たまねぎの植え付けをしました

 来年春に収穫するたまねぎの植え付けを行いました。私たちは日常的にたまねぎを料理に使うので、自給自足する野菜の中では優先度が高めです。

 はじめての栽培でしたが、思い切って育苗からやってみることにしました。いろいろ調べながらの栽培でしたが、どうだったのでしょうか。ひとまず定植までたどり着けてよかったです。

たまねぎは苗作りが大切?

 たまねぎは畑に直接種を播いて育てる野菜ではありません。プロ農家も、家庭菜園でも苗を事前に作ってからそれを秋に定植します。

 たまねぎの種は寿命が短く、発芽率も悪いので畑に播いても、ロスが多くなってしまいます。さらに真夏での種まきになるため、水分管理が難しいです。結果、苗を作ることが必要になります。

 苗自体は秋になれば、ホームセンターや種苗店で販売されています。なのでそれを購入して植えつければ簡単に栽培を始められます。しかし、たまねぎ栽培について調べたところ、たまねぎは苗のできで翌年の収穫の質がかなり左右されます。大きすぎる苗だと、春先に腐ったり、トウ立ち(花が咲いてしまうこと)してしまい、収量が落ちます。

 見たところ、市販の苗は大きすぎるように見えます。また、土から抜いた状態で売られているのも気になります。たまねぎは丈夫な作物で簡単に根付くようですが、苗の鮮度が落ちていることは確かです。

 しかも、市販苗は自家育苗と比べて非常に高価です。大体100本/500円くらいするようです。一方、たまねぎの種は、家庭菜園用の小袋が300円ほど、一袋に500粒ほど入っています。なので100本あたり60円ほどしかかかりません。スペースはとりますが、それでも肥料の値段を考慮しても圧倒的に安価です。

 そこで今年は苗から栽培してみることにしました。植え付ける場所の真横で育苗すれば、抜いたばかりの元気な状態で植えつけることができます。

無肥料での苗作り

 真夏の8月25日にたまねぎの種まきを行いました。品種は固定種で、貯蔵性の高い中晩生の「泉州黄たまねぎ」です。今回はそれまで雑草が旺盛に生育していた場所だったため、無肥料で行うことにしました。もし、苗の出来が悪いようなら、来年少し調節しようと思います。

 発芽には1週間ほどかかりました。

200904 苗の様子
発芽してから4日目の様子

 成長がゆっくりで毎日見ていると、ある日突然成長したように感じられます。途中除草を3回ほど行いました。成長が遅いので、雑草に負けないように注意しました。

 ある程度大きくなったころ(5cmくらい)、間引きを行いました。株間を1-1.5cmくらいにします。

200919 苗の様子
発芽後14日目

 9月中頃になると一気に気温が下がって、雑草の伸びが鈍くなりました。一方たまねぎは暑さを乗り切り順調に成長しています。植え付けの日にはこのくらい育っていました。

201013 苗の様子-2
いい感じに育ちました!

 葉先の枯れもなく、少し小ぶりですが元気に育ちました。適正サイズは鉛筆の太さほどといわれていますが、それって結構太いなと思いましたが、どうなんでしょうか。今回は菜ばしくらいの太さに仕上がりました。

植え付け作業の様子。剪定と根きり

 直育苗なので、まずは苗を抜き取ります。かなり根がしっかり張っていて、何本かちぎってしまいました(笑)。根っこが5cmくらい伸びています。

 苗を植えるときに葉っぱはきってしまっても良いそうです。特に育ちすぎた苗では、植えつけるときに絡まってしまい、作業性が落ちたり、土について病気をもらうことがあるようです。今回はマルチ栽培ですが、草丈を揃えました。

 そして、根っこも1cmくらいに切りそろえます。たまねぎは浅く植えるのがポイントですが、根っこが長いと邪魔になります。また、刺激を与えることになり、発根が良くなる効果もあるようです。

 抜いてみると、意外とサイズにばらつきがあったので大中小の3サイズに分けました。ちょうどいいサイズの大が7割ほどで、一番小さいものはお試しで植えてみることにします。

