【自然農】9月に行った作業とその考察【寒冷地】

秋冬野菜の収穫が開始

 8月から(早い物では7月から)種まきし始めた秋冬野菜が収穫し始めることが出来た。ある日の収穫は以下の通り。かなり色々な種類の野菜が収穫出来ている。自給分に十分な量だ。

220926 ある日の収穫物
9月下旬のある日。

 一番早かったのはもちろんはつか大根。種まきは8月19日で、初収獲は9月14日だった。いつもそうだが、はつか大根といえど、本当に二十日で収穫できたことは無い。今回はかなり惜しかったが、自然農というとを考慮しても良いペースで育ってくれた。

220914 はつか大根収獲
収獲したはつか大根
220914 はつか大根no
サラダに入れると見た目も華やかに


 品種はカラフルファイブというミックス種子で、一応固定種と言うことになっている。そのせいなのか、一般的な赤白の紡錘型よりもきれいにできたので重宝している。

 小松菜やルッコラなどの葉物類もすこしずつ収穫して、食卓に上っている。
 小松菜は慣行栽培用の品種ではなく、自然農法向けに育種された「新戒青菜」(自然農法国際研究開発センター)を栽培した。自然農3年目の圃場で、無肥料無農薬だが良く育ち、虫食いも比較的気にならなかった。

220926 小松菜収獲
新戒青菜。虫食いも少ない。

 秋冬野菜ではないが、特筆しておきたい野菜が鷹の爪だ。
 鷹の爪は栽培期間が長く、9月になってようやく赤く完熟してきた。通常、鷹の爪などの赤唐辛子は霜の降る前に一斉収穫するのだが、今年は一工夫した。簡単な事だが、真っ赤に熟したものから順次収穫にしたのだ。こうすると過熟になったり、日焼けたりして価値が落ちることが激減する。良品率が格段にアップするため、こまめに収穫すると良いようだ。

ひたすら草取りの日々

 夏はどんどん草が伸びるため、刈っては敷きを繰り返した。これは自然農において、養分の循環を促す重要な作業だ。
 一方、秋冬野菜は葉物や根菜のような芽が小さく、生長しても小さい野菜が多い。そのため、刈る高さになるまで待っていると草に負けて徒長したり、病気になってしまう。

 そこでまだ暑さが残る中、草取りに繰り出す日々だった。8月中旬から9月の初めまで順々に播いているため、毎日のように草取りをした。

 栽培量でも大きく違ってくるだろうが、基本的に秋冬野菜の草取りは真夏の作物の草刈りよりは楽にできる場合が多いと思っている。播き時はお盆からだが寒冷地の当地では一気に秋になる。近年は残暑が厳しい日もあることにはあるが、生えてくる草はすっかり秋使用だ。うちの畑では割とハコベやホトケノザが増えてきたこともあり、一度草取りもしてしまえば、そのようなやわらかで野菜の生育を邪魔しない良い草が生えてくれる。

 写真は7月終わりに播いたビーツだが、地表をハコベが覆っているのが見える。このおかげで地表面が太陽や雨から守られ、耕さずして土が肥えていってくれるのだ。

22092 ビーツと共生する草
ビーツと共生するハコベやホトケノザ

 毎年のことだが、この時期は夏草の種が付く。普通に考えると種が一杯落ちて、来年は大変だと思ってしまうので刈り払っておきたくなる。しかし、自然農ではなるべく草も本来の循環の中で生きていってもらいたい。種が付く前に根こそぎ刈り取るのではなくある位程度は命をまっとうできるように努めている。

自家採種用の果実を収穫

 9月にもなると、夏野菜の自家採種用の実が熟してくる。
 今年はトマト、ナス、ピーマン、唐辛子、ズッキーニ、オクラの種は自家採種する。 

 まずはズッキーニの採種果を収穫した。通常、開花後3~4日、15~20cmで若採りする作物だが、採種するには2か月近く収穫せずに実らせておく。ぐんぐん大きくなり、今年は掌二枚分まで大きくなった。知らない人が見たら何の野菜かと思うだろう。
 収穫目安は着果から60日経過で、果梗部がコルク状に変化するため、記録と観察が大事だ。今回は無かったが、完熟状態まで畑に置いておくため、ネズミなどの食害、採種株の枯れ死や病気に注意する。気づくのが早めなら新たに採種果を用意することもできる。
 こちらのズッキーニの種採り作業はもう少し、常温で放置して追熟させてからにする予定だ。他の実践者の記録では収穫後半年近く放置しておいても、十分発芽力のある種が採れた事もあるようなので焦らず時間のある時に行うつもりだ。

