【自然農】寒冷地でのオクラ栽培。直播か育苗かどっちがいい?

オクラは高温性の野菜です

 ねばねばで健康的なイメージがあるオクラは、疲労回復に効果的でビタミンも多く含む人気の野菜。オクラのねばねばは食物繊維であるペクチンで、身体の中で水分を吸収し、排便を促す機能がある。真夏の暑い時期に刻んだオクラとおかかでご飯がもりもり食べられるのでわたしたちもかなり好きな野菜だ。

 新しい品種が毎年のように出ていて、市場も活発。定番の五角オクラや長くなっても柔らかい丸オクラや赤オクラ、白オクラなど種類がとても豊富。家庭菜園でも人気で、スーパーにはあまり売っていない品種を育てている人も多いだろう。

 そんな人気なオクラはアフリカ原産の野菜。そのため、高温を好み、最適温度は25-30度と高く、真夏の高温と強い日差しに耐える。
 一方で10度以下の低温では成長が止まり、霜に当たると枯れてしまう。よって、寒冷地に被る長野県ではかなり栽培期間が短くなる。遅霜の心配がなくなる五月中下旬でやっと種まきが出来る。生育初期に低温に当たりやすく、播き時がシビアといえる。

 私たちもビニールマルチを使用した一昨年は密植栽培でそれなりの収穫に恵まれた(→オクラの密植栽培)が、昨年はほとんど育たなかった。原因は発芽後の低温とモグラの生活道による根の痛みだと考えている。特にマルチを使用しないのに、五月中旬に種まきしたのが良くなかった。

.jpg

 オクラは手が掛からず、それなりの収穫を見込める野菜なので今年もチャレンジする予定だ。今回は昨年の失敗を踏まえて、少し工夫してみるつもりなので、それを紹介しようと思う。

育苗で生育期間を稼ぐのが一般的だけど……

 オクラのような典型的な夏野菜は育苗することで早播きして、生育期間を長くとるのが一般的だ。トマトやナス、きゅうりなどではどの地域でも取り入れられている技術だ。

 オクラの場合も、苗の状態で一ケ月くらい育ててから植え付ければ早くから収穫出来ると考えるのは当然だろう。だが、オクラは植え替えを非常に嫌う。というのも、オクラは主根が一本伸びていく直根作物だ。この手の野菜は大根やニンジンと同じで移植で根が傷みやすい。一度痛んでしまうと致命傷になってその後の生育が悪くなるため、注意が必要だ。
 育苗期間はなるべく短い方が良いため、二週間ほど育苗したら植え付けとする。長くとも三週間で植えてしまいたい。

 セルトレイなどの深さがない容器で育苗すると、すぐに根が出てしまい痛んでしまうため、大き目のポットで育苗する。今回は10.5cmポットを使ってみるつもりだ。

 種まきは五月十五日前後ごろを予定している。発芽後、様子を見ながら根が下から出ないうちに定植する。6月頭には植えてしまいたいところだ。

地温が足りない直播は、もみ殻燻炭で保温

 育苗がだめなら直播で、といきたいところだが寒冷地の長野県でビニールマルチも使わないとなると、六月に入って十分な地温が確保できてからになる。五月中でもなんとか発芽まではできるだろうが、その後に低温(10度以下)が何度か来るとかなり根が傷む。生育初期のアブラムシ被害も深刻のため、なるべく遅まきで健康に育てるのがセオリーだ。
 オクラは種まきから約二カ月かかって収穫となるため、このあたりでは八月に入り梅雨が明けてから収穫が始まり、十月半ばまでの二ヶ月ほど採れることになる。

 マルチは不耕起栽培では取り入れにくいが、トンネル栽培ならやりやすい。トンネル栽培は撤去後も支柱を誘引用に利用できるためかなり有効な手段だろう。

 今回は資材はほぼ使わない。一つだけ、もみ殻燻炭を株元に敷き詰めて地温の上昇効果を期待する。もみ殻燻炭はもみ殻を炭化させたもので、主に土壌改良に使われる資材だ。今年は市販のもみ殻燻炭を購入したが、もみがらの入手ができれば自分で作ることも簡単にできる。

