【自然農】アブラナ科は交雑しやすい! 自家採種の注意点【交雑】

アブラナ科は交雑しやすい

 自家採種は野菜の種類によって、やりやすいものとやりにくいものがある。マメ科の大豆や小豆などは簡単で、種自体が収穫物になるため、普通に栽培していくだけで良い。トマトやかぼちゃも比較的簡単で収獲物そのものから種を取り出す工程が追加されるだけだ。一方、ナスやピーマン、オクラなどは収穫物をさらに1ヶ月ほど追熟させる必要があるため、少しだけ難易度が上がる。

 特に難しいのが根菜や葉物の類だ。これらは基本的に通常栽培に加えて、越冬させた後に花を咲かせ、実をつける必要があり、一気に難易度が上がる。とはいっても、やってみると意外に簡単だ。私たちも大根とルタバガの種採りをやったことがあり、基本的に放置しただけで出来た。

220209 大根の種が入った鞘
完熟した大根の種
220209 採取した大根の種
採種した大根の種


  根菜・葉物の中でも大根やかぶ、きゃべつのようなアブラナ科野菜は交雑しやすく、種採りには神経を使う。今回はアブラナ科の種採りについて、現時点でわたしたちが気を付けている事を紹介する。

アブラナ科の交雑相関関係

 次の内容は「農家が教えるタネ採り・タネ交換の本(農文協)」を参考にしている。この本は自家採種に取組むうえで結構に役に立つ情報があるため、おすすめだ。

 アブラナ科の野菜には大根やかぶ、キャベツ、白菜、小松菜、などなどたくさんの野菜がある。これらはさらにどの属に属するのかで分類することができる。

 大根、はつか大根が属するダイコン属、かぶやキャベツ、白菜、小松菜、水菜、ブロッコリーなど多くの野菜が属するアブラナ属、ルッコラが属するキバナスズシロ属、クレソンが属するオランダガラシ属などがある。

210419 大根の菜花
大根の蕾

 アブラナ属同士では簡単に交雑する。同じアブラナ属でも、かぶ・白菜・水菜・小松菜はお互いに良く交雑する。また、キャベツ・ブロッコリー・カリフラワー・ケールもお互いに良く交雑する。だが、かぶグループとキャベツグループ間では交雑しない。つまり、かぶとキャベツ、白菜とブロッコリーなどの組み合わせは交雑しない。

 ダイコン属はほとんど他の属とは交雑しない。まれにかぶグループのアブラナ属へ一方向の交雑見られ、大根の葉っぱをしたかぶの種が採れるなどの交雑がある程度だ。アブラナ属でもキャベツグループとは交雑しない。

 これらは属間の関係や染色体数(遺伝子が複数集まった構造体。同じ科、属でも種によって染色体の数が異なる)の違いによって交雑するしないが異なるが、複雑な話になるためここでは実際に交雑しない組み合わせだけ確認出来ればよい。

自家採種しやすい、交雑しないアブラナ科

 属間でも交雑しやすく、注意が必要なアブラナ科の自家採種だが、例外もある。

 まずはルッコラ。ロケットとも呼ばれる、ピリ辛な風味が美味しい葉野菜として人気がある。ベビーリーフとして使われる事も多い。
 ルッコラはアブラナ科キバナスズシロ属で、この属の野菜はルッコラだけである。このキバナスズシロ属は他のアブラナ科と交雑しないため、交雑の心配をせずとも自家採種できる。ルッコラに限った話ではないが、種が細かく、密に播くことが多いため意外と種代がかさむ。自家採種をすれば数株から大量の種が採れるため、遠慮なく播くことができる。

 次はのらぼう菜だ。あまり馴染みのない野菜だが、一部でファンが多い。越冬させ、翌春に抽苔した蕾を食べる。東京都や埼玉県の各地で古くから栽培されている伝統野菜で、江戸東京野菜の一つになっている。耐寒性が高く、江戸の飢饉では多くの人々を救ったと言われている。
 のらぼう菜はアブラナ属の野菜だが、他のアブラナ属との野菜と交雑しない。これは先に述べた染色体の数がのらぼう菜だけ特有の数であるためだ。また、自家不合和性がなく、自家受粉も容易にするという特徴もある。
 のらぼう菜はアブラナ科の中でもとりわけ特殊な野菜といえる。

 ルッコラやのらぼう菜は簡単に交雑のリスクを回避して種採りできる。

交雑しない組み合わせと種の寿命で複数品種の種採りを実現する

 交雑しないようにアブラナ科野菜の自家採種を行うには、一つの圃場で一つの品種の野菜のみ、種採りをすればよい。しかし、アブラナ科野菜は数が多く、なかなかそうはいかない。
 アブラナ科野菜は種の寿命が比較的長命(低温・乾燥下で五年ほど)のため、毎年種採りをするのではなく、一度に数年分まとめて採種すれば3,4品種なら交雑をあまり気にせず、品種を維持できる。
 さらにかぶグループとキャベツグループ間では交雑しないため、かぶとキャベツを同時に種採りすることも可能だ。

 また、交雑を防ぐ手段として、採種株が開花前に数株だけネットで覆ってしまうのも有効だ。ネットの外側には採種株と同じ品種が植わっている状態になる。これによって、飛来昆虫による交雑を防ぐと同時に、採種株への花粉供給源にもなる。
 ネットで覆うだけで、ネット外側に何も植えていないと、ネット越しに訪れた昆虫や風に乗って多品種の花粉がついてしまい、交雑の危険が高まる。

 そして、通常栽培で複数品種を栽培した場合は開花前(蕾茎が伸びてくるためすぐにわかる)に必ず食べるか、刻んで開花しないようにする。雑草にもアブラナ科の草があるため、開花前に摘み取ったりするなど交雑を避ける工夫をする。

 このようにすれば、アブラナ科野菜でも5~10品種くらいは自家採種できると考えている。ハウスがあれば、さらに簡単に採種品種を増やすことができるだろう。

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