【自然農】寒冷地での夏野菜栽培の悩みどころと改善案【トマト・ナス・ピーマン】

とにかく気温が上がらない五月

ナス科野菜は寒さを嫌う高温性野菜

 今年、わたしたちは夏のメイン野菜として、トマトやナス、ピーマンといったナス科の野菜を作付けした。誰もがイメージする定番野菜だ。
 野菜作りをしたことがある人からすれば、ナス科の実物野菜は気温が十分上がってきてから苗を植え付けると言うのが共通認識だろう。最適温度が20~30度で、しかも実を付けるまでに播種から約4カ月かかるため、最適温度となる期間だけの栽培はほぼ不可能だ。そのため、施設(ハウス)栽培や事前に苗を作って置く栽培が行われている。

 苗作りでの気温、地温確保も重要で、難しいポイントであるが、実際に畑に定植する時期を見定めるのもとても重要である。良い苗を作っても、植え付けた後の低温で苗が傷んでしまうと生育が鈍り、収穫も減ってしまう。特にナス科野菜は霜にあたると枯れてしまうため、要注意だ。
 そこで十分気温が上がり、地温も確保される時期を待ってから定植を予定することになる。

暖地の定植時期はGW前後だけど

 一般的にはGW前後にナス科野菜の苗を植え付けましょうということでホームセンターや園芸店で苗が並び始める。野菜の栽培本やインターネットで栽培法を見ても、そのように書かれている。しかし、この「GW前後」というのは関東地方の平野部や関西地方以西の地域での話だ。日本は南北に長く、地域によって気候がガラッと変わる。関東地方では通用する栽培も、北海道や山間部では全く通用しない。

 では何を目安に定植や種まきのタイミングを決めるのだろうか。トマトやナスなどは平均気温16度以上が一つの目安となる。平均気温16度というと最低気温12度以上、最高気温が25度を超える日も出てくる。農業県として知られる茨城県の県庁所在地、水戸市の気温データを見ると、例年五月十日前後には平均気温16度を超えてくる。もっと南の地方では4月中に16度を超えてくる地域もある。

 一方、私たちの住む長野県東信地方では、なんと六月十日前後になってようやく平均気温16度を超えてくる。五月十日前後なんて最低気温が5度を下回る日もあるくらいだ。五月下旬になっても、最低気温が一ケタの日はたまにあるし、雨の日は最高気温が15度に届かない日もある。これではなかなか夏野菜の勢いは出てこない。
 寒冷地では夏野菜の栽培期間が少なくとも一ケ月は短くなってしまう。寒くなるのも早いため、実際は栽培終了となるのも早い。

気温が上がり始めるころに梅雨入り

 寒い地域に住むものの宿命なのだ、と夏野菜のシーズンが短いのは甘んじて受け入れるしかない。多少短くなっても、健康に野菜が育ってくれる方が良い。

 ところが、問題は気温だけではない。六月に入ると気温は上がるが、同時に梅雨入りしてしまう。これは厄介で、なかなか畑に入れない日々が続く。不耕起栽培だと、多少雨が降った後でもなんとか作業はできるが、なるべく土を触りたくない所だ。
 しかも、雨が降ると気温が下がってしまう。定植直後の苗は弱っているため、気温が多少なりとも高い方が良い。腫れが続くと、光合成も盛んになり、根が伸びやすくなる。雨が降り続き、水分が十分あると、根がさぼってしまいなかなか活着しないということがある。

 そこで農業資材を活用して、定植時期を前倒しできるようにしたいところだ。

不織布トンネルは光明となるか

 通常の野菜作りであれば、マルチを張って地温を高めて、行灯をしたり、トンネルを掛けて保護してやることで、寒冷地でも五月中の定植にできる。でも、私たちはなるべく使い捨てのビニール資材を使いたくない。単純にマルチを剥がすのも手間だし、不耕起でやっているとマルチがとても使いにくい。マルチ栽培は、自然農最大の利点、草マルチで畝ごと肥やすという土作りができない。

 では行灯はどうだろうか。行灯は土をかき回すこともないため使いやすい。しかし、一応無肥料栽培を志しているため、行灯の被覆材として一般的によく使われる肥料袋を自分で用意することが出来ない。それに毎年、100株を超える夏野菜にそれぞれ行灯をするのは時間、資材ともに負担になってくる。

 そこで不織布を使ったトンネル設置を検討している。不織布とは「織らない布」で、通常の布とは違い、繊維を圧力や熱、接着剤などでくっつけたシート状の資材だ。水や太陽光を通す為、トンネル資材として活用されている。

.jpg
不織布
.jpg
不織布トンネル

 不織布も作るには膨大なエネルギーを必要とするが、マルチと違うのは使い捨てにならないと言う点だ。価格や品質はピンキリで粗悪品は使い捨てになってしまうようなものもあるが、しっかりしたものを選べば、数年、長くて10年以上も使い続けることができる。元が高価でも、何年も使えれば一年当りのコストはだいぶ減ってくる。
 一度に数十メートル分設置できるため私たちの栽培規模なら十分可能だと思う。

 不織布の保温効果は有用で、この辺りでは春先のレタス栽培には必ず使われている。地熱の放出を防ぎ、霜よけになったり、風が当たることで地温が下がったり、苗が痛むのを防いでくれる。

 おそらく最低気温が10度前後であれば、夜間は不織布トンネルをぴっちり閉めることで夏野菜を低温から防ぐ事が出来るだろう。最低気温10度というと、五月二十五日頃で梅雨入りまで十日以上は確保できる。地温も高く保てるため、活着も早く初期生育が良くなるはずだ。

 栽培期間を長くすると言うよりも、野菜が健康に育ちやすいかどうかを考えると不織布トンネルは割とありな選択肢になるのではないかと思う。

 今年は完全に被覆なしで夏野菜の定植を終えたが、生育が悪いようなら不織布トンネルでの保温を試してみたい。

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください