【自然農】猛暑の7月に行った実際の畑仕事とその考察【寒冷地】

異例の早さの梅雨明けのはずが雨続き&猛暑

 今年の梅雨はあっという間に明けてしまった。6月には梅雨明けが宣言され、猛暑が続いた。といっても、7月は連日雨続き、という日々があり、一方で猛烈な暑さに見舞われた。

 また天気予報が殆ど当てにならず、直前になっても予報が外れて雨が降る・降らないということが多かった。基本的に雨が降ると、野良仕事はできないため中々予定通りに作業できない日が多かった。

 今年の夏は野菜が草に覆われないように、一緒に共育ち出来るように早め早めに草刈りをすることを意識している。一時期ズッキーニが日照不足と思われる症状が出ていたが、それ以外は草に覆われていない。

 7月は夏真っ盛りだが、既に秋冬野菜の準備が始まる季節でもある。夏の頭と、冬の頭の切り替えをしっかりして、時期を逃さないようにしたい。

秋冬野菜の人参・ビーツの種まき

 例年、私たちは秋冬野菜の種まきは8月中頃からすることにしている。暑さがピークに近い7月は種まきにはあまり適さない。虫の活動も活発で、初期生育の段階で出鼻をくじかれがちだからだ。

 しかし、今年は人参とビーツに限って、7月下旬の種まきとした。
 理由は梅雨(今年は明けてしまっていたが)の雨で湿り気を保ちやすいこと、そして生育ステージと気温の兼ね合いを考えたからだ。

 タキイの野菜栽培マニュアルによると、人参は生育適温が15~20度で、この気温になる時期に肥大期を合わせるような栽培をするのがセオリーだ。特に長野県は寒冷地で、特徴として10月に入ると一気に気温が下がる。播き時が少し遅れると、かなり生育に影響が出てしまう。

 私たちの住む地域では平均気温が20度を下回るのが9月20日前後となる。その日から60日遡って7月20日頃に種まきをすれば、にんじんの肥大に一番良い季節を充てられることになる。

 ビーツもほぼ人参と同じような気温や生育過程を経るため、人参と同じタイミングで播種した。毎年、ビーツはほとんど大きくならずに冬になってしまうため、今年は期待したいところだ。

 種まきは初期除草を鎌で行えるように丁寧に表土を整えた。その方法についてはこちらの記事を参照して頂きたい(【自然農】生育初期に草に埋もれないための整地・種まき方法【不耕起】)。
 ビーツは無事発芽して、最初の除草作業を済ませてある。実際の作業前後は写真の通りになる。腰を曲げることなく、身体への負担が非常に少ない除草方法だ。

220731 ビーツ 除草前
除草前
220731 ビーツ 除草後
除草後


 発芽率が80%の種を一粒播きしたため、欠株が目立った。欠株には追い播きをしたため、また1週間後に発芽確認と、初期除草を行いたいと思う。

ズッキーニの収穫・品種による生育の違い

 5月15日に種まきしたズッキーニがようやく収穫できるようになった。最初はモグラによる根痛みが激しく、植えた株を改めて種を播きなおすことになったため、予定よりも2週間以上遅れる様子となった。

 5月に紹介した「割りばしでモグラの侵入を防ぐ」作戦が上手くいき、モグラ被害は激減した。

220602 割りばしでモグラよけをしたズッキーニ
苗の周りを割りばしで囲む

 今年は二カ所の畑でそれぞれ一種類ずつズッキーニを栽培している。自家採種ができる固定種であることを条件に品種を決めた。一つは普段よく目にする濃い緑の長形ズッキーニ(品種名: ブラックビューティ)、もう一つは淡い緑色のバンビーノを選んだ。

 それぞれ同じズッキーニとはいえ、タイプが違う。バンビーノはかなり豊産性で花が沢山咲く。草勢も強く、ツルなし種ではあるが、生長点付近からツルが伸びている。
 ブラックビューティは一般的なズッキーニだと思えば間違いない。私たちの畑では生育が芳しくなく、収穫はまだ少ない。

 栽培している畑が違うため、一概には言えないがバンビーノの方が無肥料不耕起の環境には適しているように感じる。株がぐんぐん大きくなり、既に直径1mほどに葉っぱを広げている。
 バンビーノは生育が良いため、すでに種採り用の果実をつけることにした。順調にいけば、来年はズッキーニの種を買う必要はなくなる。

220730 タネ採り用のズッキーニ
タネ採り用

 ズッキーニも例にもれず、垂直に縛る付けることで生育の健全化を図っている。野菜は風通りが悪くなると、病虫害が発生しやすくなる立体にすることで長期間収穫できるようになる。
 ブラックビューティの方は下葉かのふちが茶色に変色しだし、株が弱っているように感じる。去年も同じ症状で、収穫を断念した。今年は何とか乗り切ってほしい。