 ミニトマト、大玉トマトは9月の半ばには採種を終えた。これはうちのトマトはまだ上手く育ててあげられなくて、株も寿命が短いため、早めに採種果を決めておいたからだ。
 トマト類の採種はひと手間かかる。以前紹介しているため、ぜひ参考にしていただきたい
 どちらの品種も、昨年よりも良く育った株から採種しているため、より自然農に適応した種になってきているのではないかと楽しみだ。

 まだオクラやナス、ピーマンは完熟になっていないため、10月になってからの採種になるだろう。ピーマンの自家採種は初めてで真っ赤なピーマンの実を見れて感慨深い。

寒冷地の自給菜園はどんどん暇になる

 これから冬にかけて出荷が始まる地域の農家ならまだしも、自給用、季節の作物を育てることを重視している私たちの畑はどんどん作業が減っていく。関西の方はまだ夏野菜も採れるだろうし、葉物や根菜の草取りも始まったばかりだろうか。

 ここ長野県の多品目な自給菜園では力仕事や草取りなどの体力勝負の作業が減る一方、嬉しい収穫シーズンがやってくる。定番の大根やかぶ、小松菜はもちろん、忘れてはいけないのが里芋だ。今年の里芋は株がだいぶ大きくなった。収穫が楽しみだ。

 10月の終わりには霜も降るようになる。それまでには夏野菜の収穫、種採り、片付けは終わりにしておきたいところだ。特に片付けは時間に追われていないため、後回しにしがちだ。また、秋冬野菜も凍みてダメになってしまう大根などは貯蔵する必要がある。里芋も霜が当たり過ぎると良く無いため、早めに収穫したい。
 しかし、寒さが厳しくなると外作業は辛いし、土が凍ると畝の補修作業も出来なくなってしまう。先にそういった補修作業を済ませておく方がいいのだろうか。どちらにしても、どんどん畑からは遠ざかる日々が増えていくだろう。

【自家採種】人参の自家採種のやり方【筑摩野人参で実践】

人参から自家採種を始めてみよう

 私たちは「循環する野菜作り」を目指して、多くの野菜で自家採種をしている。その中で今回は人参の自家採種について、やり方や注意点を実際の記録も踏まえて紹介していく。

 人参は発芽率が低いため失敗しない為に、たくさん種を播きたい作物だ。そのため、意外とたくさん種が必要になる。でも購入した人参の種はとても少なく感じるのはわたしだけだろうか。

 それも自家採種をすれば問題なしだ。十分すぎるほど種ができるので安心してたっぷりと播くことができる(本当はたっぷり播かなくても良いくらい上手に発芽させることが大切だけど)。

 再三だが、自家採種をするとその畑に合った性質に少しずつ変化し、年々作りやすくなるともいわれている。私自身それを体感した事はまだないのだが、理屈は通っているので検証して行きたい。

人参の採種栽培の流れ

採種栽培と食用栽培

 採種栽培は収穫物を食べる食用栽培とは異なり、全く違う栽培ステージまで生育させる必要がある。特に人参などの根菜類は夏播きした株を越冬させ、翌年の夏まで維持しておかないといけないため、畑での占有期間が非常に長くなる。そのことを念頭に置いて、作付をする必要がある。

 昨年から今年の夏にかけて行った採種栽培を例にする。
 昨年8月10日に種まきをした。寒冷地にあたる当地では若干遅めの種まきだ。この年は雨が多い8月で作業が出来ない日が続き、ようやく種まきできた。雨が多いと言うことは発芽は容易で、特に水やりをする必要も無く発芽した。

 その後の収穫までの管理は通常通りと同じだ。草に負けない程度に草取りをする。

母本選抜・植え戻し・越冬

 それから約4カ月、120日経った12月中頃に一斉収穫をした。その時点で育っている人参をすべて抜き、母本(種をつける株)選抜をする為だ。自家採種をするには品種が交配種ではなく、固定種である必要がある。固定種だと、同じ品種の中でも生育具合や形、味などにある程度の多様性(バラつき)があるため、自分の好みに合わせて母本を選ぶ。
 こうすることで次第に自分の畑で育てやすく、味も良い自分だけの品種に変わっていく。これこそ自家採種の最大の利点だ。

