時代に逆行する自然卵養鶏を志したわけ

 私たちは兼ねてから自然卵養鶏を暮らしの中に取り入れていきたいと考えてきた。自給自足を目指すうえで卵と肉を自給できる養鶏は魅力的だと思ったからだ。その中でも、現代では僅かとなった自然卵養鶏を知った。自然卵養鶏は、数でこそ少ないが全国的に実践者がおり、ノウハウが蓄積されている。
 自然卵養鶏には自然豊かな土地が必要で、丁度私たちの理想の暮らしを送れる場所に合致していた。

 自然卵養鶏と自然農を思う存分できる場所を探して、ここ二年間ほど定住する土地を探して来た。最近になって、岩手県で知り合った方から畑や家を紹介して頂き、移住することを決めた。いよいよ自然卵養鶏を本格的にスタートさせることができる。
 そこで改めて、自然卵養鶏について紹介し、自分自身の中でも整理をしようと思う。なお、自然卵養鶏は創始者である中島正さんが著した『自然卵養鶏法』を以前紹介したことがある。今回の記事で興味を持った方はぜひ読んでみてほしい。

生産性、安全性ともに優れた現代の採卵養鶏

 卵は価格の優等生と言われ、多少の値上がりはあれど、長い間安定した価格で推移している。三重県のホームページに掲載されていた統計情報によると、卵1kg当りの価格は昭和40年で219円、平成25年で340円とたった120円しか上がっていない。これ他の物品と比べてもはるかに少ない上り幅だ。例えば牛肉は約3倍、映画観覧料は約9倍になっている。
【Hello!とうけい】vol202 「卵は物価の優等生?」

 その背景には養鶏業界の努力と技術開発がある。機械による給餌管理や衛生的な飼育管理や大容量の鶏舎、経営努力など、様々な要因がある。機械化による大規模、効率化は進み、一人あたり十万羽の鶏の管理をする養鶏場も少なくない。その結果、日本の養鶏業界は世界的にも高品質な鶏卵を安定的に生産している。卵を生食するのは日本くらい、というのは良く耳にするだろう。それは日本の卵がいかに衛生的に管理されているかを表している。

 一方で世界的にアニマルウェルフェアが重視され始め、現状使われているバタリーケージによる飼育を改善しようという動きがあったり、また輸入に頼る飼料価格の高騰など日本の養鶏は転換期を迎えているのもまた事実だろう。価格の優等生と言われてきた卵もいよいよ価格高騰の時代になってきたと言える。

現代とはすべて真逆の自然卵養鶏

 自然卵養鶏とは中島正さんが実践していた養鶏法だ。『自然卵養鶏法』が書かれたのは1980年(昭和55年)で、今から40年も前のことだ。その当時は既に養鶏は大規模化、効率化の道を進んでおり、価格の優等生として安定供給されていた。

 中島さんはそのような大規模、生産的な養鶏を企業養鶏と称し、自身の自然卵養鶏との対比を説きながら、その養鶏法を紹介している。

 自然卵養鶏は当時、そして今も行われている企業養鶏とすべてが正反対のことをする養鶏法だ。40年たった今でも、それは変わらず自然卵養鶏の特徴だ。

 大きな違いは餌だ。数万羽単位での養鶏を行うには、大量の餌を確保するために外国からの輸入に頼らないといけない。食糧増産も限界を迎えていると言われている中、輸入飼料に頼らざるを得ない状況は改善していかなくてはならない。
 自然卵養鶏ではどんなに多くとも、1000羽程度の小規模養鶏を基本としている。小規模だからこそ、餌も地元の飼料や残渣を活用できるようになる。豆腐作りで出るおからや、精米の時に出るぬかやもみがらなどのあまり使われていない資源を上手く活用することで、その地域の中で循環する養鶏が出来る。
 また緑餌といって、青草をたくさん与えるのも自然卵養鶏の特徴だ。本来鶏は草を食べる生き物だ。草を食べさせることで鶏本来の食欲を満たし、病原菌への免疫を向上させたり、精神的にも満足させることが出来る。しかし、企業養鶏では草を与えることは無い。

 この真逆の養鶏法こそが、健康で美味しい卵を産みだしてくれる。一般的には考えられなような管理かもしれないが、全国で実践者が居ることは、この養鶏法が間違っていないことを証明している。

