【固定種・在来種】自家採種できる野菜の種が手に入る場所【海外品種】

 家庭菜園や小規模な畑で野菜を作っていると、野菜にはいろんな種類があり、それぞれにたくさんの品種があることが分かる。どんな野菜を育てようか、毎年冬の間に考えて、種の準備をするのも畑仕事の醍醐味だろう。
 最近ではホームセンターの園芸コーナーはもちろん、スーパー、100円ショップでも野菜の種が売られていることがある。インターネットショップも数多くあり、園芸店や種苗店のオンラインショップがたくさんある。

 大型店、園芸コーナーでは、メーカーの一押し品種だったり、農家でも作られているような質の良い一般的な品種が多く扱われている。ホームセンターに行くと、どこにいっても似たような品種の種ばかり並んでいる。

 自分で畑をやっていると普通には手に入らないような珍しい野菜だったり、品種を栽培したくなってくる。そこらのスーパーや直売所では売っていない野菜でも自分で種を買えば、何でも作ることが出来る。
 そうしたときにいつも種を買っている場所によっては、なかなかお目当ての野菜の種が手に入らないことが多い。

 特に自家採種をして、種を自分で用意したい人は家庭菜園愛好家にも多いと思うが、多くの品種は自家採種がしにくい交配種が主だ。

 そこで固定種や在来種のような、あまり売られていない品種を買うときに利用してる場所を紹介しようと思う。

地域ごとの種苗店

 古くからその地域にある種苗店に行ってみるのもおすすめ。私たちが住む長野県佐久地域なら、佐久市の嶋屋種苗、小諸市の小山種苗、上田市の樋口種苗などがある。地元の家庭菜園家や農家が昔から利用しているお店であることが多い。

 種苗専門店なだけあって、量販店やホームセンターではあまり扱っていない品種も多く扱われている。また各種苗メーカーのカタログがあり、欲しい品種があれば直接取り寄せてくれるため相談してみる。

 お店の人やお客さんから得られる情報もあるためお住まいの地域の種苗店を探してみて欲しい。

野口種苗研究所

 埼玉県飯能市にある野口種苗研究所には、今やほとんど流通していない固定種、在来種の種が多く取り扱われている。店主の野口勲さんは手塚治の「火の鳥」編集者であり、家庭菜園における固定種の種の重要性、良さを熱心に取り上げて下さっている。
 かなり豊富なラインナップでここでしか入手できない固定種・在来種の種も多い。オンラインショップもあり、全国から購入できる。
 ホームページには野口さんが綴った「野菜の話し」やその他野菜栽培に関する読み物が数多く記録されている。一度読んでみることをおすすめする。

高木農園・つる新種苗

 どちらも長野県松本市の種屋さん。固定種の種や、一般野菜でも普段は見かけない品種も取り扱いがある。オンラインで購入できる。

  つる新種苗は自然菜園家として知られる竹内孝功さんが考案した「自然菜園緑緑肥mix」を取り扱っている。この緑肥の種は実際に使ったことがあるが、長い期間草が生えてくれて、草マルチやグラウンドカバーとしてとても便利だった。また、おそらく竹内さん採種と思われる自然菜園採種の野菜の種が販売されている。

自然農法国際研究開発センター

 長野県安曇野市にある当センターは、自然農法による農業生産を研究している。新規就農者向けの研修や、試験栽培のほかに、自然農法向けの品種改良・開発もおこなっている。
 自然農法センターの品種は種とりの元となる固定種と、一般栽培用の交配種、また自然育種によって生まれた品種もある。交配種は種採りできないが、固定種も多く取り扱われている。ここで育種などを長年務められた中川原敏雄さんが書いた自家採種に関する書籍も多い。

 どの品種にも共通して言えるのは低(無)肥料、草生栽培下で本来の力を発揮する点。自然栽培や低肥料栽培を実践する人にとってはおすすめの品種が多い。また、珍しい固定種のトマトも扱っている。

→https://www.infrc.or.jp/

青空マルシェ

ホームページ→https://www.marcheaozora.com/
 オンラインショップで世界中から集まる非常に珍しい品種の種が入手できる。
 他の種苗店ではまず扱っていない野菜が多く、珍しいものを栽培したい場合はこのお店を見ると良い。
 トマトを例にとっても、10種類以上の品種がある。世界各地でエアルーム品種として栽培されているものもある。
 ネット上のレビューを見ると、届いた種を栽培したら注文したものを異なるものが育ったり、そもそも発芽しなかったりという声がいくつか見られる。信頼度が少し劣るが、やはり珍しさはピカイチである。

