【自然農】寒冷地でのニンニク栽培。種ニンニクを植え付ける深さで違いはあるのか【ノーマルチ】

ニンニクを植える深さは何センチか

 ニンニク栽培はあまりすることがない。草の勢いが弱まる10月ごろに種を植え付けるため、年内は草取りもする必要がない。年を明けて春先になると多少草が生えてくるため、数回草取りをするだけだ。

 大きなニンニクを収穫するコツは追肥にアリ! と色々な所で言われているのを見る。確かに立派な、大きなニンニクは追肥の量、タイミング、何を使うかで結構左右されるらしい。

 だが、私たちは無肥料・無農薬栽培を基本としている。100点ではないけど、60点くらいのニンニクを資材の投入をしないで作りたい。それには自然の仕組みを上手く活用した土作りと、その土地に馴染んだ自家採種が欠かせないと思っている。そして、その土地に合った最適な栽培管理が求められる。

 ニンニク栽培ではできることはあまりない。種を植えたら、あとは草に負けない程度に草取りをするだけ。だから植える深さはとても大事な要素になる。ここでニンニクの一生が決まると言っても過言ではないはずだ。

 そこで今年はよりニンニクが本来の力を出せる栽培方法を探ることにした。

浅すぎると冬場に痛む、深すぎると太りが悪い

 ニンニクは秋に種球を植え付けて、年内に数センチくらい葉っぱが成長した状態で越冬することになる。そのさい、葉っぱは枯れても問題なく翌春に新しい葉っぱが出てくる。しかし、種球自体が寒さで凍ったりするとそのまま枯れていってしまう。

 そのため、深めに植えておかないと寒さの厳しい地域では冬越しできない。大根やニンジンなどを冬越しする際にも地中に埋めることで凍害から避けることができるのと同じ原理だ。

 ニンニク栽培の場合、深すぎると肥大が悪くなるため注意が必要だ。これについてはこれといった根拠があるわけではないがいくつか理由が考えられる。
 まず一つに、深さが浅い方が芽が出るのが早く、その後の生育期間が長くとれることがあげられる。ニンニクは発芽までに2~3週間かかるため、早く出た方が大きく育ちやすい。また春先も出芽も早くなり、肥大に有利だと思われる。
 二つ目に表土に近い方がより肥沃で豊かな土だからだ。特に自然農では耕す事をせず、草や残渣を地表に積んでいくことで土を肥やして行く。そのため、表層数センチがとりわけ豊かになっていく。深い所に植えてしまうと豊かな土に根を張ることが出来ず、結果生育と肥大が劣ることになる。

 これらから、ニンニク栽培では植え付ける種の深さが非常に大きな要因になってくる。

植え付け深さを二通りに分けて比較栽培

植え付け深さの設定

 2021~2022年のニンニク栽培では種を植える深さを二つに分けて栽培している。

 まず、当地の気候を確認する。御代田町は長野県にあり、隣町に全国的にも有名な軽井沢町がある。軽井沢町はケッペンの気候区分で亜寒帯湿潤気候に属する。御代田町は軽井沢町よりも2~300mほど標高が高いがほぼ同じ気候だ。
 年間平均気温は9度前後で冷涼であることがわかる。体感的には東北地方の沿岸地域とさほどわからない。冬は最高気温が氷点下の日もあり、最低気温は-15度付近まで下がることがある。

 ニンニク栽培という観点からみると、ここで栽培に適しているのはホワイト六片に代表される寒地系ニンニクだ。ニンニクの一大産地、青森県とも冬の降雪量以外は似た気候をしている。

 今回は植える深さが生育に及ぼす影響の検証として、二通りに分けて栽培してみた。植え穴の深さを①7cm、②10cmとした。それぞれ7cm、10cmの深さの穴をあけて、底に種ニンニクのお尻がぴったりつくように植え、土で埋めた。種の高さが約3cmあるため、種の頭から地表までは①4cm、②7cmとなる。