 選んだ母本は葉を切り落とし、すぐに採種用の場所に植え付ける。なるべく同じ畝、同じ畑の中に植え付ける。植えた母本の上に5cm程度土を盛って寒さに備える。浅かったり、土がながれるなどして、凍みてしまうと種採りできないため注意が必要だ。

211210 選別中の人参
並べて選別する
211210 植え替え中の人参
母本を植えなおす

 母本の数は最低でも15~20本は必要だ。できればそれ以上、50株ほど用意すると多様性を保ったまま自家採種できる。人参は自家不合和性(一つの個体の花で受粉しないこと)を持つため、ある程度の本数を用意しないと年々種の生命力が落ちてしまうそうだ。とはいえ、50本も用意するのはなかなか難しい。少なくとも15~20本は用意したい。実際は15~20本は小規模で自家採種する場合はかなり多い。私たちも今年は6本の母本で行った。

 翌年の4月ごろになると、植え付けた母本から新芽が出てくる。この芽が伸びて花が咲くことになる。気温が上がるにつれて、ぐんぐん背丈が伸びる。大体1mほどまで茎が伸びるころには花芽が始める。

抽苔~開花期

 人参の開花は主枝の頂花から始まり、主枝の脇から伸びた子枝、その脇から伸びた孫枝、ひ孫枝と続く。頂花は8日間開花し、その後の花は6~8日ほど開花する。そのため開花期間は1ヶ月にも及ぶ。

220623 開花した人参 tyouka
6月22日 頂花が開花
220623 開花した人参
たくさん開花してきた

 種の発芽率は主枝、子枝が良く、孫枝から先は品質が落ちる。そのため、頂花の開花に合わせて整枝を行う。主枝と子枝合わせて6本残し、他は全て根元から切り落とす。こうすることで、より充実した種を採ることができる。

刈り取り・乾燥・調整

 人参の種は開花後40~50日で完熟する。目安は種全体がきつね色に変化する。このとき、日数が経ってないにもかかわらずきつね色になった場合は未熟のままの可能性があるため、日数を確認する。また、種がきつね色に変わり、枝が緑色の物を選ぶと確実だ。

 雨が降った直後は種が湿り過ぎているため、晴れが続いてから刈り取る。刈り取った花傘は2~3日陰干しをしてから脱穀する。篩にこすりつけるようにすると、簡単に種が花傘から外れてくれる。

 種は風選してごみを取り除くが、自分で使用するだけならやらなくても良いと思う。脱穀した後、天日干しをして完全に乾燥したら完成だ。

自家採種の注意点

交雑を回避する

 人参の種採りは、秋に母本を植えておけば、花が咲く時期までやることがない。基本放置で簡単に種を採ることができる。

 注意しなければならないのが交雑だ。人参は他家受精なため、近くに別の人参があると交雑し、品種を維持出来なくなってしまう。
 複数品種の人参を植える場合は必ず、種採り品種以外のものを開花までに抜き取っておくことに注意する。基本的に1圃場1品種までの採種にする。

 また、ノラニンジンという植物は普通の人参と交雑する。ノラニンジンは葉っぱや花が人参と同じだが、根っこは食べられない。交雑してしまうと食用にならない人参になってしまう。
  私たちの圃場ではノラニンジンを見たことは無いが、開花前になったらくまなく圃場を歩いてノラニンジンがないか確認することが大切だ。根元から切り取ってしまえば交雑の心配はなくなる。

品種によって休眠期間がある

 無事採種した種、すぐに播きたくなる。大体頂花の種が登熟するのが7月20日頃で、丁度人参の種まき時期となる。せっかくならその年に自家採種した種から栽培したいのだが、かなりスケジュールが厳しい。

 しかも、人参の種は採種後1~3か月間休眠(つまり芽が出ない)する品種がある。自分が種採りした品種が休眠するか、ネットなどで調べても出てこないことが多い。誰も自家採種した事無い品種が大半だからだろう。

 もし、どうしても知りたい場合はその品種を開発した種苗会社に問い合わせれば分かるかも知れない。

 私たちが今年自家採種した自然農法国際研究開発センターの「筑摩野五寸」という人参は若干の休眠期間があるように思われる。
 今年の一番最初に登熟した種を10日ほど追熟させてから播いてみたところ、発芽はした。だが、蒔いた種の割に芽が少ない様に感じた。覆土後しっかり鎮圧し、上から不織布を掛けておいたので水分管理はしっかりできていたはずだ。

