【自然農】寒冷地でのニンニク栽培。種ニンニクを植え付ける深さで違いはあるのか【ノーマルチ】

ニンニクを植える深さは何センチか

 ニンニク栽培はあまりすることがない。草の勢いが弱まる10月ごろに種を植え付けるため、年内は草取りもする必要がない。年を明けて春先になると多少草が生えてくるため、数回草取りをするだけだ。

 大きなニンニクを収穫するコツは追肥にアリ! と色々な所で言われているのを見る。確かに立派な、大きなニンニクは追肥の量、タイミング、何を使うかで結構左右されるらしい。

 だが、私たちは無肥料・無農薬栽培を基本としている。100点ではないけど、60点くらいのニンニクを資材の投入をしないで作りたい。それには自然の仕組みを上手く活用した土作りと、その土地に馴染んだ自家採種が欠かせないと思っている。そして、その土地に合った最適な栽培管理が求められる。

 ニンニク栽培ではできることはあまりない。種を植えたら、あとは草に負けない程度に草取りをするだけ。だから植える深さはとても大事な要素になる。ここでニンニクの一生が決まると言っても過言ではないはずだ。

 そこで今年はよりニンニクが本来の力を出せる栽培方法を探ることにした。

浅すぎると冬場に痛む、深すぎると太りが悪い

 ニンニクは秋に種球を植え付けて、年内に数センチくらい葉っぱが成長した状態で越冬することになる。そのさい、葉っぱは枯れても問題なく翌春に新しい葉っぱが出てくる。しかし、種球自体が寒さで凍ったりするとそのまま枯れていってしまう。

 そのため、深めに植えておかないと寒さの厳しい地域では冬越しできない。大根やニンジンなどを冬越しする際にも地中に埋めることで凍害から避けることができるのと同じ原理だ。

 ニンニク栽培の場合、深すぎると肥大が悪くなるため注意が必要だ。これについてはこれといった根拠があるわけではないがいくつか理由が考えられる。
 まず一つに、深さが浅い方が芽が出るのが早く、その後の生育期間が長くとれることがあげられる。ニンニクは発芽までに2~3週間かかるため、早く出た方が大きく育ちやすい。また春先も出芽も早くなり、肥大に有利だと思われる。
 二つ目に表土に近い方がより肥沃で豊かな土だからだ。特に自然農では耕す事をせず、草や残渣を地表に積んでいくことで土を肥やして行く。そのため、表層数センチがとりわけ豊かになっていく。深い所に植えてしまうと豊かな土に根を張ることが出来ず、結果生育と肥大が劣ることになる。

 これらから、ニンニク栽培では植え付ける種の深さが非常に大きな要因になってくる。

植え付け深さを二通りに分けて比較栽培

植え付け深さの設定

 2021~2022年のニンニク栽培では種を植える深さを二つに分けて栽培している。

 まず、当地の気候を確認する。御代田町は長野県にあり、隣町に全国的にも有名な軽井沢町がある。軽井沢町はケッペンの気候区分で亜寒帯湿潤気候に属する。御代田町は軽井沢町よりも2~300mほど標高が高いがほぼ同じ気候だ。
 年間平均気温は9度前後で冷涼であることがわかる。体感的には東北地方の沿岸地域とさほどわからない。冬は最高気温が氷点下の日もあり、最低気温は-15度付近まで下がることがある。

 ニンニク栽培という観点からみると、ここで栽培に適しているのはホワイト六片に代表される寒地系ニンニクだ。ニンニクの一大産地、青森県とも冬の降雪量以外は似た気候をしている。

 今回は植える深さが生育に及ぼす影響の検証として、二通りに分けて栽培してみた。植え穴の深さを①7cm、②10cmとした。それぞれ7cm、10cmの深さの穴をあけて、底に種ニンニクのお尻がぴったりつくように植え、土で埋めた。種の高さが約3cmあるため、種の頭から地表までは①4cm、②7cmとなる。

 寒冷地のニンニク栽培について調べると、植え付ける深さは5~6cm(全農青森)、6~7cm(JA庄内みどり)、10cm(宮城県登米)となっており、結構バラつきがある。しかも、この深さがどこからどこまでも深さなのかわからない。種の上に被せている土の深さなのか、この深さの穴に種を植えているのか、どちらかなのかによって約3cmの差が出来る。後で今年の比較結果を紹介するが、3cmというのは大きな差になった。
 このようにどこから何センチなのかわからないと栽培結果も変わってしまう。今回は指定の深さの穴をあけて、そこに種ニンニクのお尻をぴったり合わせるという基準を取った。

植え付けから四月までの様子

 2021年10月15日、ニンニクの種まきを行った。
 種は種苗店で購入した福地ホワイト六片1kgと昨年収穫したホワイト六片数十個を用意した。植え付け前に薄皮まで剥いて冷蔵庫で発根処理した。