 寒冷地のニンニク栽培について調べると、植え付ける深さは5~6cm(全農青森)、6~7cm(JA庄内みどり)、10cm(宮城県登米)となっており、結構バラつきがある。しかも、この深さがどこからどこまでも深さなのかわからない。種の上に被せている土の深さなのか、この深さの穴に種を植えているのか、どちらかなのかによって約3cmの差が出来る。後で今年の比較結果を紹介するが、3cmというのは大きな差になった。
 このようにどこから何センチなのかわからないと栽培結果も変わってしまう。今回は指定の深さの穴をあけて、そこに種ニンニクのお尻をぴったり合わせるという基準を取った。

植え付けから四月までの様子

 2021年10月15日、ニンニクの種まきを行った。
 種は種苗店で購入した福地ホワイト六片1kgと昨年収穫したホワイト六片数十個を用意した。植え付け前に薄皮まで剥いて冷蔵庫で発根処理した。

 畝は植え付け1ヶ月前に生えていた草を刈り、植え付け前日にもう一度刈払機で深刈りした。地表をレーキで整え、大きな根は取り除いた。

 植穴は角材に印をつけてそれぞれ深さを一定にした。そこに種ニンニクを優しく置いたのが画像の通りだ。左側が深さ10cm、右側が7cmとなっており、見える種ニンニクから深さが違うのが分かると思う。

211015 ニンニクの植え付け
左側:10cm、右側:7cm

 それから1か月後、11月半ばに浅く植えた右側の列は芽が出そろい、もう少し生長すれば冬越しに理想的な大きさだ。一方、深植えの左側はまだ芽が出ていない。

211116 植え付け一ケ月後の様子 浅い方しか発芽していない
11月半ば。右側の浅植えは芽が出た

 春の兆しが見られる三月上旬の様子。結局深植えのニンニクは芽がちょこっと出ただけで冬越し。浅植えはある程度葉が残った状態で春を迎えた。この段階では浅植えの方が良い結果になると予想していた。

220307 3月上旬の様子。浅い方が大きい
三月上旬。右側の浅植えの方が生育が良い

 さらに一ケ月経過し四月上旬。深植え、浅植え、ほとんど差がなくなった。気温が上がりだし、一気に生長しだした。

220406 四月上旬 ほぼ差がなくなった
四月上旬。殆ど差がない。左:深植え、右:浅植え

五月から収穫まで

草取りと草マルチで肥大を促す

 五月に入り最高気温が20度を超えてきてからは、草の勢いが出てくるため、収穫まで二回程草取りをした。草マルチの下から生えて来た草をのこぎり鎌で地際で刈っていく。刈った草はそのままニンニクの周りに敷いて、地面の露出が無いように管理した。

 ニンニクは肥大に養分と水分を多めに必要とするため、ニンニクの根と競合する草は刈っておく。草マルチをしておくことで雨が少ない春先に水分を逃さないようにしておくことが大事だと思っている。

 このあたりではもう二通りの差は見受けられない。背丈は両方とも50cm近くまで伸び、茎の直径は1cmほどまで成長した。

220523 背丈の確認 50cmくらい
背丈は50cmを超えた。

収穫! 結果は10cm植えの方が良い!

 6月16日に収穫を迎えた。今年は梅雨入りが早く、雨が続くことが予想された為、例年より1週間ほど早いが収穫した。今回の比較は購入した福地ホワイト六片の種球のうち、大サイズ(概ね2cm×3cmほどのもの)の種の収穫物で行う。

