ってしまい、成りつかれしてしまいます。

 一方、幼苗で植えるとまずは樹を育てることだけに栄養を使えるのでがんがん育っていきます。地上部と地下部の成長は一致しているので根っこもどんどん伸ばしていきます。すると、ちゃんと根っこを伸ばしているので梅雨明け後の乾燥期にも樹がしっかり栄養、水分を吸収でき実もしっかりついていきます。最初は遅れますが、あとから一斉に実らせてくれます。

 ミニトマトは花が咲いてから約40日で実が熟してきます。5月初旬に花つきの苗を植えて40日後に初収穫になったとします。まだ梅雨真っ只中で日照も乏しい時期のトマト、あまりおいしくなそうですよね。
 あせらず梅雨明けの7月半ば以降に収穫を迎えるほうが真夏の太陽を存分に浴びた美味しいトマトをたくさん食べられていいと思います!

200914 鈴なり
9月半ば頃。鈴なりのミニトマト。

 樹ボケをしてしまうのは過剰な栄養があるからという場合が多いです。小肥で樹を育て、花がついてから様子を見て追肥を行う管理をします。

 また育苗期間もかなり短くできます。
 通常の適正サイズにするには約2ヶ月ほどかかります。まずは育苗箱やポットに複数播きして、本葉が2,3枚出たらポットに鉢上げして、さらに花がつくまでと、約2ヶ月弱かかります。花がつくほど大きい苗だと9cmポットでも小さいくらいでそれによって土の使用量も増えてきます。

 一方、私たちが行っている幼苗育苗では約3週間の育苗期間で植え付けサイズになるので時間が半分で済みます。しかも、育苗期間が短いので最初から最後まで50穴セルトレイで育苗できます。写真は発芽2週目の苗の様子です。少し葉っぱが触れ合ってきましたがまだ十分なスペースがあります。72穴セルトレイだと少し窮屈すぎるかもしれません。

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育苗22日目のミニトマト苗

ミニトマトの植え付けまであと少しです

 今年のミニトマト栽培、まずは植え付けが五月の終わりに待っています。

 夏野菜の植え付けはGWあたりといわれており、私たちの住む長野県でも第二週までには植え付けが終わっている人が多く見られます。ホームセンターでは植え付け間近の苗がGW前から売られているので、良い苗を買うには早くしないといけないので仕方がないことなのかもしれません。

 トマトは最低気温が15度を超える日が出てきてから、平均気温が17度ほどになってから植えたほうが、生育に影響を与える低温を回避できます。なので私たちは5月の第4週に植え付けの予定とし、それにあわせて苗を育てています。今年は、梅雨が例年より早く訪れるようなので、天気を見ながら定植していきたいと思います。

 収穫は遅れますが、梅雨が明ける7月中旬の真夏から収穫できるミニトマトは最高に甘くておいしいです。樹も体力があるので10月上旬まで収穫できます(この頃には大分味は落ちますが)。

 同じようにナスも高温を好む植物なので無理な早植えはせずに6月頭の植え付けの予定でいます。野菜は旬の時期が一番おいしい、と考えて適期栽培を守ります。

夏野菜の名わき役、オクラは密植栽培がおすすめ。省スペースでたくさん収穫しよう!

 家庭菜園で野菜を育てるとなったら、ミニトマトやナス、カブや大根、葉物野菜などがまず候補に上がるのではないでしょうか。これらは家庭菜園で育てる野菜の定番ですよね。

 オクラは比較的栽培しやすく、夏の日照りも大雨でも元気に育つ強い野菜です。刻むとねばねばになって、未熟な種のプチプチした食感も楽しいですね。栄養価も高く、真夏の疲れがちな身体にぴったりの食材です。

 今回はそんなオクラの密植栽培について、その特徴とやり方、注意点をまとめていきます。昨年実際に密植栽培をして失敗した経験を踏まえて、今年はより良い方法を試してみます。

オクラの密植栽培のメリット

 オクラはぐんぐん縦に伸びていき、順調に育てば背丈2m以上にもなります。その分横にはあまり広がらないので少ないスペースでも栽培することができます。

 背丈もがんがん伸びる一方、実もすごいスピードで成長します。一日採り逃すと次の日には筋張って食べられないなんてこともあります。筋張ってしまったオクラは、なかなか食べづらく食味も落ちるのでがっかりします。

 しかも、背丈が伸びていくとそのうちに手が届かないところで実をつけ始めてしまいます。こうなると踏み台などを使って収穫することになるので面倒ですよね。

 そこで通常、1株1本、多くても3本ほどで栽培されるオクラを1株5本以上、最大8本くらいまとめて栽培します。すると、狭いところでオクラたちがお互いに成長を抑制しながら育つので、背丈が高くなりすぎるのを遅らせることができます。

 しかも、実自体も伸長スピードも遅くなるので多少余裕を持って収穫できます。日陰が増えるので肉質も柔らかくなります。

200712 オクラと空心菜
密植栽培のオクラ

種まき時の注意点

 オクラの密植栽培をする上で、注意するのは種まきと間引きです。

 昨年、実際に1株8本の密植栽培に挑戦しました。(→オクラ初収穫! 1株8本の密植栽培)栽培記録が飛んでいるのでいきなり収穫になっていますが、実は8本すべてが育った株はなく、多くても5本ほどに減っていました。

 おそらく一本一本が近すぎました。草勢を抑えるための密植とはいえ、発芽1週間と経たないうちに葉っぱが全部触れ合ってしまうようだと光合成が十分行われません。地下の根っこもお互い、邪魔しあってしまって、しっかり根を張れなかったのではないかと考えています。

 さらに昨年は生育初期にアブラムシが発生しました。1本、2本とアブラムシがいるオクラが増えていきました。このとき、数あるオクラの中でも優先的にアブラムシに食われる株がありました。そして8本仕立てにこだわりすぎて、虫害にあった株を間引くのが遅れました。結果、どんどんアブラムシが広がってしまいました。

 同じ作物でも、それぞれ個体差があるので虫害がよくでるもの、あまりでないものがあるのでしょうか。そういった『弱い』株を虫が間引いてくれているという考え方もできます。

 よって、
①1株内の間隔をあける(種同士を3cmくらい離す)
②よく観察し、虫がつき始めたら早めに間引く

 これを心がけて、今年の栽培に挑戦したいと思います。

今年栽培するオクラの品種

 私たちが栽培するオクラは次の3品種です。

オクラの種たち

エメラルド(タキイ種苗)
 こちらは昨年栽培したオクラです。丸形の島オクラ系の品種です。15cmくらいまで伸ばしても柔らかく、早採りすると生でもおいしく食べられます。自家採種可能でしたので、今年は自分で種採りしたものを使用します(→オクラも自家採種をしました)。

ベニー(タキイ種苗)
 生食の彩りと思い、赤オクラをチョイスしました。

ダビデの星(藤田種子株式会社)
 多品目少量生産農家や、家庭菜園愛好家のなかでは有名なダビデの星(スターオブデイビット)は作ってみたくて挑戦します。加熱するととても食味が良いみたいです。こちらも種採り可能なので今年は種採りも行います。

 オクラは直根系(根がまっすぐのびる)の作物で、移植を嫌うので直播で栽培する予定です。アフリカ原産で暑さを非常に好むので十分に暖かくなってから播きます。当地では当分種まきは先になりそうです。おそらく5月下旬になるでしょう。
 これから種を注文しても十分間に合います。ぜひオクラを栽培してみてください。新鮮なオクラは格別ですよ!