 畝は植え付け1ヶ月前に生えていた草を刈り、植え付け前日にもう一度刈払機で深刈りした。地表をレーキで整え、大きな根は取り除いた。

 植穴は角材に印をつけてそれぞれ深さを一定にした。そこに種ニンニクを優しく置いたのが画像の通りだ。左側が深さ10cm、右側が7cmとなっており、見える種ニンニクから深さが違うのが分かると思う。

211015 ニンニクの植え付け
左側:10cm、右側:7cm

 それから1か月後、11月半ばに浅く植えた右側の列は芽が出そろい、もう少し生長すれば冬越しに理想的な大きさだ。一方、深植えの左側はまだ芽が出ていない。

211116 植え付け一ケ月後の様子 浅い方しか発芽していない
11月半ば。右側の浅植えは芽が出た

 春の兆しが見られる三月上旬の様子。結局深植えのニンニクは芽がちょこっと出ただけで冬越し。浅植えはある程度葉が残った状態で春を迎えた。この段階では浅植えの方が良い結果になると予想していた。

220307 3月上旬の様子。浅い方が大きい
三月上旬。右側の浅植えの方が生育が良い

 さらに一ケ月経過し四月上旬。深植え、浅植え、ほとんど差がなくなった。気温が上がりだし、一気に生長しだした。

220406 四月上旬 ほぼ差がなくなった
四月上旬。殆ど差がない。左:深植え、右:浅植え

五月から収穫まで

草取りと草マルチで肥大を促す

 五月に入り最高気温が20度を超えてきてからは、草の勢いが出てくるため、収穫まで二回程草取りをした。草マルチの下から生えて来た草をのこぎり鎌で地際で刈っていく。刈った草はそのままニンニクの周りに敷いて、地面の露出が無いように管理した。

 ニンニクは肥大に養分と水分を多めに必要とするため、ニンニクの根と競合する草は刈っておく。草マルチをしておくことで雨が少ない春先に水分を逃さないようにしておくことが大事だと思っている。

 このあたりではもう二通りの差は見受けられない。背丈は両方とも50cm近くまで伸び、茎の直径は1cmほどまで成長した。

220523 背丈の確認 50cmくらい
背丈は50cmを超えた。

収穫! 結果は10cm植えの方が良い!

 6月16日に収穫を迎えた。今年は梅雨入りが早く、雨が続くことが予想された為、例年より1週間ほど早いが収穫した。今回の比較は購入した福地ホワイト六片の種球のうち、大サイズ(概ね2cm×3cmほどのもの)の種の収穫物で行う。

 下葉も枯れ出し、ニンニクのお尻も平らになっていたため、早すぎるということはなかった。

 まずは浅植えの結果から。6cm以上の大サイズはなし、4.5~6cmは11個、4.5cm弱は13個、ミニサイズが5個という結果だった。

220622 大 7cm上
7cm、浅植えの結果
220622 大 10cm上
10cm、深植え

 一方、10cm、深植えの結果。6cm以上の大サイズが1個、4.5~6cmが14個、4.5cm弱が9個、ミニサイズが4個だった。

  合計 6cm以上 4.5~6cm 4.5cm弱 ミニサイズ
浅植え 29 0 11 13 5
深植え 29 1 14 9 4

 少しサンプル数が少ないため、分かりにくいかもしれない。売り物になるくらいのサイズが4.5cm以上とすると、浅植えでは11/29(38%)、深植えでは15/29(52%)と結構差がある。また小サイズも少なく、なんとなく大き目だ。
 ちなみにミニサイズは株の真下をモグラが通ったと思われる。この圃場がモグラが活発でしばしば野菜の根が傷んでしまっている。何個か確認したら空洞がぽっかり空いていたため、間違いないと思う。

 結果としては10cmの方が立派なニンニクが育ちやすかったと言える。次からは10cmの深さに植えていこうと思う。
 さらに病害も深植えの方が少なかったように感じる。特にさび病や紅色根腐れ病は浅植えの株に多く見られた。寒さでより根が弱った結果なのかもしれない。

まとめ 植える深さは10cmにする

 初期生育の良さや浅植えの方が豊かな表土の養分を吸いやすいと言った考察から、浅植えの方が大きいニンニクが収穫できると考えていた。

 しかし、実際は深さ10cmに植えた方がサイズが大きくなった。やはり寒冷地では凍害の影響が大きいのだろう。

 最近、無肥料環境で好成績をあげる「垂直仕立て栽培」に取組んでいる。ニンニクでもその効果があるか検証したいと思う。今回の結果を踏まえて、改めて検討するつもりだ。

【自然農】自家採種と連作3年目のスナップエンドウ栽培【連作障害は?】

自家採種した種は発芽率が良い

 今年栽培したスナップエンドウは自家採種3年目の種を使った。元はF1種の品種だったが、特に性質がばらけている様には感じなかった。

 自家採種をしていくと、種が圃場・地域の気候や環境を記憶して出来が良くなると言われているが、あまりそれは感じなかった。基本的に種採りを始めて種が馴染んでくるまで五年はかかると言われているため、もう少し気長に待とうと思う。