無農薬・無化学肥料のたねの店 たねの森

 たねの森では、無農薬・無化学肥料で栽培、採種された野菜の種が入手できる。採種栽培において、無農薬・無化学肥料栽培が明記されている種は数少ないため、こだわる人にはありがたい。
 多くの品種がそれぞれの地域で長く栽培されてきたエアルーム種で、種採りが推奨されている。理念には共感できるものがあり、こちらも一度目を通してもらいたい。

その他、インターネットショップを持っている種苗店などで固定種や自然栽培採種品などの文言に注目していればいくつか自家採種可能な種を手に入れることができる。

オクラも自家採種をしました

 今回はオクラの自家採種をしました。今年栽培したオクラは一般的な角オクラではなく、スーパーでは島オクラとして販売されていることが多い、丸いオクラです。品種は「エメラルド」(タキイ種苗)です。多少大きくなっても、やわらかく甘みがあるおいしいオクラです。

 このエメラルドですが、畑になじんでいないのか、あまり大きく育ちませんでした。生育初期にアブラムシがつき、株が弱ったり、病気になった株も多かったです。自家採種をすると、一世代でもかなり畑に適応して育てやすくなるそうです。来年、そのあたりの育ちやすさなどの変化が楽しみです。

採種の仕方

 オクラの採種をする場合は、実を収穫せずに残しておきます。するとどんどん大きくなり、25cm以上になります。実は硬くなり、とてもじゃありませんが、食べられなそうな見た目になります。

収穫しなかったらこうなる

 そのまま、おいておくと次第に色が褐変していきます。ミイラ化してくるといった表現だとわかりやすいかもしれません。採種果がついている樹は生長が著しく遅くなり、新しい花も咲かなくなります。種に栄養を集中させているんですね。

 指南書には、開花後40日ほどで種が充実するとあります。採種果の柄に開花日を書いたカードを結び付けておくとわかりやすいですね。

 今回はそれを怠ったので、とにかくかぴかぴに乾燥するまで畑においておきました。見た目はまるで枝のようです。雨の後だと湿気が残っていて面倒なので、晴れが何日か続き、しっかり乾燥してから収穫します。手触りもざらざらかさかさです。 

採種果

 採種は4本で、病気もなく、成長がよかったものから採りました。実の縦方向、繊維に沿って爪を入れると、真っ直ぐ裂けます。中には灰色っぽい種がたくさん入っています。中にはきれいな丸でなく、欠けたような種があります。このようなものは不良品としてはじきます。

筋に沿って裂く
不良品の種

 数えてみると約200粒ありました。1本の実につき、50粒の種が取れる計算になります。来年使う分は自家採種でまかなえることになります。

オクラも交雑に注意!(が必要な場合あり)

 オクラは比較的交雑しにくい植物です。トマトやナスと同じく、雌雄同花(雄花と雌花が同じ花に咲く)なので基本的には自家殖性で交雑しにくいです。しかし、近くに別品種があると交雑するので、複数品種を栽培、自家採種する場合は採種果が咲く前に袋がけし、交雑を防ぎます。

 私たちも来年はオクラの品種を増やしたいと思っているので、実際に交雑を防ぐ方法を試してみようと思っています。

種の保管の仕方

 採種した種に限らず、購入した種を一年で使い切らずに保管しておくことがあると思います。適切な保管をしないと種の質が悪くなり、発芽率が著しく低下したり、発芽しなくなったりします。

 種を保管しておく上で気をつけないといけないのは湿度です。種は水分がないと発芽しないので、裏を返せば水分があると発芽する準備を始めてしまいます。すると余計なエネルギーを使ってしまうので、乾燥した場所に保管します。密閉できるビンやジップロックなどに、乾燥剤とともに入れておくと安心です。

ビンに入れて保管する

 保存容器には品種名と採種日を明記しておきます。購入種子でしたら、種袋を切って入れておくと良いです。同じ科の野菜で複数の品種を持っている場合は、混ざるとわけがわからなくなってしまうのでしっかりと判別できるようにしておきます。日にちを残しておくのは、種の寿命を把握しておくためです。

 また、日光が当たる場所は避けた方がいいです。種に光が当たると暑くなってしまい、品質を下げます。生命力の弱い、にんじんやたまねぎなどの種はできるだけ光が当たらないようにします。にんじんは光がないと発芽できない好光性種子です。暗闇に保管するようにします。

 温度変化も避けた方が良いです。これらの条件をすべて満たすのが冷蔵庫です。種を保管しておくときは、密閉して冷蔵庫に入れておきましょう。自家採種をしている農家さんや家庭菜園家の方は専用の冷蔵庫を用意しているそうです。私たちも今年、結構な種類の野菜の種採りをしたので、スペースを圧迫しています(汗)。いずれは専用冷蔵庫を必要になるかもしれません。

信州地大根の収穫。種採りにも挑戦。

この大根のお名前は?