 もみ殻燻炭は黒いため、黒いビニールマルチと同じで太陽光を吸収し地温を上昇させてくれるのではないか期待している。さらにもみ殻燻炭はアブラムシの忌避効果もあるらしい。アブラムシはオクラの生育初期に大きなダメージを与えるのでこれを回避できるなら一石二鳥だ。

 昨年は種まきを五月中旬にしてしまい、発芽後に温度が足りずに弱ってしまった。そのため、今年は六月に入ってから畑に種まきをする予定だ。

どちらの方法が寒冷地でのオクラ栽培に合っているのか検証します

 今年は寒冷地でオクラを栽培する上で育苗・直播のどちらが良いか検証して行く。

 6月に入ってから直播する場合と5月上旬に育苗する場合で約三週間の差がある。この差が移植を嫌うオクラでどのくらい埋まるのか気になる所だ。もみ殻燻炭による地温上昇、アブラムシ忌避の効果も楽しみだ。

.jpg
八月中旬頃のオクラの様子

 今年わたしたちが栽培するオクラは、エメラルドとダビデの星だ。エメラルドは一昨年自家採種した種(→オクラの自家採種はとても簡単)と今年新たに購入した種を使用する。ダビデの星は自家採種に至らなかったため、購入した種を使う。

 オクラは自家採種しやすいため、二品種とも自家採種したい。オクラは虫によって簡単に交雑するため、圃場を分けて栽培する予定だ。オクラの自家採種については、採種株の選定、採種果をつけるタイミング、保存方法について詳しくまとめてみようと思う。狭い畑で二品種以上を自家採種する際に交雑を防ぐ方法も紹介したい。

百姓農園の夏野菜の植え付けスケジュールとその決め方。地域の気候に合った時期に種まきしよう。

種袋の裏に書いてはあるけれど

 夏野菜に限らず、野菜の種をまいたり、苗を植える時期を決めるのは難しい。当然自然相手だから毎年同じ日というわけにはいかないし、そのタイミングを間違えると野菜が枯れたり、痛んだりしてしまう。近くに同じ野菜を育てている人がいれば、例年の時期を教えてもらうのも一つの手だ。地元の種苗店に行ってもいいかもしれない。
 しかし、なかなかそういった菜園仲間がいなかったりすると、自分の地域の気候を掴んで種まきなどをするのは難しい。人づきあいが苦手な人もいるだろう。

 種を買うと、多くの場合、紙の袋に入っている。種袋の裏には重要な情報が沢山書かれている。発芽適温や生育適温、種の生産地や種子消毒の有無などだ。初めて栽培する野菜では必ず確認しておきたい。
 裏面には必ずと言ってよいほど、次のようなグラフが載っている。横軸が月で縦軸が地域ごとに分かれている。

.jpg

 それを見ると、自分の地域に当てはめてある程度の種まき時期や栽培時期が把握できる。主に、寒冷地、一般地、暖地の三区分に分かれていることが多い。この栽培暦を参考にすれば大雑把に検討をつけることができる。

 私たちは設置するのも、撤去するのも面倒臭いビニールマルチは使わないことにしている。当然何も資材を使わない場合は使う場合に比べて、地温や気温がよりシビアになる。種袋の通りに種まきしたり、定植をすると早すぎることがある。

 

夏野菜は16度が判断の分かれ目

 夏野菜の種まきをができる目安となるのは最高気温が16度を超えてからだ。体感的には冬の日々とは打って変わって、かなり温かく感じる。

 そして定植は平均気温が16度を超えてからが目安となる。ここまでくると遅霜の心配もなくなり、春の気配も無くなる頃だ。大体、最高気温を16度を超えてから二ヶ月ほどで平均気温が16度くらいになる。

 ナス科野菜は育苗期間を二ヶ月とすると種まき可能日と定植日がから遡って二ヶ月がほぼ同じになる。ピーマンは特に低温を嫌うため、トマトなどから一週間遅らせてもいいだろう。

 私たちは今シーズンのナス科野菜は3/26に種まきをした(→今年の夏野菜の種まきのきじはこちら)。これは5/25から苗の定植を始めたいからで、このころから平均気温16度になる。育苗期間は二ヶ月を予定している。現在、発芽してから約十日が経過している。