 発芽率が非常によく、9割以上発芽していた。昨年と同じ3月20日に種まきし、20日後の4月10日に出そろった。かなり正確で、この栽培スケジュールを記憶している様だった。発芽後も寒い日が続き、霜に当たることもあったが特に痛みも無かった。

220425 スナップエンドウの様子
4月下旬のスナップエンドウ

 今年は実験的に畝の半分を「芽だし」を行ってから種まきした。自然農法で栽培されている方が紹介していた方法で、寒い地方で春先の発芽率を上げるためのようだった。
→参考にした方のブログはこちら(春蒔きスナックエンドウの芽出し/無農薬・自然菜園(自然農法・自然農)で、自給自足Life。~持続可能で豊かで自然な暮らしの分かち合い~)


 種を一昼夜水に浸し、翌日水を切ってそのまま乾かないようにタッパーなどに入れて置く。すると数日後に根が出てくるので、伸びきる前に植えると発芽が揃い、早いと言うものだった。

220321 芽だししたスナップエンドウ
芽出しをしたスナップエンドウ

 発根処理自体は上手くいったのだが、その後の発芽率はあまり良くなかった。普通に直播した部分と発根した部分、葉の密度が全然違うのが分かると思う。後述するが、この比較は畝の肥沃度が全く違う部分で行ったため、種の播き方が全ての原因ではないと考えている。

連作を嫌うエンドウ類を三年連作した

 スナップエンドウなどのエンドウ類は一般に連作障害が出やすいとされている。一度栽培した土での栽培は最低三年は空けると言われている。連作障害としてどのような症状が出るのか、詳しい所はわからないが、生育が悪い、実ができない、病気が蔓延する、虫害が頻発するといったことが起こる。

 自然農、自然栽培では連作障害が起こりにくいと言われている。無肥料のため、肥料分の偏りが少なく、草を完全に除去しないため土壌生物もバランスが勝手にとれてくるためだと言われている。

 今年、スナップエンドウは昨年と比べると少し、生育、収穫共に良くなかった。これが連作障害なのだろうか。次の項目で今年の栽培がうまくいかなかった要因をいくつか考察しているが、特に誘引が上手くいかなかったのが原因だと考えている。
 病虫害もアブラムシなどが多少見られたが、そこまで気にならない程度だ。背丈も60~70cmほどまで伸び、順調に育つ株も多くあった。これらから考えると今年も連作障害はほぼ起こっていないと言える。

220612 50cm程まで育って実もついたスナップ
立派に育った株

支柱と誘引が上手くいかなかった

 結果的に今年の収穫量は少し少ない。生育を観察していても、どうも伸びが悪かった。原因として三つほど考えられるものがある。連作障害以外に次の原因があると考えた。

①土がよくなりすぎたand悪すぎた
 一つ目は土がよくなりすぎたという点だ。スナップエンドウを栽培した畝は春先に、ホトケノザ、ハコベ、ナズナなどの肥えた土に良く観察される柔らかくて背の低い草が旺盛に生えていた。隣の畝に作付したニンニクは三年間無肥料にも拘わらずかなり大きくなったものもあった。

220416 スナップの畝 草がいい感じ
ナズナやハコベ、ホトケノザが見られる


 マメ科の植物は比較的痩せた土を好むと言われている。そのため、土壌の肥沃度が高まったところではあまり生育が良くならなかったのだろうか。とはいえ、花が沢山付き、収穫も出来ているため、丁度良い肥沃度だったのかもしれない。
 一方、この畝は手前半分があぜ道に面しており、肥沃な草が多い。奥側は慣行栽培の圃場で際部分は除草剤が撒いてある。こちらは草がそもそもあまり生えておらず、今年はスギナが多く出てきていた。
 そのため、畝が肥沃とそうでない部分で半分半分になっていた。このうち奥側はスナップエンドウの育ちが悪く、結局ほとんど大きくならずに消えて言った株も多かった。手前はほぼ例年通りの育ちといえる。前述の種まき方法の違いも同じ範囲で試しているため、芽だしが良くなかったのか、土の肥沃度が足りていなかったのかはわからないため、もう少し実験が必要だ。