 8月頭に種まきした長野県在来種の信州地大根。どうやら信州地大根といっても、実はいろいろ品種があるようで、松本の切葉地大根や坂城町のねずみ大根などいろいろでした。今回栽培したのは、いまいちどの品種かはわかりませんでした。メーカーに問い合わせておきます。(種採りしてオリジナル品種にしてしまおう)

今回蒔いた大根

発芽してから約90日が経過し、だいぶ育ってきたので収穫してみました。

 地上部は葉っぱが茂り、もさもさになりました。虫の食害は見られるものの、株ごとやられてしまうような大きな被害にはなっていません。この畑は青虫が結構いたのですが、大根にはあまりついていませんでした。多いのはカメムシと、黒い米粒より小さい羽虫でした。

 途中10月頭の段階で、地上にせり出している根茎は割れているものが見られました。もしかしたら、この時点で収穫時を逃していたのかもしれません。

全13本を引っこ抜いて並べる

 夏に蒔いた大根は13株。1本の畝に二条播きして、ずらし栽培しようと思っていたのですが、二条目は最初に播いた株が育ち、日陰になってしまったのであまり成長していません。

 とりあえず、13本を引っこ抜いてみます。見ると、地中に埋まっていた部分のお尻がほとんど割れてしまっています。やはり収穫が遅かったようです。サイズごとに並べたのが次の写真です。

サイズ順に並べる

 一番小さいので15cm、大きいものは大人の前腕以上のサイズがあります。固定種は生育にばらつきがあるのが普通ですがここまでばらけるは思っていませんでした。ほとんどお尻が割れており、きれいにできたのはほんの一部になってしまいました。

もちろん種採りにも挑戦!

 アブラナ科の野菜は大根以外にも育てていましたが、種採りはしていなかったので試しにやってみることにしました。大根なんてどのように種がつくのか見たことありませんよね。一回くらい、花が咲いた大根の姿を拝んでみたいと思いませんか?

 今回栽培した感想としては、ずいぶんサイズに違いが出るな、と思いました。自家採種は自分のほしい性質を持った一群を作って、そこから採種をすることで好みの性質を持った品種に作りあげていくことができます。今年育った大根たちから、サイズの近い、比較的きれいな一群を選び出せば、その種は少しばらつきが少なくなるはずです!

 大根は少数の母本(親となる株)から種採りを繰り返すと、近交弱勢という現象が起こります。これは品種の力を落とすことになるので最低でも20本の親を用意する必要があります。が、今回は数が少ないので6本だけ用意しました。来年以降はもっと増やして、種が弱くならないようにしたいと思います。

比較的サイズが揃っている

 葉っぱを落とし、日が当たりやすいように少し斜めにして植えなおします。根っこが寒さにあたると、腐ってしまうので白い部分が確実に見えない深さに植えます。

葉っぱは落とす
斜めに植える

 これで種採り栽培の準備はおしまいです。翌春になると、新しい葉っぱが出てき始め、花が咲きます。その花に大根の種がつくはずです! 複数の品種の大根を同時に種採りする場合は交雑を防ぐ必要がありますが、一品種なら大丈夫です。たぶん近くの人が種採りをしていることはなかなかないでしょうから。

肝心の味は?

 かなり不恰好な姿に育った信州地大根。その味はどうでしょうか?