夏本番で勢いが出てくるナス科野菜

二年越しのナス収獲なるか

 昨年全然育たなかったナス。二年間耕作放棄地だった畑に、自然農に適した品種を植えた。

220730 収穫間近のナス
定植五〇日目のナス

 定植から50日が経過し、樹全体のボリュームはかなり出てきた。7月頭に花が咲いたが、それは株を大きく育てる為に落とした。それから10日ほどたってから第二花が咲き、いよいよ収穫間近となった。

220721 ナスの比較
定植四〇日目のナス 比較写真

 虫食いはフキノメイガ(茎に侵入し、食害する)の被害を除いてほとんど見当たらない。アブラムシもつかず、肥料分は多すぎないようだ。この畑は元々レタスを栽培していたようで、残留肥料が多い為、良く育っているかと思っていたが、そうではなくて地力で育っている印象がある。
 フキノメイガの被害はピーマンとナス、合わせて10本ほどの枝にあった。それぞれ二株は根本から侵入し、株ごと撤去することになってしまった。多少の虫食いは仕方のない物だと割り切ることにしている。むしろ、その虫は美味しく野菜を食べてくれたわけで良い事だと思おう。
 水はけの悪い元水田圃場のため、青枯れ病の心配をしていたため、ぐったりしている株を見つけた時はドキッとしたが、今のところ青枯れは出ていない。

収穫が始まったピーマン

 ピーマンはナス科の野菜の中でかなり高温を好むため、収穫は遅れるかと思っていたが、一番早く収穫が始まった。第一花、第二花ともに草勢維持のために摘果し、その後もしばらく小さめの状態で収獲したため、株はかなり元気だ。

 ピーマンも垂直仕立てと通常仕立て、どちらも用意して比較している。今のところ、どちらも順調で差はあまり見受けられない。
 栽培が初めてということもあり、通常仕立てといいながら、とりあえず無整枝で放任している。実付きも良く、無農薬でしっかり育っている。

220729 収穫したピーマン
収獲したピーマン


 垂直仕立ての方はというと、枝がかなり混み合っており、支柱にしっかり縛り付けることが難しい。数本の枝がぴゅーっと上に伸び、下から次が伸びてくるナスやトマトと違い、ピーマンは何本もの枝が同時に伸びている。花や実を中に巻き込んでしまい、非常に作業性が悪いため、少しだけ芽かきをすることにした。
 垂直仕立てでは芽かきはしないが、枝を垂直に縛るために多少の枝を整理しても良いだろう。なるべく、弱弱しい細い脇芽を根元から切り取った。

220731 芽かき前ピーマン
Before
220731 芽かき後ピーマン
After


 BeforeとAfterを比べると、Afterの方は中心がすっきりし、しっかりと枝を垂直に仕立てることが出来ているのが分かる。しばらくは少しずつ芽かきをしながらの誘引をして行く予定だ。

垂直仕立てと通常仕立ての違いが見えてきたトマト

 トマトはいよいよ実が赤くなり収穫期が近い。早速先に色づいたトマトを味見した。さわやかな酸味で美味しかった。
 一般的なトマト栽培からすると、今年の私たちのトマト栽培は失敗レベルだろう。でも、昨年からしたらかなり良く育っている。一段目こそ花が少なかったものの、二段目、三段目としっかりと花芽がついている。

220725 ミニトマトの垂直仕立て
垂直仕立てのミニトマト

 トマトは垂直仕立てと通常仕立てである違いが見え始めた。それは垂直仕立てにした株の実割れが少ないということだ。先日の雨で収穫間近だった実が殆ど割れてしまった。しかし、垂直仕立ての株は実割れがなかった。
 道法正徳著の「道法スタイル野菜の垂直仕立て栽培」のトマトのページにも次のような記述がある。

 『また、露地栽培でも実割れ果が出にくいのも特徴です。これは、あらゆる植物ホルモンが活性化しているため、降雨でトマトが養水分を吸ってもジベレリンの異常活性が抑えられるからです。』(道法スタイル野菜の垂直仕立て栽培 道法正徳著 p.33より引用)

 この実割れが少ないのは垂直仕立ての結果かのか、これから注意深く観察していこうと思っている。

夏野菜の季節はまだまだ続く

 七月に入り、インゲン豆の収穫も始まった。やはり、マメ科の野菜は比較的地力のない圃場でも良く育つ。栽培後の地力もあげることにつながるマメ科の栽培はかなり有効な土作りだろう。