 きゅうりやズッキーニ、オクラなどは育苗期間が二週間から一ヶ月となるため、それを考慮して種まき日を決める。直播をするなら平均気温が16度くらいになるまで待った方がいいと思う。苗を作るなら育苗期間分遡って日付を決めると良い。

気象データは気象庁でチェック

 このような気温データは気象庁のホームページから得ることが出来る。→https://www.jma.go.jp/jma/menu/menureport.html

 最低気温、最高気温、平均気温などが月別、日別でまとまっている。これを参考にして種まきの日を決める。同時に日記などに霜の有無や風の強さを温度とともに記録しておくと便利だ。特に霜の有無は夏野菜の生育初期や採種の日程決め、秋冬野菜の種まき目安にもなるので記録しておくといい。人の記憶はあいまいなのでしっかりと言葉で残しておくのが安心だ。

 また実際に種まき予定日、定植予定日が近づいたら天気予報もチェックする。一週間くらいはかなり正確な予報となるため、作業の参考になる。どこが出している予報を見るかで少しずつ変わってくるため、最低でも二つは確認したいところだ。もし、種まきを予定していて、しばらく雨がなくて高温が続くようなら多少早くとも雨の次の日に播いてしまう選択肢もある。逆に低温が予想されるようなら1,2日くらい遅らせても収穫開始は大して変わらない。

 時期を少し遅らせても収穫できる日は大して変わらないと言うのも結構大事だと思う。夏野菜は温度管理がとても難しい二月初旬に播いても、気温が上がってくる三月に播いても、収穫時期は一週間ほどしか変わらないことが多々ある。

 無理して早播きしても、苦労や心配が多い。野菜にも無理を掛けることになる。それよりゆとりを持って楽な時期にした方が後の生育も良くなって、結果美味しい野菜が採れる。旬の時期、適期適作が美味しい野菜作りには欠かせない。

 昨今は一年中同じ野菜がスーパーで手に入るようになった。品種改良、耐病生の向上、栽培技術や資材の進化、流通の発達のおかげだ。でも、真冬に食べるトマト、きゅうりは美味しいだろうか。食べたくなるだろうか。自給栽培をしていれば、必然的に旬の野菜をたくさん食べることになる。それが自然だし、身体にもいいと思う。そして、自然の流れに身を任せる生き方ができる。これが何よりも贅沢で、幸せだと思う。いや、そう思える暮らしをしていきたい。

【天地返し】自然農一年目から収穫できる畝作り。1年かけて検証もしていきます。【自然農】

自然農も万能の農法ではない

 無肥料無農薬でしかも耕さなくても、十分野菜が育つと言われているのが自然農だ。一言に自然農といっても明確な定義があるわけではなく、様々なやり方がある。私たちは無肥料無農薬不耕起での野菜作りを自然農と呼んでいる。最終的には自分たちの食べる分は自分達で作りたいと思っている。

 日本全国を見れば、自然農や自然栽培でかなりの収穫を上げているひとはたくさんいる。慣行農法と同等とはいかないまでも7割くらいの収穫をしている例はたくさんある。

 自然農が万能の農法ではない、というのは初めたばかりではそういった十分な収穫が得られないことも一つの要因だ。実際、私たちが本格的に自然農を始めた昨年はトマトやナスなどの果菜類はほぼ収穫できなかった。

2021 トマト これしかできなかた
何とか成ったミニトマト
2021 ナス これ一本だけ
一本しかできなかったナス

 先駆者たちの話しでは、大抵の作物が育つようになるまで7年ほどかかると言われている。自然農では有名な川口由一さんも同じことを言っている。Youtubeで自然栽培、自然農での野菜作りを発信している高内実さんや今橋伸也さんも似たようなことを話されていた。

 自然農での野菜作りは長い年月をかけて、いろんな野菜が育つことができる土に変わっていくのを待つ必要があると言うことだ。肥料などは使わないが、そこに生えた草を刈り敷いていくことでそれを食べる小動物や微生物によって土は肥えていく、というのが自然農の真髄なのだが。なかなか人間の求める速度では変わっていかない。でも、実際一年目の野菜作りでほとんど収穫がないとかなり辛い。それで自然農や野菜作りそのものをやめてしまうのはとてももったいない。