 下葉も枯れ出し、ニンニクのお尻も平らになっていたため、早すぎるということはなかった。

 まずは浅植えの結果から。6cm以上の大サイズはなし、4.5~6cmは11個、4.5cm弱は13個、ミニサイズが5個という結果だった。

220622 大 7cm上
7cm、浅植えの結果
220622 大 10cm上
10cm、深植え

 一方、10cm、深植えの結果。6cm以上の大サイズが1個、4.5~6cmが14個、4.5cm弱が9個、ミニサイズが4個だった。

  合計 6cm以上 4.5~6cm 4.5cm弱 ミニサイズ
浅植え 29 0 11 13 5
深植え 29 1 14 9 4

 少しサンプル数が少ないため、分かりにくいかもしれない。売り物になるくらいのサイズが4.5cm以上とすると、浅植えでは11/29(38%)、深植えでは15/29(52%)と結構差がある。また小サイズも少なく、なんとなく大き目だ。
 ちなみにミニサイズは株の真下をモグラが通ったと思われる。この圃場がモグラが活発でしばしば野菜の根が傷んでしまっている。何個か確認したら空洞がぽっかり空いていたため、間違いないと思う。

 結果としては10cmの方が立派なニンニクが育ちやすかったと言える。次からは10cmの深さに植えていこうと思う。
 さらに病害も深植えの方が少なかったように感じる。特にさび病や紅色根腐れ病は浅植えの株に多く見られた。寒さでより根が弱った結果なのかもしれない。

まとめ 植える深さは10cmにする

 初期生育の良さや浅植えの方が豊かな表土の養分を吸いやすいと言った考察から、浅植えの方が大きいニンニクが収穫できると考えていた。

 しかし、実際は深さ10cmに植えた方がサイズが大きくなった。やはり寒冷地では凍害の影響が大きいのだろう。

 最近、無肥料環境で好成績をあげる「垂直仕立て栽培」に取組んでいる。ニンニクでもその効果があるか検証したいと思う。今回の結果を踏まえて、改めて検討するつもりだ。

【自然農】自家採種と連作3年目のスナップエンドウ栽培【連作障害は?】

自家採種した種は発芽率が良い

 今年栽培したスナップエンドウは自家採種3年目の種を使った。元はF1種の品種だったが、特に性質がばらけている様には感じなかった。

 自家採種をしていくと、種が圃場・地域の気候や環境を記憶して出来が良くなると言われているが、あまりそれは感じなかった。基本的に種採りを始めて種が馴染んでくるまで五年はかかると言われているため、もう少し気長に待とうと思う。

 発芽率が非常によく、9割以上発芽していた。昨年と同じ3月20日に種まきし、20日後の4月10日に出そろった。かなり正確で、この栽培スケジュールを記憶している様だった。発芽後も寒い日が続き、霜に当たることもあったが特に痛みも無かった。

220425 スナップエンドウの様子
4月下旬のスナップエンドウ

 今年は実験的に畝の半分を「芽だし」を行ってから種まきした。自然農法で栽培されている方が紹介していた方法で、寒い地方で春先の発芽率を上げるためのようだった。
→参考にした方のブログはこちら(春蒔きスナックエンドウの芽出し/無農薬・自然菜園(自然農法・自然農)で、自給自足Life。~持続可能で豊かで自然な暮らしの分かち合い~)


 種を一昼夜水に浸し、翌日水を切ってそのまま乾かないようにタッパーなどに入れて置く。すると数日後に根が出てくるので、伸びきる前に植えると発芽が揃い、早いと言うものだった。

220321 芽だししたスナップエンドウ
芽出しをしたスナップエンドウ

 発根処理自体は上手くいったのだが、その後の発芽率はあまり良くなかった。普通に直播した部分と発根した部分、葉の密度が全然違うのが分かると思う。後述するが、この比較は畝の肥沃度が全く違う部分で行ったため、種の播き方が全ての原因ではないと考えている。

連作を嫌うエンドウ類を三年連作した

 スナップエンドウなどのエンドウ類は一般に連作障害が出やすいとされている。一度栽培した土での栽培は最低三年は空けると言われている。連作障害としてどのような症状が出るのか、詳しい所はわからないが、生育が悪い、実ができない、病気が蔓延する、虫害が頻発するといったことが起こる。

 自然農、自然栽培では連作障害が起こりにくいと言われている。無肥料のため、肥料分の偏りが少なく、草を完全に除去しないため土壌生物もバランスが勝手にとれてくるためだと言われている。