本当においしい卵

 自然卵養鶏を着実に実践して生み出された卵は本当においしい。まず、生臭みがない。市販の卵は生で食べると、生臭いことがある。何なら薬品臭がすることもある。

 だが、自然卵は無臭だ。生のまま口に入れても香りはしない。そして、純粋に卵の味がする。これが本来の卵の味なのかと気づく。卵の味がするというのが感動するほど、今の卵は味がしないということだと思う。

 私は平成の生まれなので、現代的な卵しか知らない。年配の方々に自然卵養鶏の話しをすると、口をそろえて「昔の卵は味がよかった」という。でも今ではその味をもつ卵を手に入れるのは難しくなったと言う。そういう卵があれば多少高くても買うとも言っていた。

 信じられない人はぜひインターネットで「自然卵養鶏」と検索してみてほしい。たくさんの自然卵養鶏農家のホームページがある。多くの農家はオンラインで注文できるため、だまされたと思って買ってみて欲しい。きっとわかってもらえると思う。
 おすすめは中島正さんのお孫さんと、その旦那さんが販売している「のびのびたまご」だ。

自然と調和した暮らしを送るなら自然卵養鶏ではないか

 自然卵養鶏は1年を通じて、安定した量の卵を生産する事は出来ない。鶏は寒い冬や真夏の暑い時期は卵を産まなくなるからだ。自然のサイクルに合わせると、鶏が勝手に自分の産卵をコントロールするようになる。一方、通常の養鶏ではそういうわけにはいかない。年中安定供給を実現するために、空調での温度管理をしなければならなくなる。

 鶏舎は窓がない、自然から隔離された空間ではなく、地面が土間で開放型の平飼い鶏舎を用意する。太陽光が当たることが人間の健康に重要であるのと同じように、鶏も太陽が当たる環境を用意することで健康に過ごす事が出来る。

 鶏をなるべく自然の中で飼おうとすると、自分達も自然の中で暮らす事になる。自然と鶏のリズムに人間のリズムを合わせる。それは普通に町で暮らす人には出来ないことだ。そんな自然と調和した暮らしはもはや、贅沢な暮らしになるのではないだろうか。お金では買えない価値がそこにあると思っている。

2023年の導入を目指しています

 今の予定では岩手県に4月から移住する事になっている。借りられる土地は数年間耕作されておらず、少々荒れているため整備から始める。家の目の前にまとまった土地が3反歩ほどあり、どこに鶏小屋を建てるか、畑を作るか、探り探りになるだろう。

 5月には鶏小屋を建て始め、様子を見て年内の導入を考えたいと思う。雛の導入は3~8月に行うのが適切とされているため、遅くとも8月には最初の雛を迎えられるように準備したいと思う。

年々いやな雑草ばかり生えてくるようになる理由

 雑草は野菜作りをする上で避けては通れません。現代農業では雑草は厄介者扱いで、除草剤や耕起によってコントロールしようとします。しかし、雑草は見方を変えると健康な野菜作りに非常に有用な資材に変わります。(この話はまた今度したいと思っています)

 基本的には厄介者の雑草ですが、年々生えてくる雑草が変わっていくという現象があるようです。本やインターネットでも、このような報告をされている方が多く見られます。なぜ、生えてくる雑草が変わっていくのか、私なりの仮説があるのでそれをご紹介します。

雑草ってそもそも何?

 雑草と一まとめに語られますが、雑草という植物は存在しません。畑では何か育てたい、メインの植物(トマト、ジャガイモ、など)が作物として「栽培」され、ほかの植物はできればいないほうがいい、どうでもいい植物です。つまり、育てている植物以外を「雑草」としているわけですね。

 具体的にどんな植物が雑草として扱われることが多いのでしょうか。

 たとえば、背丈が100cm以上にもなり木のようになる「アカザ」や、びっしりと根を張る「メヒシバ」、夏にかけて一気に勢力を広げる「スベリヒユ」などは嫌われる雑草として知られています。

 春先に良く見られる「ホトケノザ」、「カラスノエンドウ」などは畑の肥沃さを推測する指標にもなる雑草です。

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ホトケノザ

 道端に生えている「タンポポ」や小さな花がかわいい「オオイヌノフグリ」などももちろん雑草になります。

 前年栽培していたミニトマトが、翌年植えつけていないのに生えてきた「自然生え」ミニトマトは、雑草として扱われます。

嫌われ者の雑草

 とにかく雑草はみんなの嫌われ者です。毎日ちゃんと畑に出ているおじいちゃん、おばあちゃんの畑には雑草のざの字も見えないほど徹底的に抜き取られていることもあります。

 生業として農業をされている農家さんにとっても、雑草は厄介です。暑い真夏に雑草取りをしている姿もよく見られます。作業がどうしても追いつかなくて、除草剤をまいて枯らしていることもあるでしょう。