植え付け作業と反省点

 いざ植え付けです。穴あきマルチを使っているので、土をほじって植えるだけです。根の上の白い部分が土に隠れる程度の浅植えにします。どんどん作業を進めて、30分ちょっとで終わりました。

201018 定植完了
植えつけたたまねぎ

 植えられる株数は270くらいありましたが、苗が足りず210株くらいになってしまいました。残った穴にはその後、にんにくを植えつけました。育苗のときからすこし苗が足りないとは思っていましたが、思ったより足りませんでした。

 来年はちゃんと計算して育苗してみようと思います。

 無事植え付けができました。最低でも1週間ほどで根がついて、起き上がってくるはずです。後は年内に一度追肥して、年明けに様子を見てもう2,3回追肥をします。草取りも春になったらやりますが、基本は放置です。

年々いやな雑草ばかり生えてくるようになる理由

 雑草は野菜作りをする上で避けては通れません。現代農業では雑草は厄介者扱いで、除草剤や耕起によってコントロールしようとします。しかし、雑草は見方を変えると健康な野菜作りに非常に有用な資材に変わります。(この話はまた今度したいと思っています)

 基本的には厄介者の雑草ですが、年々生えてくる雑草が変わっていくという現象があるようです。本やインターネットでも、このような報告をされている方が多く見られます。なぜ、生えてくる雑草が変わっていくのか、私なりの仮説があるのでそれをご紹介します。

雑草ってそもそも何?

 雑草と一まとめに語られますが、雑草という植物は存在しません。畑では何か育てたい、メインの植物(トマト、ジャガイモ、など)が作物として「栽培」され、ほかの植物はできればいないほうがいい、どうでもいい植物です。つまり、育てている植物以外を「雑草」としているわけですね。

 具体的にどんな植物が雑草として扱われることが多いのでしょうか。

 たとえば、背丈が100cm以上にもなり木のようになる「アカザ」や、びっしりと根を張る「メヒシバ」、夏にかけて一気に勢力を広げる「スベリヒユ」などは嫌われる雑草として知られています。

 春先に良く見られる「ホトケノザ」、「カラスノエンドウ」などは畑の肥沃さを推測する指標にもなる雑草です。

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ホトケノザ

 道端に生えている「タンポポ」や小さな花がかわいい「オオイヌノフグリ」などももちろん雑草になります。

 前年栽培していたミニトマトが、翌年植えつけていないのに生えてきた「自然生え」ミニトマトは、雑草として扱われます。

嫌われ者の雑草

 とにかく雑草はみんなの嫌われ者です。毎日ちゃんと畑に出ているおじいちゃん、おばあちゃんの畑には雑草のざの字も見えないほど徹底的に抜き取られていることもあります。

 生業として農業をされている農家さんにとっても、雑草は厄介です。暑い真夏に雑草取りをしている姿もよく見られます。作業がどうしても追いつかなくて、除草剤をまいて枯らしていることもあるでしょう。

 なぜ雑草がここまで嫌われるかというと、本来育てたい野菜の生育を邪魔するからです。雑草の生長は早く、ほうっておくと雑草のほうが大きくなってしまった、なんてこともよくあります。いつの間にか雑草に負けて野菜が日陰でくすぶっていることがあります。

 しかも、抜きにくかったり種をいっぱいつけて、抜いても抜いても生えてくる、何年も生え続けます。

 草取りは肉体的にもつらい作業で、いやになってしまうことも多いです。

 ということで、雑草はみんなから嫌われているわけです。

年々いやな雑草ばかり生えてくるようになった

 雑草の中には特にいやなやつがいます。びっしり根を張って抜きにくい「イネ科」の雑草(メヒシバなど)やめちゃくちゃ大きくなる「アカザ」はいやな存在です。これらは葉っぱも硬く、根っこも強く張ります。

 一方、「ハコベ」や「ホトケノザ」のように肥えた土に良く生え、さらに土を肥やしていってくれるいいやつもいます。こういった雑草は大抵抜きやすくて、そこまで大きくならず邪魔になりません。

 最近お世話になっている農家さん(農業歴30年以上)から面白い話を聞きました。いつの間にか、イネ科のいやな雑草ばかりが畑に生えてくるようになったというのです。処理しづらい雑草ばかりで除草剤に頼ることが多くなったと。