 今年、スナップエンドウは昨年と比べると少し、生育、収穫共に良くなかった。これが連作障害なのだろうか。次の項目で今年の栽培がうまくいかなかった要因をいくつか考察しているが、特に誘引が上手くいかなかったのが原因だと考えている。
 病虫害もアブラムシなどが多少見られたが、そこまで気にならない程度だ。背丈も60~70cmほどまで伸び、順調に育つ株も多くあった。これらから考えると今年も連作障害はほぼ起こっていないと言える。

220612 50cm程まで育って実もついたスナップ
立派に育った株

支柱と誘引が上手くいかなかった

 結果的に今年の収穫量は少し少ない。生育を観察していても、どうも伸びが悪かった。原因として三つほど考えられるものがある。連作障害以外に次の原因があると考えた。

①土がよくなりすぎたand悪すぎた
 一つ目は土がよくなりすぎたという点だ。スナップエンドウを栽培した畝は春先に、ホトケノザ、ハコベ、ナズナなどの肥えた土に良く観察される柔らかくて背の低い草が旺盛に生えていた。隣の畝に作付したニンニクは三年間無肥料にも拘わらずかなり大きくなったものもあった。

220416 スナップの畝 草がいい感じ
ナズナやハコベ、ホトケノザが見られる


 マメ科の植物は比較的痩せた土を好むと言われている。そのため、土壌の肥沃度が高まったところではあまり生育が良くならなかったのだろうか。とはいえ、花が沢山付き、収穫も出来ているため、丁度良い肥沃度だったのかもしれない。
 一方、この畝は手前半分があぜ道に面しており、肥沃な草が多い。奥側は慣行栽培の圃場で際部分は除草剤が撒いてある。こちらは草がそもそもあまり生えておらず、今年はスギナが多く出てきていた。
 そのため、畝が肥沃とそうでない部分で半分半分になっていた。このうち奥側はスナップエンドウの育ちが悪く、結局ほとんど大きくならずに消えて言った株も多かった。手前はほぼ例年通りの育ちといえる。前述の種まき方法の違いも同じ範囲で試しているため、芽だしが良くなかったのか、土の肥沃度が足りていなかったのかはわからないため、もう少し実験が必要だ。

220619 育ちが良い部分のスナップ
手前側、良く育っている
220619 育ちが悪い部分のスナップ
奥側 スギナが目立つ

②春先の気温が低かった
 今年は昨年、一昨年と三月、四月、五月の気温が低かった。数値的には特に五月上旬が低くて最高気温が10度に届かない日もあった。肌寒い日が多いなと思っていた。
 うちの栽培方針は「使い捨ての資材はなるべく使わない」「なるべく土を動かさない」ため、ビニールマルチを使っていない。それもあって寒い日が続くと生育が緩慢になりがちなのだろう。ちなみに近くにあるスナップエンドウの慣行栽培の圃場ではうちの二倍のスピードで育っていた。

③支柱の立て方が甘く、誘引が上手く出来なかった
 一番の原因はこの支柱と誘引だと思っている。
 スナップエンドウは葉の先からツルを伸ばし、何が掴まることで身体を安定させる。逆にツルが固定されていないと生育が鈍ると言われている。

 誘引方法は数メートルおきに支柱を立てて、ネットを張るのが一般的だ。そして背が伸びて来たら、ツルが掴まれていない枝ごと、両側からひもで挟んで枝が上を向くように誘引していく。

220526 アサヒモを横に張ってある
10~15cm間隔でひもを張った

 今年の失敗点は支柱を深くさせなかったことでグラグラしてしまったことだ。不耕起でも草マルチの徹底で土がとても柔らかくなっていたが、柔らかすぎて簡単にぐらついてしまっていた。人力で差し込めるところから、ハンマーでさらに15cmほど叩き込めばよかった。

 また、ネットを使わずに栽培できないかと、横紐を何本も張ってネットに代わりにしようとした。麻紐をぴんと張ったが直ぐに緩んでしまい、スナップエンドウが上に伸びていけていなかった。また、風が吹くと根本から大きく揺さぶられていたため、それでかなり根が傷んだと思われる。