 今年採った種は来年用に保管して置いて、今年栽培した株で再来年用の種を採種する、というのを毎年繰り返した方が発芽率の良い種を毎年使えるかもしれない。
 その場合、選抜や畑へ適応した結果が分かるのが遅くなるだろう。

適切な保管方法で管理する

 人参の種は短命で通常1~2年でかなり発芽率が落ちる。アブラナ科の種は5年は持つと言うし、ビーツなんかは常温放置で3年は発芽率が落ちないようだから、人参はそれと比べると短命だ。

 そこで人参は特に保管に気を遣った方が良い。一般的に種の保管は水分がなるべく含まれないように乾燥させ、密封できる容器に入れて、冷暗所で行う。

 人参の場合は種を天日干しした後、ビンに乾燥材とともに入れて置くと安心だ。しっかりとふたを閉め、冷蔵庫の野菜室で保管する。こうすれば二年間は十分使える状態を保てる。

 まとめて二年分採種し、しっかりと保管して置けば手間を半分にして自家採種した種を使うことができる。

【自然農】アブラナ科は交雑しやすい! 自家採種の注意点【交雑】

アブラナ科は交雑しやすい

 自家採種は野菜の種類によって、やりやすいものとやりにくいものがある。マメ科の大豆や小豆などは簡単で、種自体が収穫物になるため、普通に栽培していくだけで良い。トマトやかぼちゃも比較的簡単で収獲物そのものから種を取り出す工程が追加されるだけだ。一方、ナスやピーマン、オクラなどは収穫物をさらに1ヶ月ほど追熟させる必要があるため、少しだけ難易度が上がる。

 特に難しいのが根菜や葉物の類だ。これらは基本的に通常栽培に加えて、越冬させた後に花を咲かせ、実をつける必要があり、一気に難易度が上がる。とはいっても、やってみると意外に簡単だ。私たちも大根とルタバガの種採りをやったことがあり、基本的に放置しただけで出来た。

220209 大根の種が入った鞘
完熟した大根の種
220209 採取した大根の種
採種した大根の種


  根菜・葉物の中でも大根やかぶ、きゃべつのようなアブラナ科野菜は交雑しやすく、種採りには神経を使う。今回はアブラナ科の種採りについて、現時点でわたしたちが気を付けている事を紹介する。

アブラナ科の交雑相関関係

 次の内容は「農家が教えるタネ採り・タネ交換の本(農文協)」を参考にしている。この本は自家採種に取組むうえで結構に役に立つ情報があるため、おすすめだ。

 アブラナ科の野菜には大根やかぶ、キャベツ、白菜、小松菜、などなどたくさんの野菜がある。これらはさらにどの属に属するのかで分類することができる。

 大根、はつか大根が属するダイコン属、かぶやキャベツ、白菜、小松菜、水菜、ブロッコリーなど多くの野菜が属するアブラナ属、ルッコラが属するキバナスズシロ属、クレソンが属するオランダガラシ属などがある。

210419 大根の菜花
大根の蕾

 アブラナ属同士では簡単に交雑する。同じアブラナ属でも、かぶ・白菜・水菜・小松菜はお互いに良く交雑する。また、キャベツ・ブロッコリー・カリフラワー・ケールもお互いに良く交雑する。だが、かぶグループとキャベツグループ間では交雑しない。つまり、かぶとキャベツ、白菜とブロッコリーなどの組み合わせは交雑しない。

 ダイコン属はほとんど他の属とは交雑しない。まれにかぶグループのアブラナ属へ一方向の交雑見られ、大根の葉っぱをしたかぶの種が採れるなどの交雑がある程度だ。アブラナ属でもキャベツグループとは交雑しない。

 これらは属間の関係や染色体数(遺伝子が複数集まった構造体。同じ科、属でも種によって染色体の数が異なる)の違いによって交雑するしないが異なるが、複雑な話になるためここでは実際に交雑しない組み合わせだけ確認出来ればよい。