220619 育ちが良い部分のスナップ
手前側、良く育っている
220619 育ちが悪い部分のスナップ
奥側 スギナが目立つ

②春先の気温が低かった
 今年は昨年、一昨年と三月、四月、五月の気温が低かった。数値的には特に五月上旬が低くて最高気温が10度に届かない日もあった。肌寒い日が多いなと思っていた。
 うちの栽培方針は「使い捨ての資材はなるべく使わない」「なるべく土を動かさない」ため、ビニールマルチを使っていない。それもあって寒い日が続くと生育が緩慢になりがちなのだろう。ちなみに近くにあるスナップエンドウの慣行栽培の圃場ではうちの二倍のスピードで育っていた。

③支柱の立て方が甘く、誘引が上手く出来なかった
 一番の原因はこの支柱と誘引だと思っている。
 スナップエンドウは葉の先からツルを伸ばし、何が掴まることで身体を安定させる。逆にツルが固定されていないと生育が鈍ると言われている。

 誘引方法は数メートルおきに支柱を立てて、ネットを張るのが一般的だ。そして背が伸びて来たら、ツルが掴まれていない枝ごと、両側からひもで挟んで枝が上を向くように誘引していく。

220526 アサヒモを横に張ってある
10~15cm間隔でひもを張った

 今年の失敗点は支柱を深くさせなかったことでグラグラしてしまったことだ。不耕起でも草マルチの徹底で土がとても柔らかくなっていたが、柔らかすぎて簡単にぐらついてしまっていた。人力で差し込めるところから、ハンマーでさらに15cmほど叩き込めばよかった。

 また、ネットを使わずに栽培できないかと、横紐を何本も張ってネットに代わりにしようとした。麻紐をぴんと張ったが直ぐに緩んでしまい、スナップエンドウが上に伸びていけていなかった。また、風が吹くと根本から大きく揺さぶられていたため、それでかなり根が傷んだと思われる。

220615 緩みまくった紐
緩んだ誘引紐

来年の栽培に向けての改善点

 まず、適度な草刈りとしっかりとした被覆による土作りを引き続き行う。やはり草を敷いて1年たつと、土が柔らかく保たれ草の種類も変わってくると感じている。

 次に欠株を補うために補植用の苗を用意すること。畝の奥側はモグラによる苗痛みも多かった。補植用に苗を作って置いて、それを植えることで多少は畝の生産性が上がる。

 支柱はハンマーを使って、最低30cmは土に突き刺す。また、支柱が倒れないように適度に筋交いや畝の両端はひもで突っ張る補強をする。誘引先としては市販のナイロンネットの活用する。不耕起ならネットを常設することもできる。
 また、スナップエンドウの種まきと同時に、北側にライ麦を筋蒔きしておくのはどうかと思っている。一緒に育つことでスナップエンドウのツルが巻き付き先として活用できるし、強い北風を防ぐことができ、地温の維持にもつながる。

 今から来年の栽培が楽しみだ。

【自然農】畑の土と陽だまり育苗の夏野菜苗。種まきから約40日経ってどうなった?

寒い日や雨の日が多かった2022年の春

 私たちは今年も加温設備を必要としない「陽だまり育苗」で夏野菜の苗を作っている(→詳しくはこちらの記事をどうぞ)。より循環の環が閉じた野菜作りを目指して、市販の培養土や石油資源や資材をなるべくつかわず、身の周りのものを活用して育苗をしている。

 加温設備はほぼ使っていないが、私たち自身が寒いと思った日にはストーブやこたつを使っていたのでその熱は最大限有効利用した。また、家が断熱材などがほぼ入っていない古い家で朝にはその気温をほぼ変わらないことが多いので保温用に「種まきカバー」を購入した。

 これは使い捨てではなく、大切に使えば数年は使えそうなので良しとした。全部を全部自給するのは大変なので頼るところは頼っていこうと思う。こちらの製品はコメリなどの大手ホームセンターで販売されており、どこでも手に入れられる。サイズが51型育苗箱に合うサイズで、そこには底面給水トレイが便利だった。
・種まきトレー51型→https://www.komeri.com/disp/CKmSfGoodsPageMain_001.jsp?GOODS_NO=1447594
・種まきカバー→https://www.komeri.com/disp/CKmSfGoodsPageMain_001.jsp?GOODS_NO=1981892

 この種まきカバーのおかげで大分温度管理が楽になった。いずれは育苗ハウスを構えて踏み込み温床での育苗にも挑戦したいが、その際の保温資材として有用かもしれない。

 今年の三月・四月、また五月の第一週は例年に比べて寒い日が続き、雨も多かった。周りで営農されている方は降り続く雨でなかなか作業が進まず、全体的に生育も遅れがちなようだ。

 うちは自然の天候に苗作りを任せているため、雨の日・曇りの日は特に温度が上がらずちゃんと成長しているか心配な日々だった。徒長しやすい日が続いたため、少しでも晴れたらすぐに太陽に当て、曇りの日もできるだけ窓際で管理した。