 確かに畑を観察してみると、生えている雑草は目立つのは2,3種類くらいでほとんど代わり映えしません。でも、畦(作物が植わっていない、畑の淵)には多種多様な雑草が生えています。

 なぜなんでしょうか。

仮説:「土を耕すと特定の雑草ばかり生える」

 これは私が思いついた仮説の一つです。もしかしたら間違っているかもしれませんので話半分で聞いてください。

 畑は毎年、あたりまえのように耕されますよね。近年はロータリーやプラウといった機械をトラクターに取り付けて効率よく耕されます。

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耕された土

 耕すということは、地中15-30cmくらいまでの土がまきまわされてきれいに均されます。このとき、地中に眠っている雑草の種が表面に出てきます。同時に表面近くにあった種が地下に埋められます。

 耕された土は乾きやすく、天気が良いとすぐに乾いてしまいます。植物の発芽には水は絶対に必要です。新しい種(眠っていた種)が表層に上がってくることとあいまって、しばらくの間雑草が生えてこなくなります。

 こうして犂が開発された数百年前から、耕すことは雑草を抑える手段として世界中で活用されてきました。

 しかし、この後に何が起こるかというと、特定の雑草が生えやすくなると思うのです。なぜなら、耕された後は、発芽がよーいドンで一斉スタートするからです。

 どういうことかというと、雑草ごとに発芽しやすい条件が違うのに、スタートする条件は同じということです。土が耕されると、表面がきれいに均されて、地表の種は地下に眠っていたものに置き換わり、太陽と風にさらされて表面が乾きます。次に雨が降ったときに、均等に地面がぬれて、いっせいに発芽する準備にとりかかります。

 このとき、発芽しやすいものはどんどん発芽していきます。発芽しにくい雑草は土が乾いたらまた発芽できなくなります。そうしているうちに、最初に発芽した雑草がおおきくなって地面を覆っていきます。これが繰り返されて、少ない種類の雑草ばかりが生えていきます。

 土を耕すと、生えてくる雑草が偏る。その雑草が抜きにくかったり、生長が早かったりして邪魔になってしまう。

 これが私の立てた仮説です。

もちろん土の状態によって生える雑草は変わる

 土の状態(肥料成分、pH、温度、もともとの土壌の質)によっても生えてくる雑草の種類は変わります。毎年、土壌の状態はかわっていきますので、これによっても生えてくる雑草は変わっていきます。生えてくる雑草の種類で、大まかな土壌の状態を判断できるみたいです。これはまだ勉強中の部分です。

 長年の連作、除草剤の使用で土壌が多様性を失っているというのも原因になっているかもしれません。

 来年の畑に生えてくる雑草がどう変化していくか、土壌の変化も合わせて見極められるようにしたいと思います。生き物相手で予想通り、理論通りに行かないこともありますが、それもまた面白いところです。また何か気づいたことがあれば記事にできればと思います。

実りの秋。一気に寒くなりました。

 今日は台風の接近に伴って、朝から強い雨が降り続いています。気づけば、10月になってから1週間がたとうとしています。今日みたいな天気の日は外に出ることもできません。畑仕事もひと段落し始め、ブログのネタがなかなか思いつきません。本当は書きたいネタはあるのですが、小難しい話で長くなることもあってなかなか筆が進みません。

 さて、10月も第二週ですが、今年は去年よりも寒くなるのが早い気がします。朝晩はストーブがないと、我が家のアパートは寒くてたまらなくなってきました。つい1か月前までは30℃を越える日が続き、汗をだらだら流しながら畑に出ていました。ですが、もう2,3枚着込まないと畑仕事には厳しい風が吹きます。

 今年は厳冬の予報で、雪も降るみたいですね。私の住む御代田町はほとんど雪が降らないのですが、今年は結構降るのかもしれないと今から憂鬱な気分です。

 冬は畑に出ることが無いので、おのずと時間がたくさんできます。夏の間できなかったことをするチャンスです。今年の冬はDIYとコーヒー焙煎に挑戦したいと思っています。その様子も日記形式で紹介できたらなと思います。

 来シーズンの畑をどうするか考えるのもとても楽しいです。今年は面積が狭いこともあり、作る野菜を搾ったのですが、来年はいろいろな野菜に挑戦したいと思います。畑の多様性はまず野菜から、という感じです。

 試してみたい方法や技術、観察してみたいこともいっぱいあるので本当に楽しみです。持続的で、楽しい農をどこまで実現できるか楽しみです。来年から取り入れようと思っている技術や取り組みもいずれまとめて紹介できればいいなと思います。来年、再来年と続けていくことで結果とともに紹介、普及になればいいなと思います。

 

 それではしばらく続く、実りの秋を楽しみましょう!