自家採種しやすい、交雑しないアブラナ科

 属間でも交雑しやすく、注意が必要なアブラナ科の自家採種だが、例外もある。

 まずはルッコラ。ロケットとも呼ばれる、ピリ辛な風味が美味しい葉野菜として人気がある。ベビーリーフとして使われる事も多い。
 ルッコラはアブラナ科キバナスズシロ属で、この属の野菜はルッコラだけである。このキバナスズシロ属は他のアブラナ科と交雑しないため、交雑の心配をせずとも自家採種できる。ルッコラに限った話ではないが、種が細かく、密に播くことが多いため意外と種代がかさむ。自家採種をすれば数株から大量の種が採れるため、遠慮なく播くことができる。

 次はのらぼう菜だ。あまり馴染みのない野菜だが、一部でファンが多い。越冬させ、翌春に抽苔した蕾を食べる。東京都や埼玉県の各地で古くから栽培されている伝統野菜で、江戸東京野菜の一つになっている。耐寒性が高く、江戸の飢饉では多くの人々を救ったと言われている。
 のらぼう菜はアブラナ属の野菜だが、他のアブラナ属との野菜と交雑しない。これは先に述べた染色体の数がのらぼう菜だけ特有の数であるためだ。また、自家不合和性がなく、自家受粉も容易にするという特徴もある。
 のらぼう菜はアブラナ科の中でもとりわけ特殊な野菜といえる。

 ルッコラやのらぼう菜は簡単に交雑のリスクを回避して種採りできる。

交雑しない組み合わせと種の寿命で複数品種の種採りを実現する

 交雑しないようにアブラナ科野菜の自家採種を行うには、一つの圃場で一つの品種の野菜のみ、種採りをすればよい。しかし、アブラナ科野菜は数が多く、なかなかそうはいかない。
 アブラナ科野菜は種の寿命が比較的長命(低温・乾燥下で五年ほど)のため、毎年種採りをするのではなく、一度に数年分まとめて採種すれば3,4品種なら交雑をあまり気にせず、品種を維持できる。
 さらにかぶグループとキャベツグループ間では交雑しないため、かぶとキャベツを同時に種採りすることも可能だ。

 また、交雑を防ぐ手段として、採種株が開花前に数株だけネットで覆ってしまうのも有効だ。ネットの外側には採種株と同じ品種が植わっている状態になる。これによって、飛来昆虫による交雑を防ぐと同時に、採種株への花粉供給源にもなる。
 ネットで覆うだけで、ネット外側に何も植えていないと、ネット越しに訪れた昆虫や風に乗って多品種の花粉がついてしまい、交雑の危険が高まる。

 そして、通常栽培で複数品種を栽培した場合は開花前(蕾茎が伸びてくるためすぐにわかる)に必ず食べるか、刻んで開花しないようにする。雑草にもアブラナ科の草があるため、開花前に摘み取ったりするなど交雑を避ける工夫をする。

 このようにすれば、アブラナ科野菜でも5~10品種くらいは自家採種できると考えている。ハウスがあれば、さらに簡単に採種品種を増やすことができるだろう。

【草生】草生栽培なら勝手にコンパニオンプランツを活かした栽培が出来る【混植】

コンパニオンプランツとは

 コンパニオンプランツは、育てたい植物と一緒に(コンパニオン: companion =共生)育てる植物をさす用語だ。これを一緒に育てることで病害虫の発生を抑えたり、被害を軽減することができたり、連作障害を予防することができると言われている。最近では雑誌や農業書でも広く取り扱われ、一般的に活用されるようになった栽培技術だ。

 例えば、トマトを栽培したいときはコンパニオンプランツとして、マリーゴールド、バジル、ネギなどがあげられる。
 マリーゴールドはセンチュウを抑制し、バジルはその香りで虫をよける効果がある。ネギは根に共生する微生物が殺菌作用のある分泌液を放出し病害対策になる。ネギの代わりにニラを植えても良い。

 どの野菜にも相性の良い植物というのは少なく、組み合わせによってはお互いの成長を阻害することもあるため、注意が必要だ。

 自然界を見ても、単体の種の植物が繁茂している光景はあまりない。植物はお互い助け合いながら群生しているということだ。これを畑でも再現することでより自然に近く、健康的に野菜を育てることができる。

 畑が狭い時にも有効で、少ないスペースで多くの野菜を育てることができる。本来ならトマトだけの畝も、間にバジルを植えればそれも収穫できる。しかもお互いが助け合って良く成長する。