 結論から言うと、今のところ順調に生育している。ただ、自家採種・自然農・自家製畑の土培土による問題や違いが出てきているのでそれぞれ紹介しようと思う。

トマトは自家採種の結果、生育がかなりばらついた

 うちのミニトマトは交配種の自家採種1年目の種を使っている。広く知られている通り、交配種は自家採種すると、親の形質がランダムにでて来て、同じものは採種できない。そのことから自家増殖禁止の登録品種であっても、交配種であれば自家採種しても良い事になっている。

 育苗段階でも、かなり株によって生育に差が出てきている。これは悪いことではなくて、どのトマトがうちの畑にあっているか判断することができる。つまり、様々な性質の出ている、交配種(F1)からの自家採種(F2)は自分の畑に合った品種を作っていくことができると言う意味だ。

 今年の育苗は定植予定地の土をそのまま培土に使っている。この土でしっかり育っている苗は畑に定植してからも良く生育すると考えられる。逆に育苗の段階で上手く育たないものは次の自家採種の対象からは省くことができる(これを選抜育種という)。

 40日の時点で本葉4枚になり、鉢上げを終えたものは32株あり、そのうち16株は四月二十九日に鉢上げしてある。この16株は特に生育の良かった、いわば1軍だ。同じ日に播種したものでも、一番大きな差があるもので写真の通りだ。種が違えば同じ土、環境でこれだけの差が出る。

220508 播種40日目のロッソ
同じ日に種まきしたミニトマト

 中には周りと比べて特に葉色が濃いもの、背丈が短いのに葉数が多いものもある。これらは特徴が他の大部分から外れているので種採りの対象にはしないが、収穫まで育ててみたいと思う。個人的には葉色が濃いものは吸肥力が強く、畑に植えたら良く生育するのかも。

成長がゆっくりなナス、低温障害が出てる?

 ナスは国際自然農研究開発センターの自農丸ナスを栽培することにした。ナスはトマトよりも生育が遅いため、より早く種まきをするのが基本のようだが、今年はすべて同時に種まきした。販売されている種なので、発芽率はほぼ100%だった。何とか種採りまでつなげたいところだ。

 昨日六日の土曜日に鉢上げした。まだ葉っぱの数は三枚と少なかったが、7.5cmポットで育苗していたため、肥切れになる前に鉢上げした。やはりトマトほどは根鉢ができておらず、少し苦労した。

 背丈は5cmほどでまだまだ小さいが、ここ数日で一気に大きくなった。ここ長野県は五月になっても数日は最低気温5度以下の日がある。第一週をすぎるとぐっと春らしくなり、夏の兆しも見えてくる。ナスにとってはこれからが生育適温だろう。

220508 播種40日目の自農丸ナス
本葉3~4枚


 陽だまり育苗は夜間、家の中にしまうが我が家は外の気温とほぼ同じくらいまで室温が下がる。一応、カバーをつけて毛布を掛けておいたがやはり低温障害らしき症状が出た。数日だけなので、この後何事も無く育ってくれることを願っている。

220508 播種40日目の自農丸ナス 低温障害?
低温障害

一番高温を要求するピーマン類は順調!

 ナス科作物の中で、発芽や生育に最も高温を要求するピーマンは一番小さいかと思っていた。実際、鷹の爪(自家採種1代目)はまだまだ本葉三枚ほどでナスよりも小さい。
 ところがこちらも初栽培の国際自然農研究開発センターの自生えピーマンはかなり順調に生育している。本葉は四枚展開しており、葉色も良い。中にはあまり大きくならなかったものあるが、15/20株はいい感じだ。

220508 播種40日目の自生えピーマン
葉色が良く、つやがある

 ナスとピーマンは同じ畝に作付予定なので、同じ土で育苗している。ナスよりも生育が遅いはずのピーマンが大きくなっている所を見ると、ここの土はこのピーマンに合っているのかもしれない。加温設備がないと、ピーマン類の育苗は、特に発芽の段階で難しくなるようだが今のところ順調だ。

 既に7.5cmポットの鉢周りを超えているため、早急に鉢上げしてあげたいと思う。

 ピーマン類の中で小果種にあたる鷹の爪は、今年自家採種一年目の種を使っている。同じ場所の土を使っているのもあって、生育ムラが少なく揃って生育している。

220508 播種40日目の鷹の爪
自家採種い

番外編。ズッキーニ

 ズッキーニは育苗してから畑に出す予定だ。品種は二種類で、二カ所の畑でそれぞれ栽培する。種採りもできるが交雑しやすいため、圃場を完全に分けた。
 一つはトキタ種苗のバンビーノ。豊産性でたくさん実がなるし、味も美味しい。普通のズッキーニよりもうまみが感じられる気がする。薄緑色の中太型のズッキーニだ。
 もう一つは品種名は不明だが、つる新種苗で取り扱われていた自然菜園採種のズッキーニだ。形状はごく普通の細長型で、おそらくブラックビューティを自然菜園で採種した種だと思われる。自然菜園はAZUMINO自然農スクールの竹内孝功さんが営まれている菜園で、自然農法で野菜を作っている。自然農法で採種された種ならすぐにうちの畑に馴染んでくれると思う。

