垂直仕立て栽培とは
『垂直仕立て栽培』は道法正徳さんが提唱する、植物ホルモンを最大限生かして無肥料でも収量・食味ともに優れた野菜が育つ栽培法だ。詳しくは【DOHO STYLE】垂直仕立て栽培は無肥料栽培で生きる【道法正徳】をご覧頂きたい。
今年、様々な品目の野菜で垂直仕立て栽培を実践してきた。定番のナス科野菜や一工夫が必要な根菜まで通常栽培と比較する形で栽培してみた。
各野菜の実施記録
ミニトマト・トマト
一番成果が分かりやすかったのはミニトマトだ。昨年、栽培したミニトマトは40株近く植えて収穫できたのは数える程度という大失敗だった。(→【自然農】2021年のミニトマトが全然できなかった理由とその対策【不耕起・無肥料】)その問題点を改善し、今年の栽培をスタートさせた。
まず、栽培した場所は昨年と全く同じだ。さらに、いわゆる肥料や堆肥は一切投入していない。草を刈って敷く事を繰り返し、冬になってもそのままにしておいた。無肥料・無農薬・不耕起・草生で三年目の土だ。
品種に関しても、同じものを栽培した。2020年の栽培で自家採種したものだ。2021年のトマト栽培ではほとんど実が穫れなかったので自家採種も行わなかったからだ。
その他マルチなどの資材も一切使用していない。今年変わったのは育苗期間と垂直仕立ての有無だけということになる。
今回紹介する事例は、40株近くある中で15株を無作為に垂直仕立てにしたものだ。しかも、交配種を自家採種した雑種二代目のため、種によっても生育にかなりばらつきがでる。それを考慮したうえで聞いてほしい。
脇芽は一切とらず、枝が広がってきたらあさひもで縛り付けた。しばらくすると下の方から脇芽を伸びてくるため、それも支柱に縛り付けていく。
一番良く育った株はぐんぐん伸びて、背丈を超えるくらいまで育った。脇芽を取らないと茂りに茂って、収拾がつかなくなるイメージがあるが、無肥料のせいか脇芽の数は10本程度に落ち着いていた。
垂直仕立て栽培は植物ホルモンのバランスが整い、実付きも良くなると言われている。花付きも実付きも良く、段数が上になっても一つの果房に10個近くの実がついていた。追肥をせずとも最後の果房まで実が付いた。
霜が降るまでの間、最後まで花が途切れることなく、収穫できた。脇芽をとらないため、収穫段数は10段を超えた。
味に関していえば、垂直仕立てにして、良く育った株はそうでない株に比べて美味しくなったと感じた。一番良く育った株は特に甘く、実割れも少なかった。真夏や秋口に雨が沢山降っても殆ど割れずに完熟するまで収穫を待てたのも良かった。
縛りやすいナス・縛りにくいピーマン
次は垂直仕立て栽培ではっきりと管理のしやすい、しにくいが分かれたナスとピーマンだ。
ナスは元々脇芽が少なく、無肥料のためさらに発生が抑えられていたのもあってか、垂直に縛っていく作業がやりやすかった。茎もしなりやすく、15cmおきにぐるりと縛っていくことが出来て、誘引が追いつかなくて大変と言うことは無かった。
一方、ピーマンは垂直に縛っていくのがとても大変だった。ピーマンが脇芽がとても多く、全ての枝が二本、三本に分かれていく。そのため、花の咲き始めは良いが、3段ほど花が付く頃には枝が多すぎて縛れなくなってしまった。
垂直仕立て栽培ではホルモンバランスが乱れるため、脇芽が欠かないことになっている。しかし、ピーマンに関しては茂りすぎてしまうため、最初の2か月間は脇芽が12本くらいになるように脇芽を2,3日に2,3本ずつ脇芽を欠いた。枝を整理すると、まとまりやすく縛りやすくなった。
これは改善しないといけないと思ったのが、ナスの実が傷ついてしまうことだ。今年栽培したのは丸ナスだったのだが、縛った枝についたナスが支柱や枝に擦れて傷になってしまうことが多かった。普通であれば斜めの枝にぶら下がっているから良いのだろう。。
