【自給】エゴマの栽培と暮らしの中での活用法【作る暮らし】

近年見直されているエゴマ(荏胡麻)

 エゴマは最近、健康に対する意識の高まりから注目されている食材だ。
 歴史は古く、日本では縄文時代から利用されてきた歴史がある。元々東南アジア原産だが、早いうちから大陸から日本に伝わり、長い間活用されてきた。日本最古の野菜といってもいいだろう。
 平安時代には提灯などの燃料として、江戸時代ではその油の特徴から和紙などの撥水剤としても利用されていた。栽培量が減った現代でも、全国各地でエゴマを栽培し、利用する文化が残っている。

 そんなエゴマだが、多くの人が「エゴマ油」が身体に良い、と聞いたことがあるだろう。エゴマは「畑の魚」と呼ばれるほど、不飽和脂肪酸を多く含んでいる。不飽和脂肪酸は体内で作ることのできない必須脂肪酸で食事から摂取する必要がある。エゴマはその不飽和脂肪酸の中でも、循環器系疾患の予防に効果があると言われている「α- リノレン酸」を特に豊富に含んでいる。そのことからエゴマは現在注目されている健康食品だ。

 エゴマはシソ科の一年草で、日本各地で栽培されてきた。長野県では「えぐさ、いぐさ」、東北地方では「じゅうねん、じゅうね」、岐阜県では「あぶらえ」など様々な別称がついて、その地域ごとに親しまれている作物だ。東北地方の「じゅうねん」というのは「エゴマを食べれば十年長生きする」という言い伝えから来ている。昔の人は高度な分析機器がなくても、エゴマが身体に良いことを知っていたのだろう。

 私たちも最初の畑の隣のおじさんから、数本株を分けてもらったことから栽培するようになった。最初の年はもらった数株を大事に育て、種を採った。昨年、その種を播いて1Lの大瓶満タンに収穫した。

210907 エゴマ
昨年のエゴマ
211024 乾燥中のエゴマ
収獲した実エゴマ


 そして今年、その種をまた畑に播いた。現在、30cmくらいまで大きくなってきた。もうエゴマの葉も結構採らせてもらった。醤油漬けにして少しずつ楽しんでいる。

育てた後が大変なエゴマ栽培

 エゴマはシソ科ならではの生命力で、比較的簡単に栽培できる。多少、葉っぱは穴をあけられるが、そこまで大きな被害が出ることはあまりない。紫蘇が翌年も同じ場所から芽を出すようにエゴマも生命力が強く、自然生えしてくる。

220714 エゴマの葉っぱ
エゴマの葉

 種まきは梅雨入り直後の6月10日前後にしている。種が大きく、水を吸いにくい形状のため、雨が降って水分が多い時を狙って種を播く。約1週間で芽が出そろうので除草する。最初の成長が遅いため、こまめに草整理をしておきたい。今年は条間を「けずっ太郎」で除草した。発芽後に一度やっただけだが、播種してから1カ月たった今、もう草に負けないくらいエゴマが育ってくれた。若干草が伸び始めたので近々草整理に入る。

220624 発芽したエゴマ
種まきから10日経ったエゴマ

 あとは草が伸びすぎないように、1,2回草刈りをしてあげれば収穫となる。葉っぱを利用する場合は、背丈が十分育って来てから、一度にたくさん採り過ぎないようにする。一株から一度に一枚までと決めておけば、取りすぎることは無い。
 茎葉が半分以上枯れ上がったら収穫時だ。

 大変なのは、種(実)の収穫だ。エゴマの種は外れやすいため、慎重に畑から出さないとボロボロと落ちてしまう。
 いざ脱穀といっても、私たちのように多くの人は手作業だろう。ひたすら木の板でたたいたり、株ごと叩きつけたりしてできるだけ種を落として行く。あんなに外れやすい割に、数が多いせいかいつまでもぽろぽろ外れてくるため、かなり根気がいる作業だ。