220729 いんげん前
豊作のインゲン豆

 地力のない畝にはマメ科を植えるというのを繰り返して行けば、畑全体の地力をあげられるだろう。
 いんげん豆は五月一五日に播種したもので、第二弾として六月一五日に種まきしたものが育ってきてくれている。
 また同じネットをつかえるため、モロッコいんげんを七月の終わりに播種した。夏が終わり、いんげんの栽培適温となる九月中頃から収穫できると思う。

 オクラも順調に育っている。多少アブラムシやアワノメイガの被害があるが、花芽も付きだしている。八月に入れば収穫が始まりそうだ。オクラは種採りしやすいのとたくさん播きたいので特に自家採種したい野菜だ。早めに種採り用の実を確保しておきたい。

220728 オクラ ダビデの星
スターオブデイビッド

【自然農】不耕起畑での畝の立て方 必要な道具と手順【不耕起栽培】

不耕起の畑での畝立ては数年に一回の大仕事

 畝は野菜を作付ける場所に土を盛った一段高い場所である。畑の環境をなるべく育てる野菜が好む環境に近づけるために、土を動かすことで環境をコントロールする。
 高さが出ることで水捌けが良くなったり、日当たりを改善できる。水捌けの悪い畑でも、加湿を嫌う野菜を育てるために一般的に取り入れられる技術だ。また野菜が根を伸ばせる深さを深く出来るので生育も良くなる。

 普通の畝作りは、まず土を耕すことから始まる。トラクターや耕耘機、鍬などを使って、土を耕す。すると一面真っ平でふかふかな土になる。そして、畝立て用のアタッチメントを取り付けた耕耘機や鍬などで掘り上げて畝にする。高さや幅は作付する作物や作業によって最適なサイズに変えていく。
 さらに立てた畝に、雑草防止や保湿、保温のためにビニールマルチを張ることも良くある。畝立てと同時にマルチを貼っていくこともできる機械もあり、大規模に農業をするなら必須の作業となっている場合がほとんどである。

 一方、私たちが取り組んでいる自然農的栽培ではなるべく土を耕さないことにしている。土を耕すことで得られるメリットとデメリット、耕さないで得られるメリット・デメリットを考えて、耕さない方を取った。

 もちろん自然農でも畝を立てることは有効な手段だ。畝を立てることは水はけが良くなることや、日当りをよくすること以外にもいろいろな意味、目的があると思うがそれはまた別の機会にまとめようと思う。
 自然農や不耕起栽培では一度立てた畝を毎年作り直すことはしない。普通、同じ畝を数年繰り返し使う。使っているうちに形が崩れてきたりするので都度直しながら使う。つまり、不耕起だと畝を作る作業は数年に一回で済み、かなりの省力化につながる。

 今回は自然農、不耕起栽培での畝の作り方について紹介しようと思う。畝作りはかなりの重労働で、一般的な畝立てよりも時間が掛かるので段取りが大事になる。

畝立てに使う道具

 自然農での畝立てに使うのは次の道具だけでいい。あとはそれを使う自分自身の体力が必要になってくる。

・草刈機
 生えている草を刈ってからの方が作業しやすい

・剣先スコップ
 地面に切り込みを入れ、土を畝上にあげるため

・鍬
 みぞに残った土をすくい上げる用

・(あれば)レーキ
 畝上の土を均す

 これだけあれば十分畝立て出来る。小さい畝なら、草刈機がなくても手鎌で十分出る。

①草をかり、畝を立てる場所をひもで区切る

 自然農、不耕起の畝立てはまず草を刈ることから始まる。耕していない土の表面には草が生えていたり、枯れた草が層になって残っている。草が生えたままだと、次の作業がやりにくくなったり、畝が出来た後の作付にも悪影響が出ることがあるので丁寧に刈る。

 未分解の草(有機物)を土の中に埋めると分解時にガスが湧いて、植物の根を痛めてしまう。そのため、なるべく生えている草が残らない様に地際で刈っていく。
 刈った草は地面に溜まっている枯草と一緒に熊手やレーキで予定地の外によけておく。こうして畝を作りたい場所の土をむき出しにする。このとき、作りたい畝の幅より若干広く開けておくと、次の作業がしやすくなる。

 次に立てる畝の大きさに沿って、ひもを張る。こうすることで綺麗に真っ直ぐな畝を立てることができる。慣れないうちは面倒でも、ひもを張ることをおすすめする。ひもに沿って真っすぐに畝を立てておくと、その後の草刈りや植え付けの際も楽になる。