 とりあえず生でかじってみます。ピリッとした辛味があり、ぱりぱり食感でした。歯ごたえはすごくいいです。

 次にお味噌汁に入れて、加熱してみました。香りは大根の良い香りで、食感がなんとジャガイモに近い、ホクホクとした感じになりました。これは驚きです。普通の大根のとろけるようなほぐれる食感とは違って、ホクホクしています。加熱用にはあまり向かないのかもしれません。

 生の食感がいいので、糠漬け(去年から始めた2年目の若床)にしてみました。漬けること2日。いい感じに漬かったものを食べてみると、ぱりっぱり! 多少水分が抜けてもぱりぱり感はさすがでした。

 これは漬物向きの大根かも、と思っていたら、種袋に漬物に最適と書いてありました(笑)。そこで沢庵漬けを手作りしてみることに。その製作過程はまたご紹介します。残りは切り干し大根にして保存できるようにしてみます。

2020年ミニトマトの自家採種 採種方法と発芽チェック 

 ついに、今年初めての霜が降りました。よりいっそう冬に近づいた感じがします。 

 10月半ばからゆっくり、ミニトマトのアーチの片付けをしていました。さすがに10度を下回ると、味もかなり落ちて、樹も弱って見えました。ひと夏かけて、じっくり茂らせた葉は翌年以降の養分となります。この生命の循環を大切にしたいです。

 先日ミニトマトの種採りを行いました。本来であれば、樹勢の強い時期(第2-3花房くらい)に行うのが良いのですが、種採りをするか迷っているうちに収穫が進み、残るのは数日前に完熟状態で収穫したもののみになってしまいました。

 というのも、私たちが今年栽培した、ロッソナポリタンという品種はF1(交配)種なのです。F1種から種採りをすると、次世代となるF2では性質が大きくばらけます。つまり、採れた種の遺伝子はみんなちがってみんないい状態になります。
 すると、おいしくなかったり、病気に弱くなったり、実の大きさが変わったりする可能性もあります。このミニトマトは私たちが一番力を入れている品種なので、品質がバラけると困るなと思っていました。

 ですが、せっかくならやってみよう! ということで実際にやってみました。実際のところF2世代の種から育ったトマトがどれほど変化するのか気になったというのもあります。また、種採りをするメリットのひとつ、環境に適応して育てやすくなる、という現象が本当に起こるのか早く確認してみたかったのも大きな理由です。そして、お金もかからないし、とにかくやってみないと始まらないとも思いました。
 来年、性質がバラけたら、おいしい実をつける株、元気に生育している株からまた種採りえをすればいいだけです。

 さらに、私たちが種採りをする際に参考にしている書籍、「種取りのコツのコツ(農文協)」という本に中にF1トマトから選抜、種採りを続け、大玉、中玉、ミニの3品種を固定したという記載がありました。この品種から中玉や調理用の品種がとれるかもしれません。

種採りをするときの注意点

!種採りをする際に注意しておくことがあります!

 それはその品種が種取りを許可されている品種であるかどうかを確認することです。品種は「登録品種」と「未登録品種(農林水産省は一般品種と呼んでいる)」の二つに分けられます。登録品種は「育成権」が認められています。これは音楽や絵画などにおける著作権に同等する権利です。

 そのため登録品種の採種や採取した種の再販は禁じられています。また、自家採種した種(これも違反ですが)から収穫した作物の販売、譲渡も禁じられています。営利目的でない、家庭菜園であれば、自家消費に限り採種が認められています。

 品種登録のない、一般品種は自家採種が認められており、採種した種自体もその種からの収穫物どちらも販売、譲渡可能です。

 そもそも品目によっては品種に関わらず自家採種、わき芽挿しのような「自家増殖」が禁止されている場合があります。

 今回種採りをしようと思っている「ロッソナポリタン」(パイオニアエコサイエンス)は登録品種ではないので採種可能です。こちらのページから検索できるため、自家採種をお考えの方は一度調べてみてください。

 

ミニトマトの種採りの仕方

 ミニトマトの種採りは非常に簡単です。なぜなら食べるために育てた実からすぐに種を採れるからです。赤くなった実は種が成熟しているので採種果を簡単に手に入れられます。

 品種によりますが収穫した実を使えば大丈夫です。さらに常温で1週間ほど追熟させればさらに安心です。少しやわらかくなってきたくらいのほうが簡単に種が採れます。

 用意するのは、手ごろな大きさのビンと、包丁、中身をくりぬくためのスプーンやバターナイフです。ビンの大きさは、採る種の量によって変わります。小さすぎると発酵させているときにあふれて大変なことになるので注意が必要です。