220615 緩みまくった紐
緩んだ誘引紐

来年の栽培に向けての改善点

 まず、適度な草刈りとしっかりとした被覆による土作りを引き続き行う。やはり草を敷いて1年たつと、土が柔らかく保たれ草の種類も変わってくると感じている。

 次に欠株を補うために補植用の苗を用意すること。畝の奥側はモグラによる苗痛みも多かった。補植用に苗を作って置いて、それを植えることで多少は畝の生産性が上がる。

 支柱はハンマーを使って、最低30cmは土に突き刺す。また、支柱が倒れないように適度に筋交いや畝の両端はひもで突っ張る補強をする。誘引先としては市販のナイロンネットの活用する。不耕起ならネットを常設することもできる。
 また、スナップエンドウの種まきと同時に、北側にライ麦を筋蒔きしておくのはどうかと思っている。一緒に育つことでスナップエンドウのツルが巻き付き先として活用できるし、強い北風を防ぐことができ、地温の維持にもつながる。

 今から来年の栽培が楽しみだ。

【自然農】寒冷地での夏野菜栽培の悩みどころと改善案【トマト・ナス・ピーマン】

とにかく気温が上がらない五月

ナス科野菜は寒さを嫌う高温性野菜

 今年、わたしたちは夏のメイン野菜として、トマトやナス、ピーマンといったナス科の野菜を作付けした。誰もがイメージする定番野菜だ。
 野菜作りをしたことがある人からすれば、ナス科の実物野菜は気温が十分上がってきてから苗を植え付けると言うのが共通認識だろう。最適温度が20~30度で、しかも実を付けるまでに播種から約4カ月かかるため、最適温度となる期間だけの栽培はほぼ不可能だ。そのため、施設(ハウス)栽培や事前に苗を作って置く栽培が行われている。

 苗作りでの気温、地温確保も重要で、難しいポイントであるが、実際に畑に定植する時期を見定めるのもとても重要である。良い苗を作っても、植え付けた後の低温で苗が傷んでしまうと生育が鈍り、収穫も減ってしまう。特にナス科野菜は霜にあたると枯れてしまうため、要注意だ。
 そこで十分気温が上がり、地温も確保される時期を待ってから定植を予定することになる。

暖地の定植時期はGW前後だけど

 一般的にはGW前後にナス科野菜の苗を植え付けましょうということでホームセンターや園芸店で苗が並び始める。野菜の栽培本やインターネットで栽培法を見ても、そのように書かれている。しかし、この「GW前後」というのは関東地方の平野部や関西地方以西の地域での話だ。日本は南北に長く、地域によって気候がガラッと変わる。関東地方では通用する栽培も、北海道や山間部では全く通用しない。

 では何を目安に定植や種まきのタイミングを決めるのだろうか。トマトやナスなどは平均気温16度以上が一つの目安となる。平均気温16度というと最低気温12度以上、最高気温が25度を超える日も出てくる。農業県として知られる茨城県の県庁所在地、水戸市の気温データを見ると、例年五月十日前後には平均気温16度を超えてくる。もっと南の地方では4月中に16度を超えてくる地域もある。

 一方、私たちの住む長野県東信地方では、なんと六月十日前後になってようやく平均気温16度を超えてくる。五月十日前後なんて最低気温が5度を下回る日もあるくらいだ。五月下旬になっても、最低気温が一ケタの日はたまにあるし、雨の日は最高気温が15度に届かない日もある。これではなかなか夏野菜の勢いは出てこない。
 寒冷地では夏野菜の栽培期間が少なくとも一ケ月は短くなってしまう。寒くなるのも早いため、実際は栽培終了となるのも早い。