通路部分の土を掘り上げて、畝上に盛る

 畝の形通りに紐が張れたら、次はその紐に沿って切り込みを入れていく。紐なしでこのライン付けをすると、ほぼ確実に曲がってしまう。ぐるりと切り込みが入ったら、今度はスコップ一本分あけて、平行に切り込みを入れていく。こうすることできれいに土を掘り上げていくことが出来る。特に耕していない場合、草の根が邪魔することがあるので必ず切り込みを入れる。

 次は二本の切り込みの間の部分の土を内側に掘り上げていく。掘りとった部分の地面は下がり、畝に土が盛られていく。土を掘り取ったところが畝間となるため、ひろい畝間にしたい場合は切り込みの幅を変える。
 同じ畝を横に作ると、畝間が倍の幅に広がるためそれを考慮に入れておく。一般的な剣先スコップの幅は20cmなので畝間は40cmとなる。基本的にはこれで十分な広さが確保できる。

 また切り込みの深さで掘り取れる深さがほぼ決まる。スコップの面は高さ30cmなので垂直に突き刺して掘るとかなりの深さになる。水はけの良し悪しによって変えていくが、実際の畑の様子や経験を頼りにする。
 少しずつ畝の高さは低くなっていくため、若干高く感じても数年使っていくうちに丁度良くなるだろう。

 次に畝上に上げた土をほぐしながら、かまぼこ型に整えていく。取り立てて注意することは無い。なるべく草が埋まらないにしたいが、完全には不可能だ。
 土の塊もある位程度ほぐしてあれば十分だ。これも草が生えて、野菜を作付けする過程で次第に馴染んでいく。
 北側から南側に向けて少しだけ傾斜をつければ日照が少し良くなるだろう。水はけが特に悪い場所があれば、意識してそこを高めにして傾斜を付けた畝にするともっと良いのかもしれない。

 これで畝立ての完了だ。少し時間がかかるが、これから数年はこの作業をする必要はない。作付する前後に少し畝の形を整えるだけでいい。

なかなか大変な作業だが、直に土に触れ、自らの力で土を動かし野菜が育つ場所を作り上げる。幸せな時間だと思う。どんな草が生えているか、土の香りや湿り気、手触りなど五感をフルに使って畑の様子を感じ取る。それが今後の野菜作りの参考になるのだと思う。

畝を使うのは最低3週間寝かせてから。

 畝を立てたら、なるべく裸のままにしない方が良い。雨が降ったり風が吹いたりすると、表面の土が流れてしまうからだ。最初によけておいた刈り草などでしっかりと被覆しておく。
 すると微生物が少しずつ分解してくれて畝がどんどん豊かになっていく。草が生えたら一本残らず抜くのではなくて刈り取って、そのまま敷いておく。その繰り返しで土を作っていく。

 畝を立ててから野菜を植え付けるまで最低でも3週間は寝かせた方が良い。というのも、畝立ての最中にどうしても刈り草などの有機物が土にすき込まれてしまうからだ。前述の通り、有機物が土の中で分解されるときには熱とガスが出る。これによって、作物が傷んでしまうので必ず時間を空けてから野菜を作り始める。

 夏の暑い時期なら三週間ほどで害がなくなるだろう。まだ春先で寒い時期に立てた畝は3カ月ほど置いた方が良いと思う。それだけ時間を置けば、畝上には草がびっしり生えてくるはずだ。そうなれば間違いなく、未分解の有機物による害はない。

 また、立てたばかりの畝にいきなり野菜の種をまくと、瞬く間に雑草に紛れてしまう。そこで時間を置いて一度雑草を発芽させてしまう。それを刈り払ってから野菜を播けば、ある程度草管理がしやすくなるだろう。(去年立てたばかりの畝にラディッシュの種を播いたら、雑草に紛れて見分けがつかなくなった)

 

【自然農】育苗土を畑の土を使って手作りする方法とその理由

畑の土を育苗に使うことにした理由

 そろそろ冬の終わりが見え始め、夏野菜の育苗をする時期になってきた。育苗は主に夏野菜の収穫期間を伸ばすために必須となる栽培技術だ。古くから「苗半作」という言葉がある。これは作物の一生は苗の出来で半分以上決まってしまう、ということを表している。

 苗の出来がその年の収穫を大きく左右するため、育苗にはかなり神経を使うし、様々な技術や工夫を多くの人が生み出してきた。設備や環境、使用する資材、開始する時期によって苗の出来は変わってくる。

 良い苗が豊作につながるなら、より良い苗を作りたいところだ。一般的には有用な資材が使われている培養土や、追肥のために肥料を用意したり、温度や湿度、日照を管理するために資材や機械を導入したりして、良い環境を整える。

 それには結構なお金がかかるもので、規模が大きくなれば数十万、数百万単位の費用が掛かってくる。餅は餅屋、という言葉があるように苗を栽培してくれる苗農家や種苗店もあって、高品質な苗を購入するという方法もある。当然、良い苗はできるがそれに伴う出費も多くなる。

