【自然農】生育初期に草に埋もれないための整地・種まき方法【不耕起】

夏播きの秋冬野菜は草に負けやすい

 毎日のように30℃近くまで気温が上がり、照り付ける日差しでしなびそうになりながら、畑に向かっている。というのも夏野菜は今がまさに最盛期。最も生育に適した気候だろう。うちの夏野菜はまだ収穫が始まっていないものも多いが、後1週間ほどもすればどんどん穫れだしてくる。

7月23日の畑の様子

 春先、寒いうちから準備していた野菜たちの収穫で食卓が豊かになる一方、既に秋冬野菜のことを考えければいけない季節だ。中でも成長の比較的ゆっくりな人参やビーツなどのアブラナ科ではない根菜類はできれば7月中、遅くとも8月半ばには播いておかないと、寒さの厳しい長野県では大きくなりきれない。

 夏播き栽培で問題となってくるのは①梅雨明け後の晴天続きで乾燥しやすいこと、②虫の活動が活発なこと、③草の勢いが強いことだ。
 ①の乾燥は畑のそばで水が取れれば潅水をすることで対応できる。不織布などの被覆材を活用する手もある。②の虫害はある程度はどうしようもない部分がある。無理な早播きはしない(盆すぎから気温は落ち着く傾向にある)、虫害の発生しにくい土作りをするしかない。

 労力的に困るのは③の草だ。にんじんやビーツは発芽までに1週間以上かかる事もあり、発芽が揃った頃には雑草の芽もびっしり、ということになる。しかも、初期生育が遅いのに、草は今が全盛期なためあっという間に草に飲まれる。そもそも、雑草というのはその土地に何十年もいて、その土壌に合ったものが生えてくるため、最も生命力が高い植物たちだ。
 暑い中、小さな草を一つ一つ抜いていくのは大変な労力がかかる。他にもやらなければいけないことが多い真夏にはなかなか大変だ。

 農業は草との闘いの歴史だ。いかに草に負けないように管理するかが、出来にも大きくかかわってくる。除草剤が開発され、今や100円ショップでさえ簡単に手に入るのはその結果だろう。
 また、耕すことの大きな目的は草の成長を抑えることだ。農業は耕す事で一気に効率的に食べ物を栽培することが出来るようになった。除草剤や耕耘機の登場は食糧生産に大きな影響を与えたことは間違いないだろう。

 しかし私たちはなるべく、石油資源を使って耕耘することや土壌の多様性に大きな影響を与える除草剤を使わずに栽培したい。そこで夏の種まきをするときにどのようにして生育初期の草を抑えるかに焦点をおいて、種まき方法を考えた。

けずっ太郎で初期除草できるような種まき方法

けずっ太郎で初期除草はかなり効果的

 けずっ太郎とは私が愛用している「土を動かさずに草を根元で切る」除草鎌だ。株式会社ドウカンが開発・販売している農具(→ホームページはこちら)で、刃幅が何種類かラインナップされている。

けずっ太郎スリム 刃幅7cm

 けずっ太郎は草が発芽した直後にかけると一気に一掃できる。今年、大豆の株間をこれで初期除草したが、播種後に二回一週間おきにかけただけで一度も除草することなくここまで大きくなった。

けずっ太郎で初期除草
株間はほとんど草が生えていない

 人参や大根でも、株元ギリギリまで除草できるスリムサイズを新たに購入したため、今年は初期除草を徹底するつもりだ。株元は間引きついでにちょこちょこと草取りすればいい状態にすれば、作業もかなり省力化できる。

不耕起でもけずっ太郎を使えるように整地する

 この種まきの最重要ポイントはこの整地作業にある。

 通常、不耕起だと種まきの前は畝上には草が生えており、地面は見えないくらいになっている。これではけずっ太郎はおろか、種まきすらできない。そこでいかに土を攪拌することなく、植えるスペースを確保するかが作業性、効率を大きく左右する。

整地前の畝 草を生やしてある

 まずは畝上の草を草刈機でざっと刈る。長すぎる場合は50cmで一度刈ってしまう二度刈りにすると刈り草の扱いが楽になる。刈り草は重要な資材になる。

ざっと草刈り、一度刈り草を退かした

 刈った草は一度レーキで綺麗に畝間に落として行く。できるだけ丁寧にやっておくと後が楽だ。
 次に残っている切り株を草刈機の刃を少し地面に潜り込ませるようにして綺麗に刈り払う。畝の中央から外側に振り落とす様に、二回に分けて刈ると簡単だ。

深刈りした後 草はほとんど残っていない

 あとはレーキで地面の凸凹を均しながら、それでも残っている切り株や太い根があれば抜いてしまう。レーキは爪を深く差し過ぎない(耕さない)ように浅く、表面をなでるように。

 これで種まき準備完了だ。でも、すぐには種を播かない。この状態で数日置いておくことで、表層の草を発芽させるためだ。畝間に落とした草を畝の上に戻し、被覆しておく。できればやっておきたいが、面倒ならそのまま置いておいても多分大丈夫だ。