気温が上がり始めるころに梅雨入り

 寒い地域に住むものの宿命なのだ、と夏野菜のシーズンが短いのは甘んじて受け入れるしかない。多少短くなっても、健康に野菜が育ってくれる方が良い。

 ところが、問題は気温だけではない。六月に入ると気温は上がるが、同時に梅雨入りしてしまう。これは厄介で、なかなか畑に入れない日々が続く。不耕起栽培だと、多少雨が降った後でもなんとか作業はできるが、なるべく土を触りたくない所だ。
 しかも、雨が降ると気温が下がってしまう。定植直後の苗は弱っているため、気温が多少なりとも高い方が良い。腫れが続くと、光合成も盛んになり、根が伸びやすくなる。雨が降り続き、水分が十分あると、根がさぼってしまいなかなか活着しないということがある。

 そこで農業資材を活用して、定植時期を前倒しできるようにしたいところだ。

不織布トンネルは光明となるか

 通常の野菜作りであれば、マルチを張って地温を高めて、行灯をしたり、トンネルを掛けて保護してやることで、寒冷地でも五月中の定植にできる。でも、私たちはなるべく使い捨てのビニール資材を使いたくない。単純にマルチを剥がすのも手間だし、不耕起でやっているとマルチがとても使いにくい。マルチ栽培は、自然農最大の利点、草マルチで畝ごと肥やすという土作りができない。

 では行灯はどうだろうか。行灯は土をかき回すこともないため使いやすい。しかし、一応無肥料栽培を志しているため、行灯の被覆材として一般的によく使われる肥料袋を自分で用意することが出来ない。それに毎年、100株を超える夏野菜にそれぞれ行灯をするのは時間、資材ともに負担になってくる。

 そこで不織布を使ったトンネル設置を検討している。不織布とは「織らない布」で、通常の布とは違い、繊維を圧力や熱、接着剤などでくっつけたシート状の資材だ。水や太陽光を通す為、トンネル資材として活用されている。

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不織布
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不織布トンネル

 不織布も作るには膨大なエネルギーを必要とするが、マルチと違うのは使い捨てにならないと言う点だ。価格や品質はピンキリで粗悪品は使い捨てになってしまうようなものもあるが、しっかりしたものを選べば、数年、長くて10年以上も使い続けることができる。元が高価でも、何年も使えれば一年当りのコストはだいぶ減ってくる。
 一度に数十メートル分設置できるため私たちの栽培規模なら十分可能だと思う。

 不織布の保温効果は有用で、この辺りでは春先のレタス栽培には必ず使われている。地熱の放出を防ぎ、霜よけになったり、風が当たることで地温が下がったり、苗が痛むのを防いでくれる。

 おそらく最低気温が10度前後であれば、夜間は不織布トンネルをぴっちり閉めることで夏野菜を低温から防ぐ事が出来るだろう。最低気温10度というと、五月二十五日頃で梅雨入りまで十日以上は確保できる。地温も高く保てるため、活着も早く初期生育が良くなるはずだ。

 栽培期間を長くすると言うよりも、野菜が健康に育ちやすいかどうかを考えると不織布トンネルは割とありな選択肢になるのではないかと思う。

 今年は完全に被覆なしで夏野菜の定植を終えたが、生育が悪いようなら不織布トンネルでの保温を試してみたい。

【自然農】年明けから五月までに行った実際の畑仕事【寒冷地】

ニンニクの草整理

 ニンニクは越冬させるため、かなり畑に居る期間が長い作物だ。寒い季節とは言え、約8カ月もいると結構草が生えてくる。特に春先から一番肥大する収穫直前はあっという間に草が生えてくるため、しっかりと草取りをする。

220313 ニンニクの予数
3月中旬のニンニク

 ニンニクは水分を必要とする為、五月の連休前にはしっかりと草取りをして、草マルチをしておいた。五月下旬くらいは雨も少なく、乾燥気味だったため草マルチによる湿り気の維持は重要だ。

220505 ニンニクと草
五月上旬のニンニク。草が目立っている

 今年は購入種(福地ホワイト六片)と自家採種した種(ホワイト六片)を栽培している。購入種は粒が大きく、自家採種のものは無肥料で育てたもののため、一回り小さかった。そのせいか、生育にかなり差があった。肝心のニンニクはどうなっているかはまだ分からない。五月二十日ごろに試しに掘ったところ、福地ホワイト六片は既に直径7cmほどになっていたので期待できる。