秋になった畑の様子。順調なものと、うまくいかないもの。

 秋もだいぶ深まってきて、気温もぐんぐん下がってきました。先日は霜注意報まで出ていました。もうすぐ冬が来ますね。

 私たちの畑の野菜たちは順調に育っているもの、うまく育っていないもの、明暗が分かれてきました。今回は、少し畑の様子をご紹介します。

まだ残っている夏野菜

 最適な生育環境から外れてしまったミニトマトとオクラですが、一応まだ採れています。

 ミニトマトはヒョウの被害にあった実が無くなり、きれいになってきました。味は少し落ちてきていますが、よく晴れた日が続くとまだまだおいしくいただけます。後もう少しでおしまいですね。

 オクラは少しずつ成長を続けていて、もう背丈は150cmほどに届くものもいます。花もまだまだ咲いており、少しですが家でいただくには十分な収穫があります。種採り用に実を残している株は生育が収まって、種を充実させる方に力を注ぎますので、こちらもあと少しです。

 ズッキーニは夏野菜のイメージですが、もともとメキシコの高原が原産の野菜で、涼しくなってきた今頃もまだまだ元気のままです。実もきれいで、毎日採れています。こちらは霜が降るまで収穫を続けられそうです。

根菜類はおおむね順調ですが。。。

 8月頭に種まきをした大根は土から飛び出してきて、大きくなってきました。太さも直径5cmほどはあります。どのくらいの長さになっているか気になりますが、もう少し我慢です。霜が当たると良くないので、それまでには抜いてみたいと思います。

信州地大根
信州地大根()

 葉っぱもわさわさで、多少虫食いはあるものの、こちらもおいしくいただく予定です。

 中国野菜の天安紅心大根も栽培しています。こちらは少し種まきが遅かったので、ようやく肥大が始まったところです。収穫まであと3週間ほどでしょうか。間引き菜の根っこはすでに赤くなってきていました。普段スーパーでは販売されない野菜なので楽しみです。

天安紅心大根
天安紅心大根

 私の一押し野菜、ルタバガもどんどん葉を茂らせています。時期をずらして、三回くらい種まきしたのでいろいろな大きさが揃っています。寒さに当てると甘みが増しておいしくなるはずなので、それも検証します。ルタバガもスーパーではほとんど流通しません。自分で育てる価値がありますね。

ルタバガ
ルタバガ

 一方、にんじんはかなり成長が遅れています。同じタイミングで種まきしたはずなのに、同じ列でも生育が違います。計画が不十分で、畝になっている場所にまいてしまったので乾燥しすぎなのかもしれません。また、近所の人の話では播くのが遅すぎるかもとのことでした。この地域では、夏播きなら七月中には芽を出しておきたいようです。種まきが8月15日なのでかなり遅いですね。

黒田五寸
黒田五寸

 何とか育ってくれるといいのですが。にんじんの種採りは特にやってみたかったものの一つです。でも、次はこうしよう、というのがあるのはいいことです。

 寒さに強いビーツもたくさん播いてあります。ボルシチにして食べてみたいですね。まだ発芽したばかりで今後の成長が楽しみです。

たまねぎとにんにくコンビ

 別の畑で栽培予定のたまねぎとにんにく。たまねぎは自家育苗に挑戦していますが、なかなかいい感じに育っています。草丈は15cmほどで20-25cmほどで定植になります。10月中旬に定植予定なので間に合うはずです。