 なぜ雑草がここまで嫌われるかというと、本来育てたい野菜の生育を邪魔するからです。雑草の生長は早く、ほうっておくと雑草のほうが大きくなってしまった、なんてこともよくあります。いつの間にか雑草に負けて野菜が日陰でくすぶっていることがあります。

 しかも、抜きにくかったり種をいっぱいつけて、抜いても抜いても生えてくる、何年も生え続けます。

 草取りは肉体的にもつらい作業で、いやになってしまうことも多いです。

 ということで、雑草はみんなから嫌われているわけです。

年々いやな雑草ばかり生えてくるようになった

 雑草の中には特にいやなやつがいます。びっしり根を張って抜きにくい「イネ科」の雑草(メヒシバなど)やめちゃくちゃ大きくなる「アカザ」はいやな存在です。これらは葉っぱも硬く、根っこも強く張ります。

 一方、「ハコベ」や「ホトケノザ」のように肥えた土に良く生え、さらに土を肥やしていってくれるいいやつもいます。こういった雑草は大抵抜きやすくて、そこまで大きくならず邪魔になりません。

 最近お世話になっている農家さん(農業歴30年以上)から面白い話を聞きました。いつの間にか、イネ科のいやな雑草ばかりが畑に生えてくるようになったというのです。処理しづらい雑草ばかりで除草剤に頼ることが多くなったと。

 確かに畑を観察してみると、生えている雑草は目立つのは2,3種類くらいでほとんど代わり映えしません。でも、畦(作物が植わっていない、畑の淵)には多種多様な雑草が生えています。

 なぜなんでしょうか。

仮説:「土を耕すと特定の雑草ばかり生える」

 これは私が思いついた仮説の一つです。もしかしたら間違っているかもしれませんので話半分で聞いてください。

 畑は毎年、あたりまえのように耕されますよね。近年はロータリーやプラウといった機械をトラクターに取り付けて効率よく耕されます。

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耕された土

 耕すということは、地中15-30cmくらいまでの土がまきまわされてきれいに均されます。このとき、地中に眠っている雑草の種が表面に出てきます。同時に表面近くにあった種が地下に埋められます。

 耕された土は乾きやすく、天気が良いとすぐに乾いてしまいます。植物の発芽には水は絶対に必要です。新しい種(眠っていた種)が表層に上がってくることとあいまって、しばらくの間雑草が生えてこなくなります。

 こうして犂が開発された数百年前から、耕すことは雑草を抑える手段として世界中で活用されてきました。

 しかし、この後に何が起こるかというと、特定の雑草が生えやすくなると思うのです。なぜなら、耕された後は、発芽がよーいドンで一斉スタートするからです。

 どういうことかというと、雑草ごとに発芽しやすい条件が違うのに、スタートする条件は同じということです。土が耕されると、表面がきれいに均されて、地表の種は地下に眠っていたものに置き換わり、太陽と風にさらされて表面が乾きます。次に雨が降ったときに、均等に地面がぬれて、いっせいに発芽する準備にとりかかります。

 このとき、発芽しやすいものはどんどん発芽していきます。発芽しにくい雑草は土が乾いたらまた発芽できなくなります。そうしているうちに、最初に発芽した雑草がおおきくなって地面を覆っていきます。これが繰り返されて、少ない種類の雑草ばかりが生えていきます。

 土を耕すと、生えてくる雑草が偏る。その雑草が抜きにくかったり、生長が早かったりして邪魔になってしまう。

 これが私の立てた仮説です。

もちろん土の状態によって生える雑草は変わる

 土の状態(肥料成分、pH、温度、もともとの土壌の質)によっても生えてくる雑草の種類は変わります。毎年、土壌の状態はかわっていきますので、これによっても生えてくる雑草は変わっていきます。生えてくる雑草の種類で、大まかな土壌の状態を判断できるみたいです。これはまだ勉強中の部分です。

 長年の連作、除草剤の使用で土壌が多様性を失っているというのも原因になっているかもしれません。

 来年の畑に生えてくる雑草がどう変化していくか、土壌の変化も合わせて見極められるようにしたいと思います。生き物相手で予想通り、理論通りに行かないこともありますが、それもまた面白いところです。また何か気づいたことがあれば記事にできればと思います。