 良い事だらけのコンパニオンプランツだが、欠点もある。それは管理作業が増えたり、やりにくくなることだ。
 通常、一つの畝には一つの植物しか植わっていない。そのため、同じ作業はまとめて行えるしやりやすい。しかし、コンパニオンプランツを植えると、植わっている植物が増えるため、畝が混雑し手間取ることがある。特に草取り・草刈りが大変になる。これは工夫次第で多少は気にならなくなる。一直線上にピシッと並べて植えたり、株間をきちんと一定にしておいたりすると、作物が植わっていない所を一気に作業できるようになり効率があがる。

コンパニオンプランツとして利用される植物

 色々な植物がコンパニオンプランツとして利用されるが、代表的な種類と効果を少し紹介しようと思う。

①マリーゴールド
 キク科の植物で、オレンジの花がきれいなマリーゴールドは虫よけ効果があるとされてている。根菜類の肌を傷つけるセンチュウ抑制に効果的とされており、よくジャガイモや大根などと混植される。また、トマトやきゅうりなどの果菜類とも相性がなく、アブラムシを寄せ付けにくくなると言われている。

2021 マリーゴールド

②ニラ
 ニラは土の殺菌効果あると言われている。殺菌と言っても全ても殺すわけではなく、悪い菌と良い菌のバランスを整えてくれる。苗を植えるときに一緒に植えると、ピーマンなどに良くみられる青枯れ病や萎凋秒などを抑制する。
 もちろんニラ自体も収穫可能で、畑の収穫量をあげることができる。しかも、多年草なので不耕起栽培の場合は毎年同じ場所に生えてくる。植えなおさなくとも、コンパニオンプランツとして利用できる点も優れている。

③マメ科の植物
 ざっくりしているが、マメ科の植物もコンパニオンプランツとして利用されることが多い。落花生や枝豆など食用にもなるものやクローバー、ヘアリーベッチなどのカバークロップ、グラウンドカバーとしても利用されるものもある。
 マメ科の特徴は根粒菌と呼ばれる共生菌による窒素固定だ。これによって空気中の窒素を植物が利用できる形で地中に取り込んでくれる。その栄養分を使って、育てたい作物の育ちが良くなる。

 これら以外にも効果的と言われている植物の組み合わせはたくさんあり、畑をにぎやかにしてくれ、健康な野菜が育つ手助けになる。「コンパニオンプランツ」でアマゾンで検索すると参考になる書籍が多数見つかるので見てみると良いだろう→(Amazon検索結果)」。

雑草がコンパニオンプランツになるのではないか

 雑草と書いたが、雑草という名の草は無い。それぞれ名前があり、どんな環境を好むのか、どんな植物と一緒だと育ちが良いのか異なる。つまり、一つ一つ独立した植物だ。

 コンパニオンプランツは多品目栽培や自給的な小規模栽培で効果的な栽培技術だ。当然コンパニオンプランツを栽培に活用するには自分でタネを購入して、種まきや育苗をして畑に植えることになる。持続的で自分達の生活の範囲で循環する農業を目指している私たちとしては、外部から種を持ち込まないといけないのであればちょっと利用しにくい。

 余談だが、私たちは緑肥用にライ麦を自家採種している。まだまだ量が少ないがほぼ放置で栽培できるので、使いたいところに好きなだけ播ける自家採種はやる価値がある。最初の土壌改良には重宝する。またマリーゴールドも採種が簡単なので、今年栽培に使う分は簡単に採種することが出来た。

 自然農では基本的に耕さず、草や虫を敵とせず、自然の中でともに生きている仲間として見る。ときにはこちらに牙をむく事もあるが、それも自然の一部であり、大きな循環の中でいずれこちらに好影響をもたらしてくれる。
 不耕起で草生にしていると一年中なにかしらの草が生えている。それはイネ科の草(イタリアンライグラスやエノコログサ、メヒシバなど)やシソ科(ホトケノザ、ヒメオドリコソウなど)やマメ科(クローバーやカラスノエンドウなど)などこれだけではなく、多種多様な種・属の草が季節に合わせて生えてくる。

 単にコンパニオンプランツとして目的の作物に合わせて1・2種類植物を植えておくよりも、はるかに多様性に富んだ植生が草を生やしておけば勝手にできあがる。生物的に多様性のある畑の中に一つ育てたい野菜があったとして、それだけが集中的に攻撃されると言うことが格段に減る。
 実際スナップエンドウの畝の脇に生えているライグラスにアブラムシがつき、それを狙ってテントウムシがたくさんいるのを今年も見た。スナップエンドウにアブラムシがついても、そのまわりには既に生態系が出来ているため、そこまで大きな被害にはならない。