 実を半分に切って、

201009 半分にしたところ
半分に切る

 種を包むゼリーごと掻きだします

201009 掻き出すところ-2
ゼリーごと種を搔き出す

 この状態で常温で3日ほど発酵させます。こうすることでただ洗うよりも、種を包むゼリーを取り除きやすくなります。

 発酵してきたら(けっこう匂います)、水でしっかりと洗います。ここでゼリー質が残るとかびる原因になるのでちゃんと洗います。今回は排水溝のごみネットを使用しました。

 水洗い後は天日干しで2-3日ほど乾燥させます。今回は晴天の予報がなかったので布団乾燥機とビンを組み合わせて、徹底的に風乾させました。

201012 ネットで洗ったところ
乾燥させる

 写真ではわかりにくいですが、自家採種したものは種の表面にうっすらと毛が生えています。今年購入した種はつるっとしていたので、市販品は調整の段階で毛がなくなってしまうのかもしれません。

ちゃんと発芽するかテストしてみる

 種が採れたら、ちゃんと発芽するのかどうか確かめます。やり方は簡単で、食品トレイにぬらしたキッチンペーパーを敷き、その上に種を置くだけです。上からラップをして乾かないようにしたら暖かい部屋においておきます(最低でも20℃以上)。このまま5日ほど置いておくと、発芽するはずです。

201012 発芽試験

 5日目、種を確認してみると、20粒中15粒が発芽していました。発芽率は75%ほどで市販品とほぼ変わりません。

 ひとまず、種としてはちゃんと機能しているようです。あとは来年栽培してみて、といった感じです。同じトマトでも品種によって葉っぱの様子も変わってくるので、丁寧に観察してみようと思います。

F1と固定種と自家採種への挑戦

 今回は野菜作りには絶対に欠かすことのできない、「種」についてのお話です。

野菜にはF1と固定種があります

 同じ種類の野菜でも、さまざまな品種がありますよね。ミニトマトなら有名どころの「アイコ」、「千果」など、ほかにもたくさんの名前がついたミニトマトが売っています。それぞれ品種の特徴を示した名前から、栽培適期を記したもの、ギャグのような面白い名前がついたものまであって、見ていると面白いです。

 これら数多くの品種は多くのものが種苗会社が長年の研究の末に開発したものになります。種の利用者やその収穫物を利用する人(生産者の農家、消費者の食品業界、一般消費者、中卸業者など)の要求に応える画期的なものが多いです。

 その中でF1種と呼ばれる品種と、固定種と呼ばれる品種があります。野菜の種袋の品種名のF1の横にF1の表記や○○交配と書かれているものがF1(交配種)です。カネコ種苗の種なら、カネコ交配、トキタ種苗ならダイヤ交配などですね。逆に○○育成と書かれているものや野菜そのものの名前で書かれているもの(「ミニトマト」や「ホウレンソウ」など)は固定種であることが多いです。わざわざ固定種と書かれているものは少ないです。

野菜も植物なので生き物です(当たり前)

 なんだか当たり前すぎて、忘れてしまっている人もいるかもしれませんが、野菜も生き物です。植物という大きなくくりの中に入っていくる野菜ですが、基本的に次世代に子孫を残すために種をつけます。

 人間も一人ひとりまったく同じ遺伝子を持っていることはありません(一卵性双生児はかなり似た遺伝子を持っていますが、それでもまったく同一ではありません)。それは植物も同じで、種ひとつひとつ微妙に遺伝子が違います。違う遺伝子を持つもの同士がまた実を結び、次世代はまたすこーしだけ違う遺伝子を持つことになります。遺伝子というのは生命の設計図ですから、違う性質を持ったものが生まれてきます。

 さらに外的環境に適応したり、外敵から身を守るためだったり、突然変異などでも遺伝子はどんどん変化、進化していきます。これが何億年と続いた結果、現在の多様な生物が存在しています。

 今私たちが普段食べている野菜は、それぞれの原種とは程遠いほど姿を変えてきています。人間が食べやすいように、栽培しやすいように少しずつ進化させてきたんです。とうもろこしなんかはかなり変化が大きいです。

 本来であれば、育てたものと同じものをまた作ろうと思ったら、種を採って、また播けばいいわけです。しかし、畑に行くとそんなことをしている人はほとんどいません。みんな種はお店で買います。なぜか。それはF1(交配種)について知ることで少し理解できます。