 そこで今回は自然農一年目から、荒れた畑でもある程度野菜が育つようになるという方法を紹介しようと思う。

天地返しをしてから畝を立てる

 これから紹介する方法は天地返しと言われる方法で、一般的な栽培技術として活用されている。この方法は現代農業 2022年4月号 270ページに掲載された記事を見て知った。この記事の筆者、中尾佳貴さんは島根県在住で自給農をしながら、自然農とパーマカルチャー講座の講師をされている(→ホームぺージ)。

 中尾さんご自身が自然農を始めて一年目、ほとんど収穫がなかったことから、一年目からある位程度の収穫を出来ないか試行錯誤し、その内の一つを紹介して下さっている。

 それは畝の中央に深さ30cmで半分ずつ天地返しをする、というものだ。天地返しは単純で、上半分の土と下半分の土を入れ替えることである。固く締まった土でも、天地返しをすることで土がほぐされ、野菜が根を伸ばすことができるようになる。

 さらに長年、機械による耕耘によってできた硬盤層を破壊することができる。硬盤層は地中20cmあたりに出来る、特に締まった層で、排水性を悪くしたり、根が伸びられる範囲を狭めてしまったりと困り者だ。硬盤層は自然に草を生やしておくことによって、時間を掛けて無くしていくことができる。しかし、時間がかかるので物理的に破壊することができると、その障害を早く取り除くことができる。

天地返しのやり方と注意点

 では天地返しのやり方を紹介する。

 必要な物は・剣先スコップ・鍬・紐・ビニールマルチ(ブルーシート)だけだ。このうち紐とビニールマルチは無くてもできる。あると作業が多少楽になったり、綺麗に出来るので準備が出来れば有った方が良い。

 まず畝を立てる場所を確認する。既に出来ている畝を天地返しする場合は畝の中央を確認する。もしビニールシートがあれば、掘り返す部分の横に左右どちらとも敷く。この上に土をのせていくと埋め戻す時に綺麗に戻すことができる。

.jpg
ちょっと黒くなっているところを天地返しする

 次に畝の中央を剣先スコップの幅分で掘っていく。一回目で15cm分の土を掘りあげる。土は左右どちらかと決めて置いて、片方に集めておく。雑草が混ざってもあまり気にしない。

15cmほる
上の層を掘り上げたところ


 スコップだけだと全部を掬うことはできないため、崩れた土を鍬ですくい上げる。これで地上から15cmの深さの溝が出来る。

 次はさらに15cm深く土を掘っていく。このとき掘り上げた土は最初とは反対側に上げていく。このとき長年、耕耘されて雑草もあまり生やさないような管理をされてきた畑だと、かなり固いことがあるようだ。大きな石が出てくる事もある。

.jpg
深い溝ができた
.jpg
断面。真ん中に色が変わっている層がある(硬盤層?)

 両側に土を掘り上げたら、順番を入れ替えて埋め戻して行く。このとき、溝の最下層にもみがらやもみ殻燻炭、刈り草などを10cmほどになるように踏み込んでおくと、雑誌の記事では紹介されていた。今回は諸事情により何も入れずに埋め戻した。

 この後、通常の畝立ての作業となる(→自然農での畝の作り方)。通路の土を掘り上げて、高さ15-30cm程の畝に仕上げる。この作業は種まき・植え付けの3週間以上前に行う。

 自然農では一度立てた畝は何年も補修しながら使っていく。生えた草を刈り敷いて、三年ほどでたいていの野菜は育つようになるようだ。

普通の畝を横に用意して比較実験

 この作業で野菜が育つようになるのは、締まった土が強制的にほぐされ野菜の根が伸びられる空間を確保できることが一番大きいと思う。また、硬盤層を破壊することで水はけなども改善され、より野菜が育ちやすい環境に近づく。

 今回は①天地返しをした畝、②通常の方法で立てた畝の二種類を同じ畑に用意して比較実験をしようと思っている。なるべく多くの種類の野菜を作付けしてみたい。特に大根やニンジンなどの根菜類、キャベツ、白菜などの結球野菜は柔らかく、肥えた土でないとうまく育ちにくいため、差が確認しやすいと思う。