種まき当日の作業

 種まき当日まで約10日前後、日を空けることで畝に草が生え始める。
 畝上には前に刈り敷いた枯草が載っているため、レーキで丁寧に畝間に落とす。大きな根が残っている場合はのこぎり鎌で根元から切り取る。そしてけずっ太郎で表面を均すように草をかき取る。これで種まき準備完了だ。

10日後 深刈りした場所
深刈りしなかった場所

 写真を見比べると、生えている草の大きさが違うのが分かるだろう。このくらい小さければ、けずっ太郎で簡単に一掃できる。

 こうすることで種を播く前にある程度の草の種を減らすことができる。けずっ太郎は大きく土を耕さないため、下から新たに上がってくる種も少ない。表層から2,3cmを浅耕することでまさにこれから発芽しようとしている種の出鼻をくじくことにもなる。

 種まきは出来るだけ真っ直ぐに播くのが大切だ。発芽後の管理は真っ直ぐに苗が並んでいると効率が上がる。けずっ太郎で小さな芽の脇をなるべく際まで除草する時に真っ直ぐ並んでいないと非常にやりづらい。
 また筋蒔きで2条、3条と複数列播く場合は条の間隔をきっちり揃えておかないと条間に刃が入らず草だらけになるので注意が必要だ。

発芽が揃ってからの作業

 人参やビーツ、玉ねぎであれば7~10日で発芽揃う。大根やかぶ、小松菜などのアブラナ科は3~4日で発芽が揃う。

 芽が出そろったら、けずっ太郎の出番だ。発芽した苗と一緒にたくさんの小さな草の芽があるはずなので、それをかき取る。野菜の芽を抜かない様に気を付ける。
 大体1週間すると草の芽を出てくるので①種まき日から1週間後、②それからさらに1週間後、の二回立て続けに除草すると、条間にはほとんど草が生えて来なくなる。播種から2週間経つと、丁度間引きのタイミングになるので株元の草も取りながら間引いていく。

秋冬野菜第1弾は成長がゆっくりなビーツ

 この方法で早速、ビーツの種まきをした。ビーツはわたしたちも食べたい野菜の一つで、毎年挑戦しているがなかなか大きくなりきらずに冬になってしまう。

 毎年8月中旬に種まきをしているが、これだと大きくならなかった。養分不足や酸度が最適ではない(ビーツは酸性の土壌を好まない)など他にも要因は考えられるが、今年は一番改善するのが簡単な早播きにすることにした。
 ビーツの生育最適温度は15~20度で、これ以下になると、玉の肥大が鈍ると考えられる。通常、ビーツの生育期間は60~75日なので、最高気温が20度を割り込む日から60日遡って種まきをすれば、良く肥大してくれるのではないかと思っている。
 今年栽培している「デトロイトダークレッド」の栽培適期表からも冷涼地は6月中に種まきすることとなっているため、これでも遅いのかもしれない。

 今回紹介した方法で整地した畝に種まきした。5mの畝に3条、株間は15cmなので約100個分の種まきをした。どのくらい育ってくれるか楽しみだ

ビーツの種まき

 写真で筋状に茶色の被覆が見える。これは自分で仕込んだ落ち葉堆肥だ。もう2年間放置してあった堆肥を篩で枝やまだ未分解の落ち葉を除いた。乾燥防止の被覆材変わりになればと思って使ってみた。刈り草を掛けておいても良いのだが、この後の除草作業の邪魔になるのでできれば避けたいので代わりに落ち葉堆肥を使ってみた。

マルチ際の除草作業を軽減!/藁敷

 今日はマルチ際に防草効果を期待して、藁を敷き詰めてきました。

 私たちはできるだけ雑草を生やしたままにし、生物多様性を維持した栽培をしようと考えています。なので、畝間の雑草は、作物の背丈を超えない範囲で除草していくことにしています。

 しかし、マルチ際は手で除草するしかなく、万が一大きくしてしまったり、びっしりと草を生やしてしまうとマルチ回収が面倒になってしまいます。そこで有機物である藁をマルチ際に敷き詰めて、防草シートの代わりにしようと考えました。

 米を栽培している知り合いの方から、余っている藁束を大量にいただいてきました。これを、地面が見えないように均等に敷き詰めました。

 風は吹くと飛んでしまいそうだったので、ピンを差して、紐を通し固定しました。

 これで夏場の除草作業が多少は楽になるのではないかと思います。裸の地面が減るので、土がしまっていくのを防ぐことにもなります、さらに、秋の最後の最後まで敷いておくのである程度分解が進んだ状態で、土に鋤き込まれることになります。少しではありますが、有機物の投入になるかと思います。

 

 今後はアカザなどの背丈が高くなる雑草を早め早めに処理しつつ、地面を覆ってくれる雑草を大事に増やしていきたいと思います。