実りの秋。一気に寒くなりました。

 今日は台風の接近に伴って、朝から強い雨が降り続いています。気づけば、10月になってから1週間がたとうとしています。今日みたいな天気の日は外に出ることもできません。畑仕事もひと段落し始め、ブログのネタがなかなか思いつきません。本当は書きたいネタはあるのですが、小難しい話で長くなることもあってなかなか筆が進みません。

 さて、10月も第二週ですが、今年は去年よりも寒くなるのが早い気がします。朝晩はストーブがないと、我が家のアパートは寒くてたまらなくなってきました。つい1か月前までは30℃を越える日が続き、汗をだらだら流しながら畑に出ていました。ですが、もう2,3枚着込まないと畑仕事には厳しい風が吹きます。

 今年は厳冬の予報で、雪も降るみたいですね。私の住む御代田町はほとんど雪が降らないのですが、今年は結構降るのかもしれないと今から憂鬱な気分です。

 冬は畑に出ることが無いので、おのずと時間がたくさんできます。夏の間できなかったことをするチャンスです。今年の冬はDIYとコーヒー焙煎に挑戦したいと思っています。その様子も日記形式で紹介できたらなと思います。

 来シーズンの畑をどうするか考えるのもとても楽しいです。今年は面積が狭いこともあり、作る野菜を搾ったのですが、来年はいろいろな野菜に挑戦したいと思います。畑の多様性はまず野菜から、という感じです。

 試してみたい方法や技術、観察してみたいこともいっぱいあるので本当に楽しみです。持続的で、楽しい農をどこまで実現できるか楽しみです。来年から取り入れようと思っている技術や取り組みもいずれまとめて紹介できればいいなと思います。来年、再来年と続けていくことで結果とともに紹介、普及になればいいなと思います。

 

 それではしばらく続く、実りの秋を楽しみましょう!

F1と固定種と自家採種への挑戦

 今回は野菜作りには絶対に欠かすことのできない、「種」についてのお話です。

野菜にはF1と固定種があります

 同じ種類の野菜でも、さまざまな品種がありますよね。ミニトマトなら有名どころの「アイコ」、「千果」など、ほかにもたくさんの名前がついたミニトマトが売っています。それぞれ品種の特徴を示した名前から、栽培適期を記したもの、ギャグのような面白い名前がついたものまであって、見ていると面白いです。

 これら数多くの品種は多くのものが種苗会社が長年の研究の末に開発したものになります。種の利用者やその収穫物を利用する人(生産者の農家、消費者の食品業界、一般消費者、中卸業者など)の要求に応える画期的なものが多いです。

 その中でF1種と呼ばれる品種と、固定種と呼ばれる品種があります。野菜の種袋の品種名のF1の横にF1の表記や○○交配と書かれているものがF1(交配種)です。カネコ種苗の種なら、カネコ交配、トキタ種苗ならダイヤ交配などですね。逆に○○育成と書かれているものや野菜そのものの名前で書かれているもの(「ミニトマト」や「ホウレンソウ」など)は固定種であることが多いです。わざわざ固定種と書かれているものは少ないです。

野菜も植物なので生き物です(当たり前)

 なんだか当たり前すぎて、忘れてしまっている人もいるかもしれませんが、野菜も生き物です。植物という大きなくくりの中に入っていくる野菜ですが、基本的に次世代に子孫を残すために種をつけます。

 人間も一人ひとりまったく同じ遺伝子を持っていることはありません(一卵性双生児はかなり似た遺伝子を持っていますが、それでもまったく同一ではありません)。それは植物も同じで、種ひとつひとつ微妙に遺伝子が違います。違う遺伝子を持つもの同士がまた実を結び、次世代はまたすこーしだけ違う遺伝子を持つことになります。遺伝子というのは生命の設計図ですから、違う性質を持ったものが生まれてきます。

 さらに外的環境に適応したり、外敵から身を守るためだったり、突然変異などでも遺伝子はどんどん変化、進化していきます。これが何億年と続いた結果、現在の多様な生物が存在しています。

 今私たちが普段食べている野菜は、それぞれの原種とは程遠いほど姿を変えてきています。人間が食べやすいように、栽培しやすいように少しずつ進化させてきたんです。とうもろこしなんかはかなり変化が大きいです。