 当面の間、私たちはま自給する分が収穫出来たらいいかな、というスタンスをとっている。安定して収穫が見込めるようになったら、販売も考えていけたらと思っているがまずは自給分からである。

 自給するための畑だし、なるべく費用を最低限に抑えて、良い結果を出したいところだ。そして、私たちが畑をやっていく上で自分の営みの範囲内で循環した栽培をしていきたいという思いがある。
 市販の培養土は色々な所から原料を運んで来て、それがまた全国各地へ運ばれて一部が私たちの元へ届く。一度掘り出された土は二度とその土地へ帰ることはない。こうなると循環する野菜作りからは少し離れてしまうような気がする。

 昨年、無肥料で栽培したミニトマトがなかなかうまく育たなかった(2021年のトマト栽培はこちらの記事にまとまっています)。育苗には市販の培養土を使い順調に苗ができた。しかし、定植後樹の成長がほぼ止まってしまい、収穫はほとんどできなかった。

 野菜を育てる畑の土と、身の周りで手に入る資材を使って育苗土ができれば、環境に負荷をかけない野菜作りになると思って、今年から育苗土作りに挑戦してみることにした。

育苗土を用意する手順

 実際に畑の土を使って育苗土を準備する手順は次のようになる。

①表面の草をよける
②土をとる
③もみがらを土の3~5割加える
④黒いビニール袋に入れて日のあたる場所に放置する

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土を篩にかける
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もみがらを混ぜる

 育苗土には未分解の有機物を入れないように注意する。植物は分解される際にガスを放出する。そのガスで根が傷むため未分解の有機物は土に入れないのが基本だ。
 実際やってみると、思いのほか全て取り除くのが難しい。大き目の篩でざっと大きな草を除けるだけにした。どうしても細かい根っこや葉が入ってしまうがガスが多く出るのはまだ青い状態の草を埋めた時なので、茶色に枯れている草なら多少は入っていても良いだろう。

 もみがらは排水性を高めるために使用する。しっかりと分解の進んだ落ち葉堆肥、刈り草堆肥を代わりに使っても良い。今回はビニールを掛けて半年近く放置したもみがらを使った。
 本来であればもみがらは田んぼに還る有機物なので、いずれは雑草堆肥や落ち葉堆肥を使いたい。中には踏み込み温床に使用して腐植した堆肥を使っている農業者もいる。

 最後に前述の未分解の草やもみがらによる障害を多少なりとも減らせるように、黒いビニール袋に入れて日のあたる場所に放置する。日中の太陽で熱をもらい、少しでも分解を進めておくためだ。
 分解促進および肥料分を少し補うために米のとぎ汁を足した。米ぬかは落ち葉堆肥などの分解スターターとしても利用されることもあるほど、微生物の働きを活発にしてくれる。

本来であれば夏にこの作業をするべき理由

 今回は割と思いつきでさっくりとした調べをしただけで育苗土に畑の土を使ってみた。

 実際準備してみたり、本やネットで情報を探してみて、もっとこうしたらという点や問題点が既に見つかった。

 まず残っている雑草の種が発芽してくる点。この方法だと雑草の種は死んでいないので、育苗している最中にどんどん発芽してくるだろう。根っこが野菜の根に絡むとどんな影響があるのかわからないが、栄養の取り合いや日光を妨げてしまうことも予想される。

 今年は生えてきた雑草は早めに抜いてしまうか、切ってしまうつもりだ。どの程度の手間になるか分からないが、試してみようと思う。雑草対策として、一番簡単なのは温度を上げてしまうこと。たいてい70℃近くまで上げてしまえば雑草の種は死滅する。
 夏場に袋に入れて直射日光にさらしておけば簡単にできる。が、それによって土の中の微生物まで殺してしまうことになってしまうのではないかと思う。

 また実際に作った育苗土をポットに詰めて水をかけてみたところ、水はけが少し悪かった。土ともみ殻の割合が低くて水はけが悪いかもしれない。もう少し有機物の量を増やした方が排水性、通気性ともに良くなるだろう。例えば、落ち葉堆肥や雑草を刈り取って積んでおいた雑草堆肥なんかが良いのかもしれない。

今年の育苗がそろそろスタートする

 野菜作りの世界に飛び込んで、ようやく苗作りの大切さが分かってきた。「苗半作」は昨年の栽培で身に染みるほど感じた。

 さらに自然農で野菜を作るなら、育苗もそれにあった方法をとるべきだと言う事にも三年目にして気づく事が出来た。今までは市販の培養土に頼りきりだったが、野菜たちが育苗を終えた後育っていく場所の土を使う。まだ根拠がないが直観的に上手くいくような気がしている。