通常の長ナスでは垂直に縛っても、傷にならず綺麗なナスが採れるらしい。丸ナスは玉が膨らんでいくから擦れやすいのだろう。
ピーマンに関しても、垂直に縛ると内側がもさもさになって、摘果や収穫がやりづらくなってしまう。枝に挟まってしまうと大きくなる時に食い込んでしまって、形がいびつになってしまうことがあった。さらに奥に手が届かず、見通しも悪いため、変形果や受精不良果を摘果するのが遅れてしまった。
摘果の遅れは樹勢を落とし、病気にもなりやすくなるため、こまめに手入れするのが大切だ。もう少し時間を掛けて、丁寧に縛っていく必要があるだろう。
里芋
里芋のような根菜も垂直仕立てにすると収量があがり、良く育つようになる。そこで今年栽培した里芋のうち、半分を垂直にしてみた。
やり方は、支柱を両端に立てて、二本の紐で挟み込むようにして葉を立たせた。こうすることで、葉っぱが広がらず、通路を歩きやすくする効果もある。葉も風で振られたり、歩く際に当たったりして痛むことがなく、病気にもなりにくいと言われている。
今年は垂直に縛るのが上手くいかなかったのかもしれないが、生育が良くなったり、収量が増えたという実感はなかった。それよりも土質にムラがあり、その生育差が良く出たと思っている。
里芋の垂直縛りに関しては、来年も試してみたい。葉っぱが広がり過ぎず、管理がしやすい点は良いと思う。
根菜類
根菜類は株数が多い為、二本の紐で挟み込むようにして葉っぱを立たせる。こうすることで虫食いが減り、カブやダイコンは肥大が良くなると言われている。
試しに秋まきの根菜類で垂直仕立てにしてみた。セオリー通り、二本の紐で挟み込んでみた。紐を張ったときはきれいに立っているが、数日経つとひもが緩んでしまうため、誘引できなくなってしまった。
使った紐はバインダー用の麻紐。3本撚りの紐だが、少し緩めに編まれているのか、すぐに緩んでしまうようだ。同じ麻紐でも6本撚りはきつめなため、緩みにくいと思う。来年はそれを使って、誘引に挑戦したいと思う。
垂直縛りの効果としては、若干肥大が良かったように思えた。里芋同様、しっかりとした比較になっていないため主観になってしまうが、垂直にしている方が生育が早く、傷もない綺麗な物が穫れたと思う。
とにかく一株ずつ縛るのは現実的では無いため、一列まとめて縛ることができる方法を確立したい。葉っぱを垂直にすることで風通しも良くなって病気が減り、草取りもやりやすいため今後もやってみたいと思う。
来年に向けて
垂直仕立て栽培は無肥料で十分な収量が穫れて、味も良くなると言う魔法のような栽培法だ。今年、実際に色々な野菜で比較してみて、今後わたしたちの食糧生産を手助けしてくれる可能性があると確信している。
確かに縛るのは慣れないと難しく、時間が掛かってしまうこともある。しかし、畑に行ったときに一通り見まわるついでに縛ってやれば、縛るのが遅れて大変なことにはならない。結果的に通常栽培よりも良品率も上がり、味も良くなるなら多少の手間を惜しまずやって行こうと思う。
逆に垂直仕立てにするメリットを感じない作物もある。鷹の爪は分枝を繰り返し、花を咲かせていくが、垂直に縛ろうが縛らなかろうが最終的な収穫、生育に差は感じられなかった。
人参もうちの畑では垂直に仕立てるメリットはなさそうだ。人参に関しては品種選びが上手くいっており、そもそも生育が良く、綺麗で美味しい人参が無肥料・無農薬でも栽培できているため、垂直仕立てにはしないつもりだ。
今年はできなかったが、やってみたいものとしては玉ねぎとニンニクがある。どちらも大きなものを収穫するには肥料が欠かせないと言われており、無肥料・無農薬では難しい野菜の一つだ。
垂直仕立て栽培は無肥料で真価を発揮する栽培法だ。一般的には無肥料では育たないと思われている野菜は垂直仕立て栽培を試してみる価値ありだ。