 種まきは10.5cmポットに直接した。通常五日もあれば発芽しても良いが、種まきから数日気温が低い日が続いたため、なかなか発芽せずに一週間経ってからようやく発芽した。ウリ科の野菜は生育が早く一ヶ月で定植できる苗になる。

 既に本葉が一枚出て、背丈もぐっと大きくなってきた。順調にいけば五月二十日頃には定植できる予定だ。

220508 播種20日目のズッキーニ
割りばしで仮支柱を作った

 ズッキーニはうちの育苗方法だと徒長しやすく、強い風が吹くとかなり揺さぶられてしまう。小さい時に過度のストレスになると思い、割りばしを株元にさして麻ひもで誘引してみた。風が吹いても揺さぶられることが無くなり、元気に育っている。
 この支柱に結びつけるのは道法正徳さんの提唱する「垂直仕立て栽培」を参考にしてみた。これについては今度詳しく記事を書いてみようと思うが、自然栽培で真価を発揮する栽培法で科学的にも理に適っているので今年から挑戦してみたいと思う。主にインスタグラムで栽培の様子を発信していくつもりだ(→インスタグラムアカウント 百姓日記)。

畑の土でも問題なく育苗できる!

 今年、初めて畑の土、しかも定植予定の畝から採取した土を使って育苗に挑戦しているが、今のところどの野菜も順調に育ってくれている。もちろん、肥料分に乏しい自然農の土に合う品種をなるべく選んでいるので、その影響もあると思うが、十分実用レベルだ。

 一つ難点を挙げるとすれば、どうしても草の種が入っているので育苗途中に発芽してしまうことだ。普通、自然農では草を敵としないがポットという土の量が限られている環境では草に栄養をとられてしまうので取り除く必要がある。これが少し手間ではある。

220426 草が生えた育苗ポット
草が生えてしまう

 あと少しで植え付けシーズンとなる。気を抜かず管理していきたい。

【自然農】寒冷地でのオクラ栽培。直播か育苗かどっちがいい?

オクラは高温性の野菜です

 ねばねばで健康的なイメージがあるオクラは、疲労回復に効果的でビタミンも多く含む人気の野菜。オクラのねばねばは食物繊維であるペクチンで、身体の中で水分を吸収し、排便を促す機能がある。真夏の暑い時期に刻んだオクラとおかかでご飯がもりもり食べられるのでわたしたちもかなり好きな野菜だ。

 新しい品種が毎年のように出ていて、市場も活発。定番の五角オクラや長くなっても柔らかい丸オクラや赤オクラ、白オクラなど種類がとても豊富。家庭菜園でも人気で、スーパーにはあまり売っていない品種を育てている人も多いだろう。

 そんな人気なオクラはアフリカ原産の野菜。そのため、高温を好み、最適温度は25-30度と高く、真夏の高温と強い日差しに耐える。
 一方で10度以下の低温では成長が止まり、霜に当たると枯れてしまう。よって、寒冷地に被る長野県ではかなり栽培期間が短くなる。遅霜の心配がなくなる五月中下旬でやっと種まきが出来る。生育初期に低温に当たりやすく、播き時がシビアといえる。

 私たちもビニールマルチを使用した一昨年は密植栽培でそれなりの収穫に恵まれた(→オクラの密植栽培)が、昨年はほとんど育たなかった。原因は発芽後の低温とモグラの生活道による根の痛みだと考えている。特にマルチを使用しないのに、五月中旬に種まきしたのが良くなかった。

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 オクラは手が掛からず、それなりの収穫を見込める野菜なので今年もチャレンジする予定だ。今回は昨年の失敗を踏まえて、少し工夫してみるつもりなので、それを紹介しようと思う。

育苗で生育期間を稼ぐのが一般的だけど……

 オクラのような典型的な夏野菜は育苗することで早播きして、生育期間を長くとるのが一般的だ。トマトやナス、きゅうりなどではどの地域でも取り入れられている技術だ。

 オクラの場合も、苗の状態で一ケ月くらい育ててから植え付ければ早くから収穫出来ると考えるのは当然だろう。だが、オクラは植え替えを非常に嫌う。というのも、オクラは主根が一本伸びていく直根作物だ。この手の野菜は大根やニンジンと同じで移植で根が傷みやすい。一度痛んでしまうと致命傷になってその後の生育が悪くなるため、注意が必要だ。
 育苗期間はなるべく短い方が良いため、二週間ほど育苗したら植え付けとする。長くとも三週間で植えてしまいたい。