 とりあえず今回の育苗土で心配な点は、今のところ二点ある。
 1つ目は排水性。何度か水を通しながらもみ殻の量を調節したが、実際にやってみるまでどうなるかわからない。水はけが悪いと、夜間に徒長し軟弱な苗になる可能性がある。日中の水やりの量を調節する事で多少は対処できると思っている。
 2つ目は雑草。全く熱処理をしていないため二ヶ月に及ぶ育苗期間中に沢山の雑草が生えてくることが予想される。こればかりは地道にコツコツ抜いていくしかない。今年は150個ほどの苗を作ることになるので気長に頑張りたい。植えたあとも雑草と一緒に育っていく事になるため、そのための準備になると考えたい。

 当地ではまもなく最高気温が20度近くになるため、四月頭から夏野菜の育苗を始めようと思っている。

【固定種・在来種】自家採種できる野菜の種が手に入る場所【海外品種】

 家庭菜園や小規模な畑で野菜を作っていると、野菜にはいろんな種類があり、それぞれにたくさんの品種があることが分かる。どんな野菜を育てようか、毎年冬の間に考えて、種の準備をするのも畑仕事の醍醐味だろう。
 最近ではホームセンターの園芸コーナーはもちろん、スーパー、100円ショップでも野菜の種が売られていることがある。インターネットショップも数多くあり、園芸店や種苗店のオンラインショップがたくさんある。

 大型店、園芸コーナーでは、メーカーの一押し品種だったり、農家でも作られているような質の良い一般的な品種が多く扱われている。ホームセンターに行くと、どこにいっても似たような品種の種ばかり並んでいる。

 自分で畑をやっていると普通には手に入らないような珍しい野菜だったり、品種を栽培したくなってくる。そこらのスーパーや直売所では売っていない野菜でも自分で種を買えば、何でも作ることが出来る。
 そうしたときにいつも種を買っている場所によっては、なかなかお目当ての野菜の種が手に入らないことが多い。

 特に自家採種をして、種を自分で用意したい人は家庭菜園愛好家にも多いと思うが、多くの品種は自家採種がしにくい交配種が主だ。

 そこで固定種や在来種のような、あまり売られていない品種を買うときに利用してる場所を紹介しようと思う。

地域ごとの種苗店

 古くからその地域にある種苗店に行ってみるのもおすすめ。私たちが住む長野県佐久地域なら、佐久市の嶋屋種苗、小諸市の小山種苗、上田市の樋口種苗などがある。地元の家庭菜園家や農家が昔から利用しているお店であることが多い。

 種苗専門店なだけあって、量販店やホームセンターではあまり扱っていない品種も多く扱われている。また各種苗メーカーのカタログがあり、欲しい品種があれば直接取り寄せてくれるため相談してみる。

 お店の人やお客さんから得られる情報もあるためお住まいの地域の種苗店を探してみて欲しい。

野口種苗研究所

 埼玉県飯能市にある野口種苗研究所には、今やほとんど流通していない固定種、在来種の種が多く取り扱われている。店主の野口勲さんは手塚治の「火の鳥」編集者であり、家庭菜園における固定種の種の重要性、良さを熱心に取り上げて下さっている。
 かなり豊富なラインナップでここでしか入手できない固定種・在来種の種も多い。オンラインショップもあり、全国から購入できる。
 ホームページには野口さんが綴った「野菜の話し」やその他野菜栽培に関する読み物が数多く記録されている。一度読んでみることをおすすめする。

高木農園・つる新種苗

 どちらも長野県松本市の種屋さん。固定種の種や、一般野菜でも普段は見かけない品種も取り扱いがある。オンラインで購入できる。

  つる新種苗は自然菜園家として知られる竹内孝功さんが考案した「自然菜園緑緑肥mix」を取り扱っている。この緑肥の種は実際に使ったことがあるが、長い期間草が生えてくれて、草マルチやグラウンドカバーとしてとても便利だった。また、おそらく竹内さん採種と思われる自然菜園採種の野菜の種が販売されている。

自然農法国際研究開発センター

 長野県安曇野市にある当センターは、自然農法による農業生産を研究している。新規就農者向けの研修や、試験栽培のほかに、自然農法向けの品種改良・開発もおこなっている。
 自然農法センターの品種は種とりの元となる固定種と、一般栽培用の交配種、また自然育種によって生まれた品種もある。交配種は種採りできないが、固定種も多く取り扱われている。ここで育種などを長年務められた中川原敏雄さんが書いた自家採種に関する書籍も多い。