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 草はわざわざ種をまかなくても、勝手にそのときの土の状態に合わせて生えてくる。どの草が生えてくるかである程度どんな性質の土かわかり、育ちやすい野菜の種類も決まってくる。そういった共生環境に自ずからなっていくのが自然農、自然農法なのではないだろうか。

 しかも、草なら管理しやすい。思い切ってざっと刈りこんでもこれからの時期、すぐにまた生えてくる。背が高くなる作物なら光合成や風通しに悪影響が出ないくらいまで放っておける。自然農では刈った草を畝上に戻す草マルチをすることが多く、数回草刈りをすれば草の勢いも落ち着いて来る。

自家採種でさらに草と共育ちするようになる(かも)

 ここでもう一つキーになることが自家採種ではないかと思う。一般的に自家採種実施者の経験をまとめると、自家採種を繰り返すほどに「畑に馴染んで」栽培しやすくなると言う。

 自家採種については自分自身の経験も少なく、実践者の実際の体験談から判断するしかない部分が大きい。だが多くの人が自家採種によって、育てやすくなり収量が上がった、さらには味も良くなってきたと言う実感を得ているのは確かだ。

 彼らの多くは自然農法実践者でもあり、草生で栽培している。そこで育った種は草と共に育った記憶を持っていて、より草と一緒に育ちやすくなっていくのかもしれない。

 自家採種にはたくさんの利点がある。これからも出来るだけ多くの種を自分たちの手で採っていきたい。

草生栽培(自然農)=コンパニオンプランツの宝庫

 常に圃場に草を生やしておくメリットは多い。土壌の劣化を防ぎ、昆虫などの小動物や微生物の生態系を守ることにもつながる。

 作物を植えた後も、なるべく草を全て取り除かずに共存させることでコンパニオンプランツとしての効果も期待できる。自然農や草生栽培で農薬を使わなくても綺麗な野菜が育つのはこうしたコンパニオンプランツ的な共存が良い影響を与えているのかもしれない。

 さらに緑肥を栽培することで生物多様性も深まり、土壌の保護にもなる。このあたりもまた詳しく記事にしたい。

 実際の栽培の様子はインスタグラムで随時更新して行く。

【自然農】2021年のミニトマトが全然できなかった理由とその対策【不耕起・無肥料】

上手くいかなかった原因を考察する

 昨年のミニトマト栽培はロッソナポリタン(パイオニアエコサイエンス)を栽培し、かなり豊作だった。次々と開花し、霜の降る10月下旬まで収穫が続いた。背丈は2m近くまで伸び、緑のカーテンのようになっていた。収穫終了間際に自家採種も行った。

 今年はロッソナポリタンの自家採種1代目の種を使用した(→2020年の自家採種はこちら)さらに育苗の手間を減らした栽培を目指した。栽培方法を自然農に切り替えたこともあって、肥料は前年から一切加えていない。耕すこともせず、伸びた草を畝上に刈っては敷くことを繰り返した。
 育苗は4月上旬から35日程度で、本葉3枚ほどで仕上げる予定だった。標準では約60日間、第一花房が付き始めるころまで育苗するのでかなりの若苗になる。畑に定植したのが5月20日前後の十分に気温が上昇してからだったが、その後の成長がよくなかった。不耕起による弊害でモグラの巣穴で根が伸びず、成長が止まってしまった株も多く見られた。

育苗の失敗した点

 今回の栽培において、失敗に終わった大きな原因は育苗にあると考えている。そのうちの一つは苗が小さすぎた(成長ステージが手前過ぎた)こと。もう一つは育苗土の肥料分が多く、圃場の栄養分が少なかったこと。この二つがお互いに影響し合ったのではないか。

 育苗土はタキイの種まき用土を使ってみた。肥効が長く、保水力が高いとのことだった。本来であれば、育苗土も自前で用意したいのだが、準備するのに時間が掛かるため、市販の土を使用した。
 この土はNPK=600,1200,570(mg/l)で肥効が30-40日の長期肥効型の種まき培土だ。肥料分が多く、長い期間育苗できる。これを50穴セルトレイに詰めて使用した。発芽は良く、順調に生育していた。