 本来であれば、育てたものと同じものをまた作ろうと思ったら、種を採って、また播けばいいわけです。しかし、畑に行くとそんなことをしている人はほとんどいません。みんな種はお店で買います。なぜか。それはF1(交配種)について知ることで少し理解できます。

F1種の登場! 新時代の品種改良技術

 もともと野菜の品種改良は、長い時間をかけて少しずつ望む性質をもった品種になるまで繰り返し繰り返し選抜育種を行うものでした。

 この野菜の品種開発はF1の登場によって大きく変わりました。

 F1というのは別系統の品種を掛け合わせたときにできる雑種の一代目のことです。このF1種は雑種強勢という現象によって、親の持つ形質よりも優れた性質を持ち、さらに掛け合わせの特性上、お互いの親の優勢形質を両方併せ持ちます。これによって、F1種は狙った性質(耐病性や食味、耐寒性、耐暑性など)を持った品種を作り出すことができます。しかもその性質がすべての種で均一になります。

 F1種は従来までの品種(固定種と呼びます)に比べ、優れた性質を持っていることから、農業界で広く用いられるようになりました。同じタイミングで播いた種はほぼ同じように育つため、大量生産大量消費にうってつけの品種になりました。

 いいことばかりのF1種ですが、デメリットももちろんあります。F1は雑種の一代目しか、意図した性質を持ちません。つまりF1の子供(F2)は性質がばらけます(メンデルの第二法則)。なので、農家は毎年種を買わないと同じ品種を作ることはできません。また、異常気象や珍しい病害などで一網打尽にだめになってしまう可能性もあります。性質がみんな同じなのだから、だめなときはみんなだめになります。

固定種 -昔ながらの品種

 固定種はF1種が登場する前からあった、昔ながらの品種です。

 固定種はほしい性質をもった株から採種を続け、おおよその性質が固定された品種です。病気に強かった株同士を交配させることを繰り返せば、少しずつ種全体がその病気に強い一群になっていきます。

 固定種はF1ではなく、さまざまな世代が入り混じり、遺伝的に多様性を持っています。なので、同じ固定種の種でも少しずつ異なる性質をもっています。甘みが強かったり、生育が少し早かったり、同じ品種内でも多様性が生まれます。

 これによって、できる野菜は不揃いになりやすいです。形がばらけていたり、大きさがまちまちだと市場では評価されず、価格が安くなります。なので、大規模栽培にはあまり向かない品種になります。

 これでは固定種のいいところがないように思われますが、そんなことはありません。

 まず、固定種は次世代の種をまた使えます。第一世代ではないので、播いた種から育った種はまた大体同じ性質を持ちます(別品種が交配時に近くにあると交雑が起こり、性質がばらけます)。なので、種を買わなくても、自分で増やすことができます。

 しかも、種を採ることを繰り返すことで、野菜は少しずつ周りの環境に適応し、作りやすくなります。野菜自身が進化していくわけですね。これに加えて、おいしい実ができた株、病気にならなかった株から種採りをすれば、狙った性質を持った自分のオリジナル品種を作り出すこともできます。

私たちは種採りをしたい!

 ここまでF1種と固定種について、長々と書いてきましたが、一番伝えたいのは私たちが種採りをしたいということです。

 野菜を自分たちの手で作りたいからはじめた畑。できることなら、種を播いて、種を採って、その循環を組み込みたい。それが自然だと思うんです。「自分で蒔いた種は、自分で刈り取る」という有名な言葉があります。自分のしたことの責任は自分でとる、という意味です。これを少し変えて、「自分で蒔く種は、自分で採る」。これを私たちの柱としたいと思います。

 畑での出来事に、より一層深く関われるという点と、もうひとつ、種がその土地に適応していくということも種採りをしたい理由のひとつです。

 F1種を使えば、日本全国何なら世界中どこでも同じ野菜を作ることができます。これって、よくよく考えたら、ちょっと怖いことではないですか? 均一化が進み、個性がなくなる。多様性がなくなると進化が無くなり、衰退するばかりになってしまうのではないでしょうか。

 片や、種採りをすれば、遺伝子は少しずつ変化して、その土地だけのオリジナルの野菜になっていきます。それをたくさんの人が行えば、とても多様性に満ちた世界になっていくと思います。その土地にあったものが育つ。こっちのほうが自然で、いい感じがしませんか?