 セルトレイなどの深さがない容器で育苗すると、すぐに根が出てしまい痛んでしまうため、大き目のポットで育苗する。今回は10.5cmポットを使ってみるつもりだ。

 種まきは五月十五日前後ごろを予定している。発芽後、様子を見ながら根が下から出ないうちに定植する。6月頭には植えてしまいたいところだ。

地温が足りない直播は、もみ殻燻炭で保温

 育苗がだめなら直播で、といきたいところだが寒冷地の長野県でビニールマルチも使わないとなると、六月に入って十分な地温が確保できてからになる。五月中でもなんとか発芽まではできるだろうが、その後に低温(10度以下)が何度か来るとかなり根が傷む。生育初期のアブラムシ被害も深刻のため、なるべく遅まきで健康に育てるのがセオリーだ。
 オクラは種まきから約二カ月かかって収穫となるため、このあたりでは八月に入り梅雨が明けてから収穫が始まり、十月半ばまでの二ヶ月ほど採れることになる。

 マルチは不耕起栽培では取り入れにくいが、トンネル栽培ならやりやすい。トンネル栽培は撤去後も支柱を誘引用に利用できるためかなり有効な手段だろう。

 今回は資材はほぼ使わない。一つだけ、もみ殻燻炭を株元に敷き詰めて地温の上昇効果を期待する。もみ殻燻炭はもみ殻を炭化させたもので、主に土壌改良に使われる資材だ。今年は市販のもみ殻燻炭を購入したが、もみがらの入手ができれば自分で作ることも簡単にできる。

 もみ殻燻炭は黒いため、黒いビニールマルチと同じで太陽光を吸収し地温を上昇させてくれるのではないか期待している。さらにもみ殻燻炭はアブラムシの忌避効果もあるらしい。アブラムシはオクラの生育初期に大きなダメージを与えるのでこれを回避できるなら一石二鳥だ。

 昨年は種まきを五月中旬にしてしまい、発芽後に温度が足りずに弱ってしまった。そのため、今年は六月に入ってから畑に種まきをする予定だ。

どちらの方法が寒冷地でのオクラ栽培に合っているのか検証します

 今年は寒冷地でオクラを栽培する上で育苗・直播のどちらが良いか検証して行く。

 6月に入ってから直播する場合と5月上旬に育苗する場合で約三週間の差がある。この差が移植を嫌うオクラでどのくらい埋まるのか気になる所だ。もみ殻燻炭による地温上昇、アブラムシ忌避の効果も楽しみだ。

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八月中旬頃のオクラの様子

 今年わたしたちが栽培するオクラは、エメラルドとダビデの星だ。エメラルドは一昨年自家採種した種(→オクラの自家採種はとても簡単)と今年新たに購入した種を使用する。ダビデの星は自家採種に至らなかったため、購入した種を使う。

 オクラは自家採種しやすいため、二品種とも自家採種したい。オクラは虫によって簡単に交雑するため、圃場を分けて栽培する予定だ。オクラの自家採種については、採種株の選定、採種果をつけるタイミング、保存方法について詳しくまとめてみようと思う。狭い畑で二品種以上を自家採種する際に交雑を防ぐ方法も紹介したい。

【自然農】2021年のミニトマトが全然できなかった理由とその対策【不耕起・無肥料】

上手くいかなかった原因を考察する

 昨年のミニトマト栽培はロッソナポリタン(パイオニアエコサイエンス)を栽培し、かなり豊作だった。次々と開花し、霜の降る10月下旬まで収穫が続いた。背丈は2m近くまで伸び、緑のカーテンのようになっていた。収穫終了間際に自家採種も行った。

 今年はロッソナポリタンの自家採種1代目の種を使用した(→2020年の自家採種はこちら)さらに育苗の手間を減らした栽培を目指した。栽培方法を自然農に切り替えたこともあって、肥料は前年から一切加えていない。耕すこともせず、伸びた草を畝上に刈っては敷くことを繰り返した。
 育苗は4月上旬から35日程度で、本葉3枚ほどで仕上げる予定だった。標準では約60日間、第一花房が付き始めるころまで育苗するのでかなりの若苗になる。畑に定植したのが5月20日前後の十分に気温が上昇してからだったが、その後の成長がよくなかった。不耕起による弊害でモグラの巣穴で根が伸びず、成長が止まってしまった株も多く見られた。

育苗の失敗した点

 今回の栽培において、失敗に終わった大きな原因は育苗にあると考えている。そのうちの一つは苗が小さすぎた(成長ステージが手前過ぎた)こと。もう一つは育苗土の肥料分が多く、圃場の栄養分が少なかったこと。この二つがお互いに影響し合ったのではないか。

