【自然農】育苗土を畑の土を使って手作りする方法とその理由

畑の土を育苗に使うことにした理由

 そろそろ冬の終わりが見え始め、夏野菜の育苗をする時期になってきた。育苗は主に夏野菜の収穫期間を伸ばすために必須となる栽培技術だ。古くから「苗半作」という言葉がある。これは作物の一生は苗の出来で半分以上決まってしまう、ということを表している。

 苗の出来がその年の収穫を大きく左右するため、育苗にはかなり神経を使うし、様々な技術や工夫を多くの人が生み出してきた。設備や環境、使用する資材、開始する時期によって苗の出来は変わってくる。

 良い苗が豊作につながるなら、より良い苗を作りたいところだ。一般的には有用な資材が使われている培養土や、追肥のために肥料を用意したり、温度や湿度、日照を管理するために資材や機械を導入したりして、良い環境を整える。

 それには結構なお金がかかるもので、規模が大きくなれば数十万、数百万単位の費用が掛かってくる。餅は餅屋、という言葉があるように苗を栽培してくれる苗農家や種苗店もあって、高品質な苗を購入するという方法もある。当然、良い苗はできるがそれに伴う出費も多くなる。

 当面の間、私たちはま自給する分が収穫出来たらいいかな、というスタンスをとっている。安定して収穫が見込めるようになったら、販売も考えていけたらと思っているがまずは自給分からである。

 自給するための畑だし、なるべく費用を最低限に抑えて、良い結果を出したいところだ。そして、私たちが畑をやっていく上で自分の営みの範囲内で循環した栽培をしていきたいという思いがある。
 市販の培養土は色々な所から原料を運んで来て、それがまた全国各地へ運ばれて一部が私たちの元へ届く。一度掘り出された土は二度とその土地へ帰ることはない。こうなると循環する野菜作りからは少し離れてしまうような気がする。

 昨年、無肥料で栽培したミニトマトがなかなかうまく育たなかった(2021年のトマト栽培はこちらの記事にまとまっています)。育苗には市販の培養土を使い順調に苗ができた。しかし、定植後樹の成長がほぼ止まってしまい、収穫はほとんどできなかった。

 野菜を育てる畑の土と、身の周りで手に入る資材を使って育苗土ができれば、環境に負荷をかけない野菜作りになると思って、今年から育苗土作りに挑戦してみることにした。

育苗土を用意する手順

 実際に畑の土を使って育苗土を準備する手順は次のようになる。

①表面の草をよける
②土をとる
③もみがらを土の3~5割加える
④黒いビニール袋に入れて日のあたる場所に放置する

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土を篩にかける
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もみがらを混ぜる

 育苗土には未分解の有機物を入れないように注意する。植物は分解される際にガスを放出する。そのガスで根が傷むため未分解の有機物は土に入れないのが基本だ。
 実際やってみると、思いのほか全て取り除くのが難しい。大き目の篩でざっと大きな草を除けるだけにした。どうしても細かい根っこや葉が入ってしまうがガスが多く出るのはまだ青い状態の草を埋めた時なので、茶色に枯れている草なら多少は入っていても良いだろう。

 もみがらは排水性を高めるために使用する。しっかりと分解の進んだ落ち葉堆肥、刈り草堆肥を代わりに使っても良い。今回はビニールを掛けて半年近く放置したもみがらを使った。
 本来であればもみがらは田んぼに還る有機物なので、いずれは雑草堆肥や落ち葉堆肥を使いたい。中には踏み込み温床に使用して腐植した堆肥を使っている農業者もいる。

 最後に前述の未分解の草やもみがらによる障害を多少なりとも減らせるように、黒いビニール袋に入れて日のあたる場所に放置する。日中の太陽で熱をもらい、少しでも分解を進めておくためだ。
 分解促進および肥料分を少し補うために米のとぎ汁を足した。米ぬかは落ち葉堆肥などの分解スターターとしても利用されることもあるほど、微生物の働きを活発にしてくれる。

本来であれば夏にこの作業をするべき理由

 今回は割と思いつきでさっくりとした調べをしただけで育苗土に畑の土を使ってみた。

 実際準備してみたり、本やネットで情報を探してみて、もっとこうしたらという点や問題点が既に見つかった。

 まず残っている雑草の種が発芽してくる点。この方法だと雑草の種は死んでいないので、育苗している最中にどんどん発芽してくるだろう。根っこが野菜の根に絡むとどんな影響があるのかわからないが、栄養の取り合いや日光を妨げてしまうことも予想される。

 今年は生えてきた雑草は早めに抜いてしまうか、切ってしまうつもりだ。どの程度の手間になるか分からないが、試してみようと思う。雑草対策として、一番簡単なのは温度を上げてしまうこと。たいてい70℃近くまで上げてしまえば雑草の種は死滅する。
 夏場に袋に入れて直射日光にさらしておけば簡単にできる。が、それによって土の中の微生物まで殺してしまうことになってしまうのではないかと思う。

 また実際に作った育苗土をポットに詰めて水をかけてみたところ、水はけが少し悪かった。土ともみ殻の割合が低くて水はけが悪いかもしれない。もう少し有機物の量を増やした方が排水性、通気性ともに良くなるだろう。例えば、落ち葉堆肥や雑草を刈り取って積んでおいた雑草堆肥なんかが良いのかもしれない。

今年の育苗がそろそろスタートする

 野菜作りの世界に飛び込んで、ようやく苗作りの大切さが分かってきた。「苗半作」は昨年の栽培で身に染みるほど感じた。

 さらに自然農で野菜を作るなら、育苗もそれにあった方法をとるべきだと言う事にも三年目にして気づく事が出来た。今までは市販の培養土に頼りきりだったが、野菜たちが育苗を終えた後育っていく場所の土を使う。まだ根拠がないが直観的に上手くいくような気がしている。

 とりあえず今回の育苗土で心配な点は、今のところ二点ある。
 1つ目は排水性。何度か水を通しながらもみ殻の量を調節したが、実際にやってみるまでどうなるかわからない。水はけが悪いと、夜間に徒長し軟弱な苗になる可能性がある。日中の水やりの量を調節する事で多少は対処できると思っている。
 2つ目は雑草。全く熱処理をしていないため二ヶ月に及ぶ育苗期間中に沢山の雑草が生えてくることが予想される。こればかりは地道にコツコツ抜いていくしかない。今年は150個ほどの苗を作ることになるので気長に頑張りたい。植えたあとも雑草と一緒に育っていく事になるため、そのための準備になると考えたい。

 当地ではまもなく最高気温が20度近くになるため、四月頭から夏野菜の育苗を始めようと思っている。

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