 どの品種にも共通して言えるのは低(無)肥料、草生栽培下で本来の力を発揮する点。自然栽培や低肥料栽培を実践する人にとってはおすすめの品種が多い。また、珍しい固定種のトマトも扱っている。

→https://www.infrc.or.jp/

青空マルシェ

ホームページ→https://www.marcheaozora.com/
 オンラインショップで世界中から集まる非常に珍しい品種の種が入手できる。
 他の種苗店ではまず扱っていない野菜が多く、珍しいものを栽培したい場合はこのお店を見ると良い。
 トマトを例にとっても、10種類以上の品種がある。世界各地でエアルーム品種として栽培されているものもある。
 ネット上のレビューを見ると、届いた種を栽培したら注文したものを異なるものが育ったり、そもそも発芽しなかったりという声がいくつか見られる。信頼度が少し劣るが、やはり珍しさはピカイチである。

無農薬・無化学肥料のたねの店 たねの森

 たねの森では、無農薬・無化学肥料で栽培、採種された野菜の種が入手できる。採種栽培において、無農薬・無化学肥料栽培が明記されている種は数少ないため、こだわる人にはありがたい。
 多くの品種がそれぞれの地域で長く栽培されてきたエアルーム種で、種採りが推奨されている。理念には共感できるものがあり、こちらも一度目を通してもらいたい。

その他、インターネットショップを持っている種苗店などで固定種や自然栽培採種品などの文言に注目していればいくつか自家採種可能な種を手に入れることができる。

【自然農】自給自足に欠かせない大豆栽培。種まきから収穫後の選別までのまとめ【自給農】

自給自足に欠かせない大豆とその加工品

 味噌や醤油などの調味料、納豆や豆腐など大豆から作られるものはたくさんある。なかでも調味料の自給はロマンと実用性を兼ね備えており、自給自足な生活を送るうえで欠かせない。

 日本人の食生活に大きな影響を与えている大豆だが、国内自給率は実に約7%と、ほとんどを輸入に頼っている。なかなか国内の需要を満たすだけの供給はできないのが現状である。だが自給分であれば、大豆は十分自給可能であると思う。一昨年、昨年と栽培してみた結果をまとめてみた。

手作業で大豆を栽培する

 今年、私たちはほぼすべて手作業で大豆を栽培した。普通、大豆農家であれば、数haの広い土地で、大型機械を使用した大規模で効率的な栽培になる。5.0ha以上の耕作面積を持つ農家は全体の大豆農家の1割だが、耕作面積は全体の6割を占めることからも、大規模集約的な栽培が伺われる。さらに国産大豆の内、有機栽培されるのは0.5%ほどでかなり希少なものとなる。

 私たちは自分たちが食べる分だけ栽培すれば良いので、他の野菜と同様、自然栽培でやってみた。無肥料、無農薬栽培になるが、大豆はマメ科の野菜で窒素分を空気中から固定する力があるので、自然栽培に適した作物だろう。

220131 綺麗になった大豆

 使用した機械は種まきと除草のための刈払機と、選別するときの扇風機のみだ。基本的に手で種をまき、草が生えて来たら鎌で刈り、収穫と脱穀、選別まで全て手作業で行った。ゆえに動力は自分の身体がほとんどだ。

 結論としては、時間がそれなりにかかるが、今年の栽培面積くらいなら無理なく全ての作業をすることができた。

2021年の栽培面積、作業時間、収量の結果

①播種

 2021年は20mの畝を2本分で、約40平米で栽培した。播種した大豆は150gほどだった。栽培した品種は長野県在来種のナカセンナリ。2020年に初めて種を購入して栽培し、自家採種したものを使用した。

 播種したのは6/10。播き方は二種類試した。どちらも草が生えているところを耕すことなく播いた。半分は草刈り機で地際ぎりぎりまで刈り、種をまく場所を鍬で薄く削って地面を露出させてから播いた。

 もう半分は草刈りをざっとして、種をまく、ちょうど手のひら分だけ手鎌で刈り込んでから播いた。

 それぞれかかった時間は倍くらい違う。丁寧に作業したほうは20平米で1.5時間。もう一方は同じ面積で40分ほどだった。実際の作業も、ざっと草刈りして播く方が圧倒的に楽だった。

②草刈り・間引き
 発芽は播種後の雨のおかげで簡単にした。その後の管理は、大豆の成長に合わせて伸びた草を刈っていくだけだ。

21060 発芽
種まきから10日後

 最初はしっかり地面を削ったほうが雑草の数は少なく、楽なように思われた。簡単にやったほうは生長点も残っているので大豆とほぼ同じ大きさの草が揃って生えてきた。
 大豆が草に埋もれない程度の頻度で、手鎌と草刈り機で刈っていく。一回あたり約1時間。最初の草刈りの際に、双葉が揃っていない大豆は間引いた。