 現代農業の記事では、天地返しをせずに硬盤層を破壊する方法として、緑肥の活用を勧めていた。ライムギなどのイネ科植物は地下深くまで根っこを伸ばし、土を耕してくれることが知られている。春先に緑肥を播いておけば、秋作では天地返しは不要と書かれている。

 個人的には雑草を生やしておくだけでも十分土は柔らかくなると感じているため、もし可能なら3番目の比較対象として、③通常の畝立て+ライムギによる硬盤層破壊を加えて比較したいと思っている。

 インスタグラムでも逐次様子を写真と共に紹介して行きたい。

【自然農】不耕起畑での畝の立て方 必要な道具と手順【不耕起栽培】

不耕起の畑での畝立ては数年に一回の大仕事

 畝は野菜を作付ける場所に土を盛った一段高い場所である。畑の環境をなるべく育てる野菜が好む環境に近づけるために、土を動かすことで環境をコントロールする。
 高さが出ることで水捌けが良くなったり、日当たりを改善できる。水捌けの悪い畑でも、加湿を嫌う野菜を育てるために一般的に取り入れられる技術だ。また野菜が根を伸ばせる深さを深く出来るので生育も良くなる。

 普通の畝作りは、まず土を耕すことから始まる。トラクターや耕耘機、鍬などを使って、土を耕す。すると一面真っ平でふかふかな土になる。そして、畝立て用のアタッチメントを取り付けた耕耘機や鍬などで掘り上げて畝にする。高さや幅は作付する作物や作業によって最適なサイズに変えていく。
 さらに立てた畝に、雑草防止や保湿、保温のためにビニールマルチを張ることも良くある。畝立てと同時にマルチを貼っていくこともできる機械もあり、大規模に農業をするなら必須の作業となっている場合がほとんどである。

 一方、私たちが取り組んでいる自然農的栽培ではなるべく土を耕さないことにしている。土を耕すことで得られるメリットとデメリット、耕さないで得られるメリット・デメリットを考えて、耕さない方を取った。

 もちろん自然農でも畝を立てることは有効な手段だ。畝を立てることは水はけが良くなることや、日当りをよくすること以外にもいろいろな意味、目的があると思うがそれはまた別の機会にまとめようと思う。
 自然農や不耕起栽培では一度立てた畝を毎年作り直すことはしない。普通、同じ畝を数年繰り返し使う。使っているうちに形が崩れてきたりするので都度直しながら使う。つまり、不耕起だと畝を作る作業は数年に一回で済み、かなりの省力化につながる。

 今回は自然農、不耕起栽培での畝の作り方について紹介しようと思う。畝作りはかなりの重労働で、一般的な畝立てよりも時間が掛かるので段取りが大事になる。

畝立てに使う道具

 自然農での畝立てに使うのは次の道具だけでいい。あとはそれを使う自分自身の体力が必要になってくる。

・草刈機
 生えている草を刈ってからの方が作業しやすい

・剣先スコップ
 地面に切り込みを入れ、土を畝上にあげるため

・鍬
 みぞに残った土をすくい上げる用

・(あれば)レーキ
 畝上の土を均す

 これだけあれば十分畝立て出来る。小さい畝なら、草刈機がなくても手鎌で十分出る。

①草をかり、畝を立てる場所をひもで区切る

 自然農、不耕起の畝立てはまず草を刈ることから始まる。耕していない土の表面には草が生えていたり、枯れた草が層になって残っている。草が生えたままだと、次の作業がやりにくくなったり、畝が出来た後の作付にも悪影響が出ることがあるので丁寧に刈る。

 未分解の草(有機物)を土の中に埋めると分解時にガスが湧いて、植物の根を痛めてしまう。そのため、なるべく生えている草が残らない様に地際で刈っていく。
 刈った草は地面に溜まっている枯草と一緒に熊手やレーキで予定地の外によけておく。こうして畝を作りたい場所の土をむき出しにする。このとき、作りたい畝の幅より若干広く開けておくと、次の作業がしやすくなる。