泉州黄たまねぎ
泉州黄たまねぎ

 それぞれ畝にはマルチを張ってありますが、植え穴から草が生えてきています。一度草取りをしないといけませんね。

 初めての栽培でわからないことだらけですが、うまくいくとうれしいです。

鹿に食べられまくった大豆

 種まきが遅れたり、鹿に葉っぱを食べられまくった大豆ですが、少ないながらも何とか育ってきました。鞘もついて日に日に豆が大きくなってきています。食べるには足りないかもしれませんが、来年用の種採り用になればいいなと思っています。

ナカセンナリ
ナカセンナリ

 大豆はさまざまな加工食品の原料ですので、自給していきたい作物の一つです。自家栽培の大豆で自家製味噌は大きな目標の一つです。今年採れる種でつないでいきたいと思います。鹿に食べられながらも実をつけた根性に期待です。

 来年は鹿の害が少なそうなもう一枚の畑で、少し規模を拡大して栽培する予定です。大豆栽培はいろいろな小技が報告されているので一つ一つ試して、実験してみたいと思います。

F1と固定種と自家採種への挑戦

 今回は野菜作りには絶対に欠かすことのできない、「種」についてのお話です。

野菜にはF1と固定種があります

 同じ種類の野菜でも、さまざまな品種がありますよね。ミニトマトなら有名どころの「アイコ」、「千果」など、ほかにもたくさんの名前がついたミニトマトが売っています。それぞれ品種の特徴を示した名前から、栽培適期を記したもの、ギャグのような面白い名前がついたものまであって、見ていると面白いです。

 これら数多くの品種は多くのものが種苗会社が長年の研究の末に開発したものになります。種の利用者やその収穫物を利用する人(生産者の農家、消費者の食品業界、一般消費者、中卸業者など)の要求に応える画期的なものが多いです。

 その中でF1種と呼ばれる品種と、固定種と呼ばれる品種があります。野菜の種袋の品種名のF1の横にF1の表記や○○交配と書かれているものがF1(交配種)です。カネコ種苗の種なら、カネコ交配、トキタ種苗ならダイヤ交配などですね。逆に○○育成と書かれているものや野菜そのものの名前で書かれているもの(「ミニトマト」や「ホウレンソウ」など)は固定種であることが多いです。わざわざ固定種と書かれているものは少ないです。

野菜も植物なので生き物です(当たり前)

 なんだか当たり前すぎて、忘れてしまっている人もいるかもしれませんが、野菜も生き物です。植物という大きなくくりの中に入っていくる野菜ですが、基本的に次世代に子孫を残すために種をつけます。

 人間も一人ひとりまったく同じ遺伝子を持っていることはありません(一卵性双生児はかなり似た遺伝子を持っていますが、それでもまったく同一ではありません)。それは植物も同じで、種ひとつひとつ微妙に遺伝子が違います。違う遺伝子を持つもの同士がまた実を結び、次世代はまたすこーしだけ違う遺伝子を持つことになります。遺伝子というのは生命の設計図ですから、違う性質を持ったものが生まれてきます。

 さらに外的環境に適応したり、外敵から身を守るためだったり、突然変異などでも遺伝子はどんどん変化、進化していきます。これが何億年と続いた結果、現在の多様な生物が存在しています。

 今私たちが普段食べている野菜は、それぞれの原種とは程遠いほど姿を変えてきています。人間が食べやすいように、栽培しやすいように少しずつ進化させてきたんです。とうもろこしなんかはかなり変化が大きいです。

 本来であれば、育てたものと同じものをまた作ろうと思ったら、種を採って、また播けばいいわけです。しかし、畑に行くとそんなことをしている人はほとんどいません。みんな種はお店で買います。なぜか。それはF1(交配種)について知ることで少し理解できます。

F1種の登場! 新時代の品種改良技術

 もともと野菜の品種改良は、長い時間をかけて少しずつ望む性質をもった品種になるまで繰り返し繰り返し選抜育種を行うものでした。

 この野菜の品種開発はF1の登場によって大きく変わりました。

 F1というのは別系統の品種を掛け合わせたときにできる雑種の一代目のことです。このF1種は雑種強勢という現象によって、親の持つ形質よりも優れた性質を持ち、さらに掛け合わせの特性上、お互いの親の優勢形質を両方併せ持ちます。これによって、F1種は狙った性質(耐病性や食味、耐寒性、耐暑性など)を持った品種を作り出すことができます。しかもその性質がすべての種で均一になります。