F1種の登場! 新時代の品種改良技術

 もともと野菜の品種改良は、長い時間をかけて少しずつ望む性質をもった品種になるまで繰り返し繰り返し選抜育種を行うものでした。

 この野菜の品種開発はF1の登場によって大きく変わりました。

 F1というのは別系統の品種を掛け合わせたときにできる雑種の一代目のことです。このF1種は雑種強勢という現象によって、親の持つ形質よりも優れた性質を持ち、さらに掛け合わせの特性上、お互いの親の優勢形質を両方併せ持ちます。これによって、F1種は狙った性質(耐病性や食味、耐寒性、耐暑性など)を持った品種を作り出すことができます。しかもその性質がすべての種で均一になります。

 F1種は従来までの品種(固定種と呼びます)に比べ、優れた性質を持っていることから、農業界で広く用いられるようになりました。同じタイミングで播いた種はほぼ同じように育つため、大量生産大量消費にうってつけの品種になりました。

 いいことばかりのF1種ですが、デメリットももちろんあります。F1は雑種の一代目しか、意図した性質を持ちません。つまりF1の子供(F2)は性質がばらけます(メンデルの第二法則)。なので、農家は毎年種を買わないと同じ品種を作ることはできません。また、異常気象や珍しい病害などで一網打尽にだめになってしまう可能性もあります。性質がみんな同じなのだから、だめなときはみんなだめになります。

固定種 -昔ながらの品種

 固定種はF1種が登場する前からあった、昔ながらの品種です。

 固定種はほしい性質をもった株から採種を続け、おおよその性質が固定された品種です。病気に強かった株同士を交配させることを繰り返せば、少しずつ種全体がその病気に強い一群になっていきます。

 固定種はF1ではなく、さまざまな世代が入り混じり、遺伝的に多様性を持っています。なので、同じ固定種の種でも少しずつ異なる性質をもっています。甘みが強かったり、生育が少し早かったり、同じ品種内でも多様性が生まれます。

 これによって、できる野菜は不揃いになりやすいです。形がばらけていたり、大きさがまちまちだと市場では評価されず、価格が安くなります。なので、大規模栽培にはあまり向かない品種になります。

 これでは固定種のいいところがないように思われますが、そんなことはありません。

 まず、固定種は次世代の種をまた使えます。第一世代ではないので、播いた種から育った種はまた大体同じ性質を持ちます(別品種が交配時に近くにあると交雑が起こり、性質がばらけます)。なので、種を買わなくても、自分で増やすことができます。

 しかも、種を採ることを繰り返すことで、野菜は少しずつ周りの環境に適応し、作りやすくなります。野菜自身が進化していくわけですね。これに加えて、おいしい実ができた株、病気にならなかった株から種採りをすれば、狙った性質を持った自分のオリジナル品種を作り出すこともできます。

私たちは種採りをしたい!

 ここまでF1種と固定種について、長々と書いてきましたが、一番伝えたいのは私たちが種採りをしたいということです。

 野菜を自分たちの手で作りたいからはじめた畑。できることなら、種を播いて、種を採って、その循環を組み込みたい。それが自然だと思うんです。「自分で蒔いた種は、自分で刈り取る」という有名な言葉があります。自分のしたことの責任は自分でとる、という意味です。これを少し変えて、「自分で蒔く種は、自分で採る」。これを私たちの柱としたいと思います。

 畑での出来事に、より一層深く関われるという点と、もうひとつ、種がその土地に適応していくということも種採りをしたい理由のひとつです。

 F1種を使えば、日本全国何なら世界中どこでも同じ野菜を作ることができます。これって、よくよく考えたら、ちょっと怖いことではないですか? 均一化が進み、個性がなくなる。多様性がなくなると進化が無くなり、衰退するばかりになってしまうのではないでしょうか。

 片や、種採りをすれば、遺伝子は少しずつ変化して、その土地だけのオリジナルの野菜になっていきます。それをたくさんの人が行えば、とても多様性に満ちた世界になっていくと思います。その土地にあったものが育つ。こっちのほうが自然で、いい感じがしませんか?

 ○○さんのミニトマト、△△さんのナス、□□さんのたまねぎといった感じで、作っているその人ごとに野菜が区別できるようになったら面白そうだなと思うんです。

 

 早速、私たちは今年からミニトマトやスナップエンドウ、オクラなどいくつかの野菜で自家採種に挑戦しています。その様子を順次ご紹介していきます。

2020年ミニトマトの自家採種-発芽率は上々
オクラも自家採種をしました
信州地大根の収穫。種採りにも挑戦。

 長い文章を読んでいただきありがとうございました。もっとわかりやすく簡潔にまとめられるようにがんばります。