 次に立てる畝の大きさに沿って、ひもを張る。こうすることで綺麗に真っ直ぐな畝を立てることができる。慣れないうちは面倒でも、ひもを張ることをおすすめする。ひもに沿って真っすぐに畝を立てておくと、その後の草刈りや植え付けの際も楽になる。

通路部分の土を掘り上げて、畝上に盛る

 畝の形通りに紐が張れたら、次はその紐に沿って切り込みを入れていく。紐なしでこのライン付けをすると、ほぼ確実に曲がってしまう。ぐるりと切り込みが入ったら、今度はスコップ一本分あけて、平行に切り込みを入れていく。こうすることできれいに土を掘り上げていくことが出来る。特に耕していない場合、草の根が邪魔することがあるので必ず切り込みを入れる。

 次は二本の切り込みの間の部分の土を内側に掘り上げていく。掘りとった部分の地面は下がり、畝に土が盛られていく。土を掘り取ったところが畝間となるため、ひろい畝間にしたい場合は切り込みの幅を変える。
 同じ畝を横に作ると、畝間が倍の幅に広がるためそれを考慮に入れておく。一般的な剣先スコップの幅は20cmなので畝間は40cmとなる。基本的にはこれで十分な広さが確保できる。

 また切り込みの深さで掘り取れる深さがほぼ決まる。スコップの面は高さ30cmなので垂直に突き刺して掘るとかなりの深さになる。水はけの良し悪しによって変えていくが、実際の畑の様子や経験を頼りにする。
 少しずつ畝の高さは低くなっていくため、若干高く感じても数年使っていくうちに丁度良くなるだろう。

 次に畝上に上げた土をほぐしながら、かまぼこ型に整えていく。取り立てて注意することは無い。なるべく草が埋まらないにしたいが、完全には不可能だ。
 土の塊もある位程度ほぐしてあれば十分だ。これも草が生えて、野菜を作付けする過程で次第に馴染んでいく。
 北側から南側に向けて少しだけ傾斜をつければ日照が少し良くなるだろう。水はけが特に悪い場所があれば、意識してそこを高めにして傾斜を付けた畝にするともっと良いのかもしれない。

 これで畝立ての完了だ。少し時間がかかるが、これから数年はこの作業をする必要はない。作付する前後に少し畝の形を整えるだけでいい。

なかなか大変な作業だが、直に土に触れ、自らの力で土を動かし野菜が育つ場所を作り上げる。幸せな時間だと思う。どんな草が生えているか、土の香りや湿り気、手触りなど五感をフルに使って畑の様子を感じ取る。それが今後の野菜作りの参考になるのだと思う。

畝を使うのは最低3週間寝かせてから。

 畝を立てたら、なるべく裸のままにしない方が良い。雨が降ったり風が吹いたりすると、表面の土が流れてしまうからだ。最初によけておいた刈り草などでしっかりと被覆しておく。
 すると微生物が少しずつ分解してくれて畝がどんどん豊かになっていく。草が生えたら一本残らず抜くのではなくて刈り取って、そのまま敷いておく。その繰り返しで土を作っていく。

 畝を立ててから野菜を植え付けるまで最低でも3週間は寝かせた方が良い。というのも、畝立ての最中にどうしても刈り草などの有機物が土にすき込まれてしまうからだ。前述の通り、有機物が土の中で分解されるときには熱とガスが出る。これによって、作物が傷んでしまうので必ず時間を空けてから野菜を作り始める。

 夏の暑い時期なら三週間ほどで害がなくなるだろう。まだ春先で寒い時期に立てた畝は3カ月ほど置いた方が良いと思う。それだけ時間を置けば、畝上には草がびっしり生えてくるはずだ。そうなれば間違いなく、未分解の有機物による害はない。

 また、立てたばかりの畝にいきなり野菜の種をまくと、瞬く間に雑草に紛れてしまう。そこで時間を置いて一度雑草を発芽させてしまう。それを刈り払ってから野菜を播けば、ある程度草管理がしやすくなるだろう。(去年立てたばかりの畝にラディッシュの種を播いたら、雑草に紛れて見分けがつかなくなった)