 F1種は従来までの品種(固定種と呼びます)に比べ、優れた性質を持っていることから、農業界で広く用いられるようになりました。同じタイミングで播いた種はほぼ同じように育つため、大量生産大量消費にうってつけの品種になりました。

 いいことばかりのF1種ですが、デメリットももちろんあります。F1は雑種の一代目しか、意図した性質を持ちません。つまりF1の子供(F2)は性質がばらけます(メンデルの第二法則)。なので、農家は毎年種を買わないと同じ品種を作ることはできません。また、異常気象や珍しい病害などで一網打尽にだめになってしまう可能性もあります。性質がみんな同じなのだから、だめなときはみんなだめになります。

固定種 -昔ながらの品種

 固定種はF1種が登場する前からあった、昔ながらの品種です。

 固定種はほしい性質をもった株から採種を続け、おおよその性質が固定された品種です。病気に強かった株同士を交配させることを繰り返せば、少しずつ種全体がその病気に強い一群になっていきます。

 固定種はF1ではなく、さまざまな世代が入り混じり、遺伝的に多様性を持っています。なので、同じ固定種の種でも少しずつ異なる性質をもっています。甘みが強かったり、生育が少し早かったり、同じ品種内でも多様性が生まれます。

 これによって、できる野菜は不揃いになりやすいです。形がばらけていたり、大きさがまちまちだと市場では評価されず、価格が安くなります。なので、大規模栽培にはあまり向かない品種になります。

 これでは固定種のいいところがないように思われますが、そんなことはありません。

 まず、固定種は次世代の種をまた使えます。第一世代ではないので、播いた種から育った種はまた大体同じ性質を持ちます(別品種が交配時に近くにあると交雑が起こり、性質がばらけます)。なので、種を買わなくても、自分で増やすことができます。

 しかも、種を採ることを繰り返すことで、野菜は少しずつ周りの環境に適応し、作りやすくなります。野菜自身が進化していくわけですね。これに加えて、おいしい実ができた株、病気にならなかった株から種採りをすれば、狙った性質を持った自分のオリジナル品種を作り出すこともできます。

私たちは種採りをしたい!

 ここまでF1種と固定種について、長々と書いてきましたが、一番伝えたいのは私たちが種採りをしたいということです。

 野菜を自分たちの手で作りたいからはじめた畑。できることなら、種を播いて、種を採って、その循環を組み込みたい。それが自然だと思うんです。「自分で蒔いた種は、自分で刈り取る」という有名な言葉があります。自分のしたことの責任は自分でとる、という意味です。これを少し変えて、「自分で蒔く種は、自分で採る」。これを私たちの柱としたいと思います。

 畑での出来事に、より一層深く関われるという点と、もうひとつ、種がその土地に適応していくということも種採りをしたい理由のひとつです。

 F1種を使えば、日本全国何なら世界中どこでも同じ野菜を作ることができます。これって、よくよく考えたら、ちょっと怖いことではないですか? 均一化が進み、個性がなくなる。多様性がなくなると進化が無くなり、衰退するばかりになってしまうのではないでしょうか。

 片や、種採りをすれば、遺伝子は少しずつ変化して、その土地だけのオリジナルの野菜になっていきます。それをたくさんの人が行えば、とても多様性に満ちた世界になっていくと思います。その土地にあったものが育つ。こっちのほうが自然で、いい感じがしませんか?

 ○○さんのミニトマト、△△さんのナス、□□さんのたまねぎといった感じで、作っているその人ごとに野菜が区別できるようになったら面白そうだなと思うんです。

 

 早速、私たちは今年からミニトマトやスナップエンドウ、オクラなどいくつかの野菜で自家採種に挑戦しています。その様子を順次ご紹介していきます。

2020年ミニトマトの自家採種-発芽率は上々
オクラも自家採種をしました
信州地大根の収穫。種採りにも挑戦。

 長い文章を読んでいただきありがとうございました。もっとわかりやすく簡潔にまとめられるようにがんばります。