 ○○さんのミニトマト、△△さんのナス、□□さんのたまねぎといった感じで、作っているその人ごとに野菜が区別できるようになったら面白そうだなと思うんです。

 

 早速、私たちは今年からミニトマトやスナップエンドウ、オクラなどいくつかの野菜で自家採種に挑戦しています。その様子を順次ご紹介していきます。

2020年ミニトマトの自家採種-発芽率は上々
オクラも自家採種をしました
信州地大根の収穫。種採りにも挑戦。

 長い文章を読んでいただきありがとうございました。もっとわかりやすく簡潔にまとめられるようにがんばります。

私たちの野菜の育て方

はじめに。

 私たちの野菜を買って、このブログにも訪ねてきてくださった皆様、ありがとうございます。そして、ようこそいらっしゃいました。野菜の味はいかがだったでしょうか。楽しんでいただけたら私たちもうれしいです。

 Facebookでの投稿から来てくださった方、ありがとうございます。いつも私たちの野菜作りの様子を見ていただきありがとうございます。

 今回は私たちが野菜を育てるときに大事にしていること、考えていることをご紹介します。野菜つくりに対する思い、畑や土に対する思い、育て方(農法)、農業への向き合い方などさまざまなテーマになりますが、よかったら目を通していただけると幸いです。

食べ物を自分で作りたい

 私たちの原動力となるものはこれにつきます。食べ物を自分で作りたい。自分で作ったものを食べたい。どうせ食べるならおいしいものを食べたい。おいしい野菜を作るのは技術です。そして、その技術を使えるように、毎日畑に向かうことも重要です。

 野菜作りは楽なことではありません。どんなに暑くても、寒くても、野菜は待ってくれません。そんな畑仕事をこなすには、やっぱり楽しくできることが一番です。いやだなと思いながらではやっぱり楽しくないし、きっと野菜もおいしくできません。楽しくなければ、新しい知識を得ようと思わないし、楽しければもっといろんなことを知りたいという欲が出てくるはずです。

 楽しく仕事できるようなやり方を考えながら、日々過ごしています。

環境にやさしい、持続的な方法で作りたい

 私たちは、環境負荷が少なく、持続的な(10年も、100年も、もっと長く続く)方法で野菜を作りたいと思っています。資材の投入を少なくして、資材の循環を大事にする。こうすることで余計なコストを省くことができるのはないかと思っています。

 身近にあるものを使って、少ない資材で普通に野菜が作れたらいいなと考えています。反対にバンバン肥料を入れて、病気が出たら農薬を使って、虫が出たら殺虫剤を使って、余計に作って廃棄、といった農業にならないようにしたい。こういったやり方では土を痛めると思います。土がなければ野菜は育ちません。さまざまな研究や調査から、「今まで通り」の農業をしていたら、土壌が劣化し野菜が健康に育たなくなっていくという結果が報告されています。それを補うためにさらに肥料や農薬が投入されていくのではないでしょうか。

 土壌が劣化していくのではなく、回復しさらによくなっていくように野菜を作りたいです。しかも、資材に不必要に頼りすぎることなく。そうすれば、本当の意味での「持続的な農業」になると思っています。

お金は大事だけれど。

 私たちは、いわゆる農業してお金をいっぱい稼ぎたい! というわけではありません。もちろんお金は最低限必要だとは思っていますが、たくさんありすぎても困るし、たくさんあればいいわけではないなと(最近特に)思います。

 まだこの生き方をはじめたばかりで、自分たちがどのくらいのお金があればいいのか、どのくらいはたけるのかわかっていません。毎日、毎年、すこしずつ見極めて無理のない暮らしを送りたいと思っています。

 毎日、限界まで働いて、休日は力尽きたように休むのはちょっと私たちには無理のようです。特に農業の世界は早くから遅くまで働くのがえらい、という風潮がまだあるように思います。心がついていけるようなゆとりある状態で生きていけるのが一番です!

 そんな思いが野菜や畑に現れて、みなさんに届けばいいなと思います。

今後の私たちの暮らしの様子を見守ってください

 このブログは野菜作りの様子が多く語られています。私たちがどうやって野菜を育てているか伝わればと思います。

 今回書かせていただいた話も、掘り下げるともっとたくさんお伝えしたいことがあります。それぞれのテーマについて、今後記事にできればと思います。

 それだけでなく、私たちの生活、暮らしの様子も少しずつ綴っていきます。今後はInstagramなども活用していきますのでよろしくお願いします。

 いずれどこかでお会いできるかもしれませんね。