 育苗土はタキイの種まき用土を使ってみた。肥効が長く、保水力が高いとのことだった。本来であれば、育苗土も自前で用意したいのだが、準備するのに時間が掛かるため、市販の土を使用した。
 この土はNPK=600,1200,570(mg/l)で肥効が30-40日の長期肥効型の種まき培土だ。肥料分が多く、長い期間育苗できる。これを50穴セルトレイに詰めて使用した。発芽は良く、順調に生育していた。

21051 発芽はばっちり


 育苗を終え、畑に定植したのが5月20日ごろだった。その後活着は早かったものの、成長が遅く、50株植えてまともに収穫できたのは3株ほどしかなかった。
 これは育苗土には十分すぎる肥料が含まれていた一方、定植後の畑の土にはほとんど肥料分がなく、その環境変化に対応出来なかったのではないかと考えている。私たちの圃場は前述の通り、施肥を二年間していない。雑草の生え方もそこまで旺盛ではなく、地力は低めだった。
 植物にはその時の環境に合わせて、伸ばす根を変えているという話しを聞いたことがある。肥料たっぷりの育苗土で過保護気味に育てられた苗は、自然農的な土の厳しい環境に適応できなかったのだと思う。

 また省力化を考えて50穴のセルトレイを使った。これが苗が大きく育たなかった原因ではないかと考えている。セルトレイだと普通の大きさのポットと比べて、土の量が少なくなる。すると根が伸びる空間も狭くなってしまう。
 根が伸びないと地上部は大きくならないので、小ぶりの苗になってしまった。小さい苗の方が根付きが良いのでは、と考えたが光合成量が少なく、根も少ないためその後に成長スピードが著しく落ちたのだろう。

来年の育苗での改善点

 失敗した結果と原因を踏まえ、育苗は次のように行うことにした。

 育苗に使う土は市販の培養土ではなくて、実際に定植する畑の土をそのまま使用する。雑草の種が含まれているため、育苗中に生えてきたものは適宜除去する。もし、手間が掛かり過ぎるようなら高熱処理などをして雑草の種を除去することも考えるが、今回はそのまま使用してみる。
 こうすることで育苗と定植後の環境変化が最小限に抑えられるし、元々肥料分に乏しい土で育苗する事で、栄養を吸収する力が強い根が育つではないかと考えている。

 また容器を大きい物に変更する。今回は50穴セルトレイ(1穴約80ml)を使用したが、12cmポリポット(約800ml)にする。こうすることで土の容量が10倍近く増える。土に含まれる栄養が少ないので絶対量を大きくして、育苗に必要な栄養素を確保しようという考えだ。土は植える場所のものをそのまま使うので足りなくなることは無い。
 根が伸びる空間を大きくなるのでたくさんの根が伸びた良い苗になるのではないかと期待している。

 育苗と定植後の環境をなるべく近づけることで定植によるダメージを少なくすることに重きを置いた。特に育苗土を圃場そのものの土を使用することは、良い結果になると思っているので楽しみだ。

 育苗は引き続き室内で日当たりの良い部屋を使って育苗することになる。夜間はストーブや電気毛布を利用して、地温を確保する必要があるため少々温度管理が難しい。十分な土地が確保できれば踏み込み温床を使ってビニールハウスでの育苗にも挑戦したい。

育苗は寒冷地では必須の技術。栽培の良しあしを大きく左右する。

 寒冷地はもちろん、温暖地でもトマトやナスのような発芽・生育に高温を必要とする野菜の栽培には育苗が必ずと言っていいほど必要になる。自然のあるがままに、を目指す自然農で育苗するのは反自然になるかもしれないが、真夏に良く育つ野菜はやはり夏に食べたいところ。すべてが全て、自然でなくてもいいんじゃないかと思うので、育苗はやってもいいんじゃないかと思う。

 「苗半作」という言葉があるほど、野菜作りにおいて苗作りは重要なポイントだ。急激な気候変動や、病害虫の蔓延といった環境変化に柔軟に対応できる苗作りを目指して、これから色々と試してみようと思っている。

 また、育苗に頼らない、夏野菜の栽培法がこれならできる! 自家採種コツのコツ: 失敗しないポイントと手順(農文協)に紹介されていた。「自然生え(じねんばえ)選抜法」という方法で、栽培が終わった後、完熟の果実をそのまま土に埋めて。春になって一斉生えてくる芽の中で強いものを選抜して育てていく。元々は育種法の技術だが、これでしっかりと収穫できれば、育苗に頼らない、より環境適応力の高い栽培法になると思う。さらに自家採種の手間を省くことが出来る。
 昨年の秋に完熟トマトを数個、地面に埋めてあるので、その経過も観察していく。また食用ホオズキも同じように土に埋めてある。