【天地返し】自然農一年目から収穫できる畝作り。1年かけて検証もしていきます。【自然農】

自然農も万能の農法ではない

 無肥料無農薬でしかも耕さなくても、十分野菜が育つと言われているのが自然農だ。一言に自然農といっても明確な定義があるわけではなく、様々なやり方がある。私たちは無肥料無農薬不耕起での野菜作りを自然農と呼んでいる。最終的には自分たちの食べる分は自分達で作りたいと思っている。

 日本全国を見れば、自然農や自然栽培でかなりの収穫を上げているひとはたくさんいる。慣行農法と同等とはいかないまでも7割くらいの収穫をしている例はたくさんある。

 自然農が万能の農法ではない、というのは初めたばかりではそういった十分な収穫が得られないことも一つの要因だ。実際、私たちが本格的に自然農を始めた昨年はトマトやナスなどの果菜類はほぼ収穫できなかった。

2021 トマト これしかできなかた
何とか成ったミニトマト
2021 ナス これ一本だけ
一本しかできなかったナス

 先駆者たちの話しでは、大抵の作物が育つようになるまで7年ほどかかると言われている。自然農では有名な川口由一さんも同じことを言っている。Youtubeで自然栽培、自然農での野菜作りを発信している高内実さんや今橋伸也さんも似たようなことを話されていた。

 自然農での野菜作りは長い年月をかけて、いろんな野菜が育つことができる土に変わっていくのを待つ必要があると言うことだ。肥料などは使わないが、そこに生えた草を刈り敷いていくことでそれを食べる小動物や微生物によって土は肥えていく、というのが自然農の真髄なのだが。なかなか人間の求める速度では変わっていかない。でも、実際一年目の野菜作りでほとんど収穫がないとかなり辛い。それで自然農や野菜作りそのものをやめてしまうのはとてももったいない。

 そこで今回は自然農一年目から、荒れた畑でもある程度野菜が育つようになるという方法を紹介しようと思う。

天地返しをしてから畝を立てる

 これから紹介する方法は天地返しと言われる方法で、一般的な栽培技術として活用されている。この方法は現代農業 2022年4月号 270ページに掲載された記事を見て知った。この記事の筆者、中尾佳貴さんは島根県在住で自給農をしながら、自然農とパーマカルチャー講座の講師をされている(→ホームぺージ)。

 中尾さんご自身が自然農を始めて一年目、ほとんど収穫がなかったことから、一年目からある位程度の収穫を出来ないか試行錯誤し、その内の一つを紹介して下さっている。

 それは畝の中央に深さ30cmで半分ずつ天地返しをする、というものだ。天地返しは単純で、上半分の土と下半分の土を入れ替えることである。固く締まった土でも、天地返しをすることで土がほぐされ、野菜が根を伸ばすことができるようになる。

 さらに長年、機械による耕耘によってできた硬盤層を破壊することができる。硬盤層は地中20cmあたりに出来る、特に締まった層で、排水性を悪くしたり、根が伸びられる範囲を狭めてしまったりと困り者だ。硬盤層は自然に草を生やしておくことによって、時間を掛けて無くしていくことができる。しかし、時間がかかるので物理的に破壊することができると、その障害を早く取り除くことができる。

天地返しのやり方と注意点

 では天地返しのやり方を紹介する。

 必要な物は・剣先スコップ・鍬・紐・ビニールマルチ(ブルーシート)だけだ。このうち紐とビニールマルチは無くてもできる。あると作業が多少楽になったり、綺麗に出来るので準備が出来れば有った方が良い。

 まず畝を立てる場所を確認する。既に出来ている畝を天地返しする場合は畝の中央を確認する。もしビニールシートがあれば、掘り返す部分の横に左右どちらとも敷く。この上に土をのせていくと埋め戻す時に綺麗に戻すことができる。

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ちょっと黒くなっているところを天地返しする

 次に畝の中央を剣先スコップの幅分で掘っていく。一回目で15cm分の土を掘りあげる。土は左右どちらかと決めて置いて、片方に集めておく。雑草が混ざってもあまり気にしない。

15cmほる
上の層を掘り上げたところ


 スコップだけだと全部を掬うことはできないため、崩れた土を鍬ですくい上げる。これで地上から15cmの深さの溝が出来る。

 次はさらに15cm深く土を掘っていく。このとき掘り上げた土は最初とは反対側に上げていく。このとき長年、耕耘されて雑草もあまり生やさないような管理をされてきた畑だと、かなり固いことがあるようだ。大きな石が出てくる事もある。

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深い溝ができた
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断面。真ん中に色が変わっている層がある(硬盤層?)

 両側に土を掘り上げたら、順番を入れ替えて埋め戻して行く。このとき、溝の最下層にもみがらやもみ殻燻炭、刈り草などを10cmほどになるように踏み込んでおくと、雑誌の記事では紹介されていた。今回は諸事情により何も入れずに埋め戻した。

 この後、通常の畝立ての作業となる(→自然農での畝の作り方)。通路の土を掘り上げて、高さ15-30cm程の畝に仕上げる。この作業は種まき・植え付けの3週間以上前に行う。

 自然農では一度立てた畝は何年も補修しながら使っていく。生えた草を刈り敷いて、三年ほどでたいていの野菜は育つようになるようだ。

普通の畝を横に用意して比較実験

 この作業で野菜が育つようになるのは、締まった土が強制的にほぐされ野菜の根が伸びられる空間を確保できることが一番大きいと思う。また、硬盤層を破壊することで水はけなども改善され、より野菜が育ちやすい環境に近づく。

 今回は①天地返しをした畝、②通常の方法で立てた畝の二種類を同じ畑に用意して比較実験をしようと思っている。なるべく多くの種類の野菜を作付けしてみたい。特に大根やニンジンなどの根菜類、キャベツ、白菜などの結球野菜は柔らかく、肥えた土でないとうまく育ちにくいため、差が確認しやすいと思う。

 現代農業の記事では、天地返しをせずに硬盤層を破壊する方法として、緑肥の活用を勧めていた。ライムギなどのイネ科植物は地下深くまで根っこを伸ばし、土を耕してくれることが知られている。春先に緑肥を播いておけば、秋作では天地返しは不要と書かれている。

 個人的には雑草を生やしておくだけでも十分土は柔らかくなると感じているため、もし可能なら3番目の比較対象として、③通常の畝立て+ライムギによる硬盤層破壊を加えて比較したいと思っている。

 インスタグラムでも逐次様子を写真と共に紹介して行きたい。

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