 ゴミが沢山入ってしまうため、篩や風の力を借りて綺麗にしていく。これも大変だが、どんどん綺麗になっていくエゴマの種を見ると、嬉しい気持ちになる。さらに細かいゴミを除く為に水さらいをする。軽いゴミや実の詰まっていない種が浮いてくるため、それを取り除けば調整は完了だ。

エゴマの活用方法

葉っぱを利用する

 エゴマの葉っぱを利用するには、「醤油漬け」がおすすめだ。韓国料理では「ケンニプ」と呼ばれ、広く浸透している食べ物だ。

220715 エゴマの醤油漬け
エゴマの醤油漬け

 仕込んで翌日に食べられるのも良い。うちも早速仕込んで毎日食べている。ちょっと癖のある風味がたまらない。ご飯がどんどん進む。やるまでは面倒なのだけど、実際やってみて、その良さを知ると何で今までやらなかったのか疑問に思うくらいだ。
 家庭菜園、自給農のいいところはこうして手間をかけたものには大きな価値がある事を知ることができる点にある。

 エゴマの葉で作るジェノベーゼソースも美味しいらしい。これはまだ試したことがないので、今年試してみようと思う。ジェノベーゼというとバジルで作るのが一般的だが、紫蘇で作るのも美味しい。エゴマは紫蘇の仲間だから間違いなく美味しいはずだ。パスタのレパートリーが増えること間違いなしだ。

 他にも大葉巻きの代わりにエゴマ巻きなんてのも良いかもしれない。

実(種)を利用する

 エゴマは実に含まれるα- リノレン酸という不飽和脂肪酸の含有量が世界で一番多い。この脂肪酸は必須脂肪酸で食事から摂らないといけない。
 α-  リノレン酸の一日あたりの摂取量を野菜から摂取しようとすると、ほうれん草なら約1.5kgも食べないといけないことになる。エゴマ油なら小さじ1杯(3g)で必要量を摂取できる。油自体にはあまり癖が無いため、サラダにかけたり、ヨーグルトにかけたり、コーヒーに垂らしても良い。

 エゴマから自分でエゴマ油を搾る。現代においてかなり上位の贅沢になるのではないだろうか。エゴマ油は価格も高く、200mlほどで1000円くらいはする。高品質な物は2000円以上のものもたくさんある。それを惜しみなく毎日食べることができたら素晴らしい。エゴマ油200ml、自分で絞るには1000円以上の労働力は必須だけど、自給自足でそれを言ったら始まらない。掛ける手間の分だけ価値がある。

 余談だが、私たちは自家用の搾油機を持っていないので購入を検討している。1週間に1度、必要な分だけ絞れたらと思っているので、サッと使えること、手入れが簡単なこと、50mlくらい絞れることを条件に探している。
 案外、選択肢は多く、家庭用搾油機業界は競争が激しいのかもしれない。今のところ、考えているのは石野製作所のShiBoRoだ。価格が10万(!!)とかなり高額なため、いつになることやら。他にも良さそうな商品はたくさんあるのでじっくり探したい。

 エゴマの実は油を搾るだけじゃない。丸ごと食べるのも結構イケる。もはや毎日実を食べた方がいいのかもしれない。食べ方はいろいろある。
 まず本当にそのまま。ナッツのような風味とプチプチした食感で美味しい。ヨーグルトに入れて食べるのがおすすめだ。
 すりつぶすのも良い。胡麻の代わりにエゴマ和えにしたり、甘いタレにして餅につけたり、すりつぶしたエゴマをご飯に混ぜる「えめし」は岐阜・飛騨地方の郷土料理として知られている。

220717 すりつぶしたエゴマ
焙煎してから擂ると香りが良い
220717 エゴマご飯
すりエゴマとご飯を混ぜる

今年のエゴマ栽培も上手くいきますように

 今年は全国的に異常気象が続いている。ここ長野県はまだ大きな被害が出ておらず、畑の野菜たちも無事だ。

 エゴマは順調に育っている。土の成分を吸収する力が強く、その土地のエネルギーを蓄えるエゴマ。このまますくすく育って、実りをもたらしてくれることを願っている。

220717 エゴマの様子
7月17日のエゴマの様子 種まきから1ヶ月

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