 大豆の成長は早く、草刈りの頻度は後半になるにつれて下がっていった。合計で4回、草刈りに入った。9月以降、草刈りをした記録がないのでその後は放置で育った。種まきの仕方による差はほとんどなかった。

210907 発芽後10週間 腰くらいまで北
発芽してから70日後

 気を付けたのは、開花期にあたる8月上旬までに厚めの敷き草をすること。大豆は開花期の渇水で莢つきが著しく悪くなる。敷き草をしておくと、地面の乾燥をかなり抑えられるので8月の乾燥期までにしっかりと準備をしておく。これはナスやトマトなどの野菜にも同じことが言える。

③収穫・脱穀・選別

 普通ならビーンハーベスタで一気に収穫するのだろうが、私たちにそんなものはない。そこでのこぎり鎌で地道に刈り取った。地際で刈ると腰をまげることになって大変なので、無理のない高さで刈り取った。刈り取った株はビニールハウスに運び込んで1週間ほど乾燥させた。

211106 発芽後17週間 ハウスで乾燥
ビニールハウスで乾燥

 脱穀は手作業でも使える千歯こきのような道具があるようだが、わたしたちは持っていないのでひたすら手で脱穀した。最初は長靴で直接足踏みするように外した。株をどけるとたくさんの大豆が空の莢や枝葉と一緒にあつまっているのでそれをコンテナに移す。これをひたすら繰り返し、約2時間ほどで脱穀できた。

220125 脱穀終わり、篩まで
脱穀した大豆

 選別作業はえごまの選別や大根などの野菜の種にも共通する作業なのでかなり慣れてきた。
 まずは大豆が落ちないサイズの篩にかけて、小石や細かい残渣を落とす。次に大豆が通れるサイズの篩で大きなごみを取り除く。
 この後、風選を行う。風選とは風の力で軽いゴミを吹き飛ばして選別する方法。唐箕という専用の道具もあるが、もちろん私たちは持っていない。そこで扇風機で風を送って風選することにした。扇風機の前で大豆を落とすと、きれいに莢や葉っぱ、かけた大豆が吹き飛ばされて、きれいな大豆が残る。

220125 風選
風選

 ここまでくればあと一息。

 最後は目視で大豆を選別していきます。割れていたり、黒く干からびているもの、病気で黒斑・紫斑が出ている豆を取り除きます。根気のいる作業ですが、自分たちが食べる大豆です。気楽に気長に楽しんで頑張ります。
 ①傷もなく、形が綺麗なもの、②割れたり、形が悪いけど食べられるもの、③食べられなそうなもの、で分けていきました。

 選別にかかった時間はざっと3時間ほど。収量はつぎのようになりました。

合計
5400g 4560g (84%) 240g 600g

 作業時間の合計は、①栽培で6時間、②選別で3時間の9時間となった。これらを栽培農家の平均と比べると、

  収穫量 収穫量(10a換算) 作業時間 作業時間(10a換算)
自給栽培 4.5kg 112kg 9時間 225時間
長野県   140kg   14時間

 時間に関してはどうしてもかなわないが、収量は思ったより悪くないと思う。資源の投入無しでこれだけ収穫できれば十分だろう。自分たちの作業時間はもう少し早くできる部工程があるので来年に活かす。

自給するなら大豆を作ろう!

 今年収穫した大豆を使って味噌を作るつもりだ。味噌は日常的に使う調味料なので、自家製味噌を食べるのが楽しみだ。割れてしまった大豆もきな粉にしておいしくいただくつもりだ。豆腐作りにも挑戦したい。5キロくらいならすぐに消費してしまいそうだ。

 今年栽培した経験からすると、10kg、いや30kgくらい収穫できるくらいまで規模を大きくできそうだ。それだけあれば、自給分はもちろん身の回りの人たちにあげる分もありそうだ。

 2022年はもう少し栽培する量を増やして、味噌や豆腐をたくさん作りたいと思う。種もは自家採種2年目となり、より土地にあった大豆になることを期待している。また、唐箕や千歯こきなどの古くから使われてきた便利な農具をしっかり活用しながら保存して行きたいので使われずに眠っているものを探したい。

 大豆を選別してみて、食べられないクズ大豆がそれなりの量でた(約10%)。今年は畑の土に戻すつもりだが、これを活用する方法もある。私たちは最終的に鶏を飼って、卵を自給したいと思っている。大豆は栄養価が高く、鶏のエサとしても有用だ。より循環する生活を目指すうえでも大豆は必ず作りたい作物だ。