 植え付けの深さを二種類に分けて栽培したが、その結果も楽しみだ。

春の定番、スナップエンドウ

自家採種二年目、連作三年目の種まき

 一般的には晩秋に種まきし、ある程度育った状態で越冬させるが、冬の気温がマイナス10度にもなる私たちの地域では寒さに強いエンドウでも越冬できない。そこで春の気配がする三月ごろに種まきをして育てている。

 私たちはスナップエンドウから畑が始まるので結構思い入れのある野菜だ。もとはF1品種のホルンスナックという品種だが、自家採種2年目の種を使った。昨年の栽培で育ちの良かった株から自家採種した。

 例年通り、霜に当たっても苗が枯れないぎりぎりを狙った三月一五日に種まきをした。相変わらずモグラの穴が至る所にあるため、なるべく位置をずらして播いた。約二十日ほどで発芽する予定だったが、植物は正確なようで四月五日ごろにしっかり芽を出してくれた。

 試しに催芽をしてから種まきしてみたが、これは微妙だった。管理が悪かったのかもしれないが、発芽率も悪かった。普通に直播した方がその後の生育も良かった。

220321 芽だししたスナップエンドウ
芽出しをしたスナップエンドウ

支柱立てはしっかりと挿すことを学んだ

 発芽後は収穫まで、草に負けない程度に草刈りをして、誘引していくことになる。適切なタイミングで誘引するのが、生育の良しあしにも大きくかかわってくる。

 今年も支柱を2,3メートルおきに挿し、高さ10cmおきに紐をはって、ツルが巻き付けられるようにした。生育に応じて、両側からひもで挟んで縦に誘引していく。

220425 スナップエンドウの様子
4月下旬のスナップエンドウ
220518 スナップエンドウの様子
五月中旬のスナップエンドウ。ひもが緩んでいるのが分かる。

 ひもには麻紐を使った。しかし、ひももピンと張っても、数日後にはゆるゆるになってしまっていた。麻紐自体が伸びているのか、支柱自体が傾いているせいなのか、とにかく緩んでしまい、うまく誘引できなかった。ツルも上に上に巻き付くことが出来ていなかった。
 支柱はハンマーで打ち込むなどしてしっかりと動かないくらい挿すべきだった。また、インゲンネットを使って誘因をきっちりすることを優先した方が良いだろう。

 全体的に生育が鈍い気がするのだが、誘引が上手く出来なかったのが原因だと思っている。今のところ、目立った病害虫は発生しておらず、連作障害らしき症状も出ていない。

夏野菜の育苗(ナス科)

種まきから植え付け前まで

 今年は完全に畑の土を使っての育苗に切り替えた。その方が畑に馴染むのも早いだろうし、自分たちの身の周りで完結する農業になると思っている。→【自然農】育苗土を畑の土を使って手作りする方法とその理由

 また、植え付け時期を6/10(最低気温が10度以上で安定してくる)に設定し、種まきはそれに合わせて3/25前後とした。三月終わりとは言え、気温はかなり低く最高気温がようやく15度に届く日がたまにあるといった気候だ。
 夏野菜の発芽には厳しい低温のため、ポケット芽だしで発芽を促進させた。これは上手くいき、揃いは悪かったものの無事発芽した。

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ポケット芽だし。この状態の種をポットに播く

 発芽後は晴天時のみ外で日光をあてて、夜間は室内に取り込んでを繰り返した。五月半ばになっても、霜が降る日もあるくらいなので五月下旬になり、ようやく夜も外に出すようになった。【自然農】畑の土と陽だまり育苗の夏野菜苗。種まきから約40日経ってどうなった?

