真夏にも簡単に栽培できる葉物、空芯菜
真夏は草や虫たちが活発に活動する季節で、特に無農薬栽培では小松菜、青梗菜、レタスなど言った葉物野菜の栽培は難しい。農薬や防虫ネットなどの資材を活用しないと栽培がかなり難しくなる。そもそもこれらの葉物野菜は軟弱野菜とも言われ、高温や梅雨時期の雨で成長が鈍り、病害が多発する。
そんな中で空芯菜という野菜は真夏の高温多湿な環境でも旺盛に生育し、収穫を見込める。近年続く、ゲリラ豪雨や酷暑、大型台風にも耐える強健な野菜だ。
自給作物としても、販売作物としても真夏に収穫できる葉物野菜は貴重だ。私たちも毎年栽培に挑戦している野菜である。食べても独特の風味と食感で美味しい。サッといためるだけで一品出来るため疲れている時にも重宝する。
空芯菜の特徴・栽培方法
空芯菜はスーパーなどではエンサイ、エンツァイという名前で販売されている葉物野菜だ。空芯菜という名前は標商登録されている関係で一般には使われない。茎に穴が開いていて、筒状になっていることから空芯菜という。エンサイというのは中国名だそう。
もともと東南アジア原産でヒルガオ科サツマイモ属に分類される植物だ。高温多湿の熱帯地域で多く栽培され、水耕栽培も可能なほど多湿を好む野菜である。フィリピン、タイ、ベトナム、マレーシアや中国、オーストラリアなどの国でも盛んに栽培されている。
日本でも沖縄や九州で昔から栽培され、最近では真夏の高温下でも収穫できる葉物野菜として栽培が広がっている。スーパーでも時期になれば目に入ることがある。
とにかく寒いのが苦手なため、種まき時期はシビアだ。九州などの温かい地域でも四月中旬、私たちの住む寒冷地では六月に入り気温が安定して高くなってからでないと上手くいかない。
乾燥にも非常に弱い。梅雨時期は大量の水分を確保でき、盛んに成長するが梅雨が明け降雨が減ると乾燥によって草勢が落ちてしまう。そのため、乾燥高温期はマルチや敷き草の活用、潅水も場合によっては必要になる。
水持ちの良い畑を好み、雨が降ったら冠水してしまうような畑でもしっかり根が張れていれば、十分育てることができる。水はけのあまり良くない場所で育てることができるため、どうしても土壌改良が上手くいかない場合は空芯菜を栽培してもいい。
育苗して初期生育期間をクリアする
そんな空芯菜だが、気温の低い時期はあまり成長しない。特に種まき直後から梅雨入りまでは寒い日が続くこともあるため、競合となる雑草に負けて大きくなれないことがある。
私たちも里芋を栽培している畑で昨年直播で栽培してみたが、初期生育が草に負けてあまり大きくならなかった。空芯菜好みの比較的じめじめとした土壌なのだが、初期の根張りが良くなかった。かといって、マルチを使うのもしゃくなので今年は一工夫しようと思う。
それはある程度の大きさまで苗の状態で育ててから畑に定植することだ。寒冷地では特に初期の低温にあたりやすいため、寒い日は家の中に取り込んで温度管理をする。育苗期間は1ケ月ほどとし、背丈が10~15cmほどになり、六月に入ってから定植するつもりだ。この地域では六月に入れば遅霜の心配もないし、最低気温も10度を下回ることはほぼない。初期生育段階で勢いの出てくる夏草に負けずに育つ。
もちろん育苗には定植する予定地の土を持って来て使うつもりだ。かなり水はけが悪いため、草堆肥やもみがら燻炭を入れて排水性を高める必要がある。。
定植予定地はクローバーの群生地になっていて、かなりクローバーの根がはびこっている。クローバーはマメ科の植物で根についている根粒菌が空気中の窒素を固定する。空芯菜は多めの窒素を要求するらしいが、このクローバによる窒素供給に少し期待している。地上部を刈り払えば、その根っこが分解され窒素が土中に放出されるはずなので、長期間窒素を供給してくれるはずだ。
さらに言えば、クローバーは低い位置で密生する。そのせいで土が湿り気をかなり保持するようになるらしい。作物によってはそれがマイナスに働くこともあるだろうが、湿気を好む空芯菜ならそれを活かせる。ある程度空芯菜が大きくなれば、クローバーを少し残してリビングマルチみたいに使えるかもしれない。
と、ちょっとクローバーについて長くなってしまったが、そこに生えている植物の力を借りて栽培するのが自然農では重要だと思っている。これでうまくいけば、クローバーをナスなんかの湿り気を好み、必要肥料分が多い野菜の畝間や株間に使うこともできるかもしれない。
種採りは寒い地域ではできない……
私たちは自家採種にも力を入れている。種代の節約にもなるし、畑にあってくる感じもしている。さらに種から循環する野菜作りは現代において、最高の贅沢だと思っているからだ。
この空芯菜に関していえば、ほとんど品種がない。販売されている種にも「エンサイ」や「エンツァイ」と書かれているだけで特別な品種名があるわけではなさそうだ。小松菜や白菜などと比べたらマイナーな野菜で、そもそも病害虫の被害を受けにくかったり、通年栽培できない野菜のため、品種改良・開発が進んでいないのだろう。つまり、固定種の物がほとんどだろうから種採りしやすい。
しかし、残念なことに空芯菜は九州以北の地域では採種が出来ない。というのも、ほとんどの地域で花が咲かず、咲いても種が残らない。長野県では間違いなく種はつかないだろう。ビニールハウスで暖房を使えば、もしかしたらできる……のかもしれないがそこまで試す余裕はない。空芯菜は毎年種を購入する必要がある。
今年は空芯菜をモリモリ食べて夏を乗り切ろう。
空芯菜の種まきはこれからできる。特に関東以北であれば連休明けからが適期だ。多少種まきが遅れても、梅雨に入ればぐんぐん成長してくれるため、焦らず準備できる。2,3株植えれば自家消費には十分な量が収穫できる。
種はホームセンターでも種屋さんでも手に入る。私たちが大部分の野菜の種をオンラインショップで購入している。自家採種可能な品種や珍しい品種を探したい場合は参考にしてみて欲しい。→【固定種・在来種】自家採種できる野菜の種が手に入る場所【海外品種】
実を言うと、昨年は空芯菜もほとんど失敗した。種まきを少し焦ってしまい、気温が上がり切らないうちにしてしまった。自然農に切り替えて一年目ということもあって草の勢いもあり、大きくならないうちに草に埋もれてしまった。
今年は育苗を活用して、しっかり収穫まで育ってほしい。夏の暑さには暑い気候でたくましく育つ野菜を食べるのが一番だ。酷暑が予想される今年の夏、元気に乗り切りたい。