近年注目を集めるビーツという野菜
ほうれん草の仲間? 江戸時代から日本にあるビーツ
ビーツという野菜を食べたことはあるだろうか。特徴的な深紅色の根菜で、最近ではスーパーでも見かけるようになってきた。というのも、ビーツは他の野菜よりも栄養素を豊富に含むスーパーフードとして注目されているからだ。
しかし、まだまだ珍しい野菜であるビーツ。日本ではあまりなじみはないし、売っていてもどうやって食べればいいのか、となかなか手が出ない人もいるだろう。
まずビーツはその形からかぶや大根といったアブラナ科の根菜の仲間だと思われがちだ。実はビーツは全くの別物。一番近い仲間はほうれん草だ。ほうれん草はヒユ科の野菜。ビーツは根部を主に食すヒユ科の野菜なのだ。
その歴史は古く、日本では江戸時代から栽培されてきた。当時は赤い色から「火焔菜」と呼ばれていた。歴史の割にあまり広く知られている野菜ではないのは、やはり食べ方が難しいからだろうか。
世界を見ると、その歴史はさらに古く、なんと紀元前1000年ごろに古代ローマ人が利用していたと考えられている。その栄養価から民間療法の薬効まで期待されていたようだ。東欧では盛んに食され、ウクライナの伝統料理、ボルシチに使われている。
ビーツに含まれる豊富な栄養素
ビーツが最近注目されているのは、その栄養価の高さ。他の野菜と比べても群を抜く含有量だ。
ビーツは深紅といっても良い赤さが特徴的な野菜だ。その赤色はベタシアニンというポリフェノール由来で、ほうれん草の根元部分の赤色と同じだ。
ベタシアニンはベタレインという物質の一種でその仲間にベタキサンチンという黄色の色素がある。このベタシアニンとベタキサンチンのバランスでビーツの色合いが決まる。一般的なビーツは赤紫色でベタシアニン主体だが、黄色や白色になる品種もある。
ベタキサンチンが多いと黄色になり、どちらも少ないと白色のビーツになる。
ビタミンも豊富で、特にビタミンB類が多く含まれている。中でも葉酸は200gのビーツ(普通サイズ)に一日に必要な量が含まれている。
他にも血管を拡張させ、血流を改善する硝酸イオン(NO)や重要な微量元素であるホウ素、腸内環境を整える食物繊維も豊富に含まれている。まさに栄養の宝庫といえる。
ビーツは土臭い? しっかりと茹でることが大切
ビーツと聞くと、ちょっと……と思う人もいるだろう。というのもビーツは味の個体差が激しく、ひどいものは土臭くて食べられないレベルのものもある。また秋作の根菜あるあるで、寒さにしっかりとあてると甘みが増して美味しくなる。逆に時期が早いと味が乗っていないことがある。
実はわたしたちもビーツは苦手だった。買ったビーツも自分の畑で栽培したビーツも、とても土臭く生では絶対に食べられなかった。ビーツの栽培自体も初めてで種まき時期を掴めず、大きくなる事無く冬になってしまうこともあった。
ビーツの臭みというかエグミは、栽培方法(土質や品種、肥料など)で変わるようだ。北海道のビーツ農家さんは本当においしいビーツは生でも美味しく食べられると言っていた。
とはいえ、どうしても臭み、エグミがある場合は下処理が必要になる。一般的には必ずと言ってよいほど下処理をした方が美味しく食べられる。
塩で揉む、下茹でする、酢につける
臭みが少ない場合、生のままサラダで食べたい場合は塩で揉む。胡瓜や青菜でも良く行う技法だ。塩もみすることで水分と一緒に臭みなどが抜けることで食べやすくなる。ビーツをサラダに使うと、色鮮やかで見た目にも楽しい。
余談だが、ビーツを生のまま荒おろしにしてドレッシングに混ぜるという食べ方もある。
もし、しっかりと下処理したい、火を通して食べる場合は下茹でをする。
ビーツはなるべく皮つきのまま丸ごと茹でる。すると色合いが保たれて、栄養も無駄にならない。大きさにもよるが、野球ボールくらいなら20分くらい煮れば柔らかくなる。目安は竹串がすっと入るくらいだ。
ゆで上がったビーツは粗熱をとっておく。触れるようになったら指でしごくようにすると、簡単に薄皮が剥ける。あとは食べやすい大きさに切って、好きな料理に使う。
定番のボルシチはもちろん、そのまま5mm幅に切って塩とオリーブオイルでいただくとビーツそのものを味わえる。
茹でたビーツは冷凍して保存して置くこともできる。適当な大きさにカットして、ジップロックバッグなでに入れて冷凍する。1ヶ月くらいなら日持ちする。いつでも使えるため、ふとした時に料理に入れることができる。
またビーツはピクルスにして食べられることが多い。特にアメリカやカナダではビーツをピクルスにするらしい。これはビーツの土臭さが酢によって分解され、食べやすくすることを意図しているではないだろうか。酢漬け(ピクルス)は賞味期限も長く、良い保存食になる。
ビーツの活用レシピ
ビーツのポタージュ
ビーツといえば、ボルシチというくらい真っ先に思いつく組み合わせだろう。ビーツがなければボルシチとは言えないと言っても良いほど欠かせない食材だ。今回はあえてボルシチではない活用法を紹介したい。
最初はスープ系でおすすめなのがビーツのポタージュだ。加熱してミキサーにかけることで余すことなく栄養を摂ることができる。
イタリアンシェフの「Chef Ropia」さんという料理人Youtuberが自身の動画でビーツのポタージュ(プロが教える「ビーツと玉ねぎのポタージュ」)を紹介している。リンクを掲載するのでぜひ見て欲しい。
色鮮やかで食欲をそそられるポタージュだ。ビーツ単体だけではなく、玉ねぎやじゃが芋などとあわせてポタージュにするとより味わい深くなる。
ビーツのペペロンチーノ
次に紹介するのはビーツの茎葉まで余すところなく活用できるビーツのペペロンチーノだ。鮮やかなピンク色でほんのりビーツの風味がするパスタだ。
ビーツは根部だけでなく、茎葉も美味しく食べられる。ほうれん草の様な見た目だが、味はビーツの風味が加わる。この茎葉を刻んで入れることで丸ごと楽しめる。もし、葉付きビーツが手に入ったらお勧めしたい一品だ。
沢山ある! ビーツの活用レシピ
ビーツは長い間食べ続けられてきた野菜なだけあって、様々なレシピがある。
今私たちが気になっているのは、ビートクヴァス(Beet Kvass)と呼ばれる、ビーツを発酵させたドリンクだ。発酵は暮らしを豊かにしてくれる素晴らしいものだ。ビーツも発酵の力で美味しく、健康に良い食べ物にすることができる。日本語の情報がほぼなく、私たちもまだ試していない。
今年ビーツが大きくなったら実際にやってみようと思う。