トマトは五月二十五日に植え付け、昨年より順調

 トマトはナス科野菜の中でも、比較的低温に強く、霜の心配がなくなれば植え付けも出来るため、五月二十五日に定植した。苗の大きさは本葉5,6枚、少し小ぶりだが昨年の苗よりも良い苗に仕上がった。完全無肥料の苗とは思えないほど葉ツヤも良い。

220522 定植期のトマト苗
播種57日目。定植時のトマト苗。

 定植後、何度か10度以下になった日もあったが、順調に成長している。今年はモグラの被害が少なく、ゆっくり大きくなり出している。花房が確認できるものもあり、もうじき背丈が25cmほどになる。昨年はほとんどトマトが収穫できなかったため、今年は期待している。

里芋の芽だし、植え付け

 去年の失敗から、今年は種イモの芽だしを行って、初期生育を確保するつもりで里芋栽培を始めた。

 五月二十五日定植予定で、四月二十五日にポットに植えた。基本的に家の中で管理し、葉っぱが見え始めてからは外に出して日光に当てた。

 本葉が展開する前に畑に植え付けだ。催芽の効果は絶大で、数日後には葉っぱが展開しだした。すでに本葉2,3枚となり、本格的な梅雨の前に一回目の土寄せが出来そうだ。そもそも芽が出なかった昨年とは大きな違いだ。芽だししておくのは寒冷地では必須の栽培技術となりそうだ。

220525 定植時の里芋芽だし
定植時の里芋
220531 定植2週間後の里芋
定植二週間後の様子

 梅雨が明ける前に雨の合間をぬって、二回目の土寄せをしたいところだ。里芋はどうしても土寄せをしないと収穫はあまりできないため、不耕起栽培との相性が悪い。時間もかかるため、あまり大量には栽培できないが、自家用分なら十分である。今年は自分の中でマイブームの「垂直仕立て栽培」を里芋でも試してみようと思っている。

ズッキーニはもぐらの被害で不調、でも解決策を見つけた

 ズッキーニはたくさん出来るし、美味しいのでぜひとも作りたい野菜で、今年も栽培を始めている。

 昨年、苗を作ったもの以外、ほとんどモグラに根を痛められて大きくならなかった。そのため、出来るだけ苗を作って定植してみることにした。最初は四月十五日に播種して、本葉2枚目まで、五月十五日に定植した。苗自体は綺麗に出来て、根鉢をできていた。

 しかし、やはりモグラに苗の真下を通られてしまい、どんどん葉っぱが黄色くなってしまった。何度か埋め戻したものの、どうやら本道のようで、すぐ穴が復活していた。すっかり頭を抱えてしまっていたが、二つ解決策を思いついたので早速実践中である。

220525 モグラで成長が止まったズッキ^-ニ
生長が止まるズッキーニ

 それは定植した苗の周りに割りばしをぐるっと差し込んでモグラが近くを通らないようにすることだ。安価で土に還る資材なので導入も簡単だ。

220602 割りばしでモグラよけをしたズッキーニ
苗の周りを割りばしで囲む


 定植した第二弾の苗の周りの直系20cmほどに16本ほど割りばしを挿した。これが今のところ効果ありのようだ。今までは定植後数日で葉っぱが黄色くなり始め、生長がストップしていたが、今回対策してから植えた苗は三日ほどたっても、葉が緑色で元気に育っている。株周りもモグラが通った形跡はなさそうだ。

 もう一つはとにかく数を増やす作戦だ。多少モグラにやられても半分くらいは生き残るはず。その精神でとにかく数うちゃあたる作戦だ。育苗する分と直播する分でたくさん種まきしようと思っている。自家採種に成功すれば、種は売るほど手に入るため、無理な方法ではない。

 この二つの作戦で、何とかズッキーニは上手くいってほしい。

その他種まきをした野菜

・大根、ルタバガ→五月十日
・いんげん豆→五月十五日、畑に直播
・エンサイ→五月二十日、ポット育苗
・ナス、ピーマン→五月二十八日、試しに定植
・ミニトマト→五月二十七日、畑に直播(8日目に発芽確認)