21051 発芽はばっちり


 育苗を終え、畑に定植したのが5月20日ごろだった。その後活着は早かったものの、成長が遅く、50株植えてまともに収穫できたのは3株ほどしかなかった。
 これは育苗土には十分すぎる肥料が含まれていた一方、定植後の畑の土にはほとんど肥料分がなく、その環境変化に対応出来なかったのではないかと考えている。私たちの圃場は前述の通り、施肥を二年間していない。雑草の生え方もそこまで旺盛ではなく、地力は低めだった。
 植物にはその時の環境に合わせて、伸ばす根を変えているという話しを聞いたことがある。肥料たっぷりの育苗土で過保護気味に育てられた苗は、自然農的な土の厳しい環境に適応できなかったのだと思う。

 また省力化を考えて50穴のセルトレイを使った。これが苗が大きく育たなかった原因ではないかと考えている。セルトレイだと普通の大きさのポットと比べて、土の量が少なくなる。すると根が伸びる空間も狭くなってしまう。
 根が伸びないと地上部は大きくならないので、小ぶりの苗になってしまった。小さい苗の方が根付きが良いのでは、と考えたが光合成量が少なく、根も少ないためその後に成長スピードが著しく落ちたのだろう。

来年の育苗での改善点

 失敗した結果と原因を踏まえ、育苗は次のように行うことにした。

 育苗に使う土は市販の培養土ではなくて、実際に定植する畑の土をそのまま使用する。雑草の種が含まれているため、育苗中に生えてきたものは適宜除去する。もし、手間が掛かり過ぎるようなら高熱処理などをして雑草の種を除去することも考えるが、今回はそのまま使用してみる。
 こうすることで育苗と定植後の環境変化が最小限に抑えられるし、元々肥料分に乏しい土で育苗する事で、栄養を吸収する力が強い根が育つではないかと考えている。

 また容器を大きい物に変更する。今回は50穴セルトレイ(1穴約80ml)を使用したが、12cmポリポット(約800ml)にする。こうすることで土の容量が10倍近く増える。土に含まれる栄養が少ないので絶対量を大きくして、育苗に必要な栄養素を確保しようという考えだ。土は植える場所のものをそのまま使うので足りなくなることは無い。
 根が伸びる空間を大きくなるのでたくさんの根が伸びた良い苗になるのではないかと期待している。

 育苗と定植後の環境をなるべく近づけることで定植によるダメージを少なくすることに重きを置いた。特に育苗土を圃場そのものの土を使用することは、良い結果になると思っているので楽しみだ。

 育苗は引き続き室内で日当たりの良い部屋を使って育苗することになる。夜間はストーブや電気毛布を利用して、地温を確保する必要があるため少々温度管理が難しい。十分な土地が確保できれば踏み込み温床を使ってビニールハウスでの育苗にも挑戦したい。

育苗は寒冷地では必須の技術。栽培の良しあしを大きく左右する。

 寒冷地はもちろん、温暖地でもトマトやナスのような発芽・生育に高温を必要とする野菜の栽培には育苗が必ずと言っていいほど必要になる。自然のあるがままに、を目指す自然農で育苗するのは反自然になるかもしれないが、真夏に良く育つ野菜はやはり夏に食べたいところ。すべてが全て、自然でなくてもいいんじゃないかと思うので、育苗はやってもいいんじゃないかと思う。

 「苗半作」という言葉があるほど、野菜作りにおいて苗作りは重要なポイントだ。急激な気候変動や、病害虫の蔓延といった環境変化に柔軟に対応できる苗作りを目指して、これから色々と試してみようと思っている。

 また、育苗に頼らない、夏野菜の栽培法がこれならできる! 自家採種コツのコツ: 失敗しないポイントと手順(農文協)に紹介されていた。「自然生え(じねんばえ)選抜法」という方法で、栽培が終わった後、完熟の果実をそのまま土に埋めて。春になって一斉生えてくる芽の中で強いものを選抜して育てていく。元々は育種法の技術だが、これでしっかりと収穫できれば、育苗に頼らない、より環境適応力の高い栽培法になると思う。さらに自家採種の手間を省くことが出来る。
 昨年の秋に完熟トマトを数個、地面に埋めてあるので、その経過も観察していく。また食用ホオズキも同じように土に埋めてある。