不耕起の畑での畝立ては数年に一回の大仕事
畝は野菜を作付ける場所に土を盛った一段高い場所である。畑の環境をなるべく育てる野菜が好む環境に近づけるために、土を動かすことで環境をコントロールする。
高さが出ることで水捌けが良くなったり、日当たりを改善できる。水捌けの悪い畑でも、加湿を嫌う野菜を育てるために一般的に取り入れられる技術だ。また野菜が根を伸ばせる深さを深く出来るので生育も良くなる。
普通の畝作りは、まず土を耕すことから始まる。トラクターや耕耘機、鍬などを使って、土を耕す。すると一面真っ平でふかふかな土になる。そして、畝立て用のアタッチメントを取り付けた耕耘機や鍬などで掘り上げて畝にする。高さや幅は作付する作物や作業によって最適なサイズに変えていく。
さらに立てた畝に、雑草防止や保湿、保温のためにビニールマルチを張ることも良くある。畝立てと同時にマルチを貼っていくこともできる機械もあり、大規模に農業をするなら必須の作業となっている場合がほとんどである。
一方、私たちが取り組んでいる自然農的栽培ではなるべく土を耕さないことにしている。土を耕すことで得られるメリットとデメリット、耕さないで得られるメリット・デメリットを考えて、耕さない方を取った。
もちろん自然農でも畝を立てることは有効な手段だ。畝を立てることは水はけが良くなることや、日当りをよくすること以外にもいろいろな意味、目的があると思うがそれはまた別の機会にまとめようと思う。
自然農や不耕起栽培では一度立てた畝を毎年作り直すことはしない。普通、同じ畝を数年繰り返し使う。使っているうちに形が崩れてきたりするので都度直しながら使う。つまり、不耕起だと畝を作る作業は数年に一回で済み、かなりの省力化につながる。
今回は自然農、不耕起栽培での畝の作り方について紹介しようと思う。畝作りはかなりの重労働で、一般的な畝立てよりも時間が掛かるので段取りが大事になる。
畝立てに使う道具
自然農での畝立てに使うのは次の道具だけでいい。あとはそれを使う自分自身の体力が必要になってくる。
・草刈機
生えている草を刈ってからの方が作業しやすい
・剣先スコップ
地面に切り込みを入れ、土を畝上にあげるため
・鍬
みぞに残った土をすくい上げる用
・(あれば)レーキ
畝上の土を均す
これだけあれば十分畝立て出来る。小さい畝なら、草刈機がなくても手鎌で十分出る。
①草をかり、畝を立てる場所をひもで区切る
自然農、不耕起の畝立てはまず草を刈ることから始まる。耕していない土の表面には草が生えていたり、枯れた草が層になって残っている。草が生えたままだと、次の作業がやりにくくなったり、畝が出来た後の作付にも悪影響が出ることがあるので丁寧に刈る。
未分解の草(有機物)を土の中に埋めると分解時にガスが湧いて、植物の根を痛めてしまう。そのため、なるべく生えている草が残らない様に地際で刈っていく。
刈った草は地面に溜まっている枯草と一緒に熊手やレーキで予定地の外によけておく。こうして畝を作りたい場所の土をむき出しにする。このとき、作りたい畝の幅より若干広く開けておくと、次の作業がしやすくなる。
次に立てる畝の大きさに沿って、ひもを張る。こうすることで綺麗に真っ直ぐな畝を立てることができる。慣れないうちは面倒でも、ひもを張ることをおすすめする。ひもに沿って真っすぐに畝を立てておくと、その後の草刈りや植え付けの際も楽になる。
通路部分の土を掘り上げて、畝上に盛る
畝の形通りに紐が張れたら、次はその紐に沿って切り込みを入れていく。紐なしでこのライン付けをすると、ほぼ確実に曲がってしまう。ぐるりと切り込みが入ったら、今度はスコップ一本分あけて、平行に切り込みを入れていく。こうすることできれいに土を掘り上げていくことが出来る。特に耕していない場合、草の根が邪魔することがあるので必ず切り込みを入れる。
次は二本の切り込みの間の部分の土を内側に掘り上げていく。掘りとった部分の地面は下がり、畝に土が盛られていく。土を掘り取ったところが畝間となるため、ひろい畝間にしたい場合は切り込みの幅を変える。
同じ畝を横に作ると、畝間が倍の幅に広がるためそれを考慮に入れておく。一般的な剣先スコップの幅は20cmなので畝間は40cmとなる。基本的にはこれで十分な広さが確保できる。
また切り込みの深さで掘り取れる深さがほぼ決まる。スコップの面は高さ30cmなので垂直に突き刺して掘るとかなりの深さになる。水はけの良し悪しによって変えていくが、実際の畑の様子や経験を頼りにする。
少しずつ畝の高さは低くなっていくため、若干高く感じても数年使っていくうちに丁度良くなるだろう。
次に畝上に上げた土をほぐしながら、かまぼこ型に整えていく。取り立てて注意することは無い。なるべく草が埋まらないにしたいが、完全には不可能だ。
土の塊もある位程度ほぐしてあれば十分だ。これも草が生えて、野菜を作付けする過程で次第に馴染んでいく。
北側から南側に向けて少しだけ傾斜をつければ日照が少し良くなるだろう。水はけが特に悪い場所があれば、意識してそこを高めにして傾斜を付けた畝にするともっと良いのかもしれない。
これで畝立ての完了だ。少し時間がかかるが、これから数年はこの作業をする必要はない。作付する前後に少し畝の形を整えるだけでいい。
なかなか大変な作業だが、直に土に触れ、自らの力で土を動かし野菜が育つ場所を作り上げる。幸せな時間だと思う。どんな草が生えているか、土の香りや湿り気、手触りなど五感をフルに使って畑の様子を感じ取る。それが今後の野菜作りの参考になるのだと思う。
畝を使うのは最低3週間寝かせてから。
畝を立てたら、なるべく裸のままにしない方が良い。雨が降ったり風が吹いたりすると、表面の土が流れてしまうからだ。最初によけておいた刈り草などでしっかりと被覆しておく。
すると微生物が少しずつ分解してくれて畝がどんどん豊かになっていく。草が生えたら一本残らず抜くのではなくて刈り取って、そのまま敷いておく。その繰り返しで土を作っていく。
畝を立ててから野菜を植え付けるまで最低でも3週間は寝かせた方が良い。というのも、畝立ての最中にどうしても刈り草などの有機物が土にすき込まれてしまうからだ。前述の通り、有機物が土の中で分解されるときには熱とガスが出る。これによって、作物が傷んでしまうので必ず時間を空けてから野菜を作り始める。
夏の暑い時期なら三週間ほどで害がなくなるだろう。まだ春先で寒い時期に立てた畝は3カ月ほど置いた方が良いと思う。それだけ時間を置けば、畝上には草がびっしり生えてくるはずだ。そうなれば間違いなく、未分解の有機物による害はない。
また、立てたばかりの畝にいきなり野菜の種をまくと、瞬く間に雑草に紛れてしまう。そこで時間を置いて一度雑草を発芽させてしまう。それを刈り払ってから野菜を播けば、ある程度草管理がしやすくなるだろう。(去年立てたばかりの畝にラディッシュの種を播いたら、雑草に紛れて見分けがつかなくなった)
「【自然農】不耕起畑での畝の立て方 必要な道具と手順【不耕起栽培】」への1件のフィードバック