自然農で栽培する難易度の高い野菜
3年間、自然農で野菜を栽培してきて、様々な種類の野菜を栽培してきた。
その中でも栽培しやすいもの、しにくいものがある。それは養分をどれだけ必要とするか、虫に食べられやすいか、病気になりにくいか、などで変わってくる。例えば、マメ科は自然農では栽培しやすい。それはマメ科に共生する根粒菌が窒素を空気中から固定し、養分を確保しやすいからだ。大豆なんかはかなりよくできたし、今年初めて栽培したインゲン豆も鈴なりだった。
またナス科は育てにくい物が多いのだが、唐辛子はよくできた。苗作りの段階で、アブラムシが多少着くだけでその後は病虫害に悩まされる事無く収穫できた。毎年よくできている。
自然農で育てにくいのはアブラナ科、特に小松菜や白菜、キャベツなどの葉物野菜だ。自然農でなくとも、無農薬栽培でも難しく、夏植え秋採りの一般的な作型は無農薬はほぼ不可能だと言われている。
しかし、今年私が栽培している小松菜や白菜は多少の虫食いがあれど、良く育っている。今回はそれらを中心に秋作のアブラナ科類の生育状況をお伝えしていく。
アブラナ科でも根菜は良く出来る
アブラナ科の中には主に葉を食べる葉菜類と肥大した根を食べる根菜類がある。
大根、かぶなどの根菜類は比較的栽培しやすいと感じている。多少葉を食べられても根っこには影響がないし、養分を吸収する力も大きいのだろう。
今年は自家採種した信州地大根と北欧の野菜、ルタバガを中心に、はつか大根や紅心大根などのミニ系、カブも二品種栽培している。どれも良く育っている。やはり、気温が高い、8月中頃に播いたものは虫食いも目立つが、9月になってから播種した野菜は基本的に食害はない。
特にはつか大根は生育が早い事もあり、とてもきれいにできた。発色、形ともによく虫食いもあまり目立たない。品種は「カラフルファイブ」で固定種である。一般的に固定種は無肥料・無農薬栽培に適しているものが多く、この品種が良く出来るのはそれもあるのかもしれない。
カブは大根に比べて葉っぱが柔らかく、虫食いは比較的目立っている。それでも生育が鈍るほど食べられるわけではなく、実は肥大が始まっているため無事収穫に至ると思っている。
また、うちの畑は基本的に不耕起で、長い所では3年間不耕起となっている。大根を栽培している畝も最初に耕された状態で畝を立てて以来、一切耕していない。
一般的に大根は「大根十耕」という言葉があるように、深く何回も耕して、ふかふかの土にしないと真っ直ぐ育たないとされている。しかし、うちの大根は不耕起の土でも、真っ直ぐ育っている。間引きの際に根っこも状態を見てみたが、又根になっている株はほぼなかった。無肥料・無農薬に加えて不耕起でも根菜類は問題なく育ってくれることを証明できるなと思っている。
無農薬での白菜、小松菜類栽培は難しい
一方、一般的な葉物野菜の小松菜はかなり葉を食べられてしまった。それでも、無農薬栽培でよくある、葉脈以外はまるまる食べられていると言うわけではない。新しい葉っぱが出てきているし、大きくなってはいる。
特に難しいと言われているのは白菜だ。キャベツなどの結球野菜は無農薬ではほぼ不可能だと言われている。結球にも多くの肥料が必要とされているらしく、無肥料では結球しないとされている。そもそも、キャベツや白菜は種まきから収穫までの期間が長く、その間に病害や食害のダメージが蓄積してしまうのだと思う。
しかし、実践者の事例を見ると、無肥料・無農薬栽培で白菜の栽培を成功されている人はいるようだ。今回も「島の自然農園」さんの白菜栽培の経過観察の動画(【自然農】白菜成長記録 理想の白菜の育ち方 2021年12月28日【natural farming】)をリンクされて頂く。慣行農法の出荷サイズ(2~4kg)まで育つのはなかなか難しいだろうが、虫食いも最小限に抑え、小玉サイズに成長した白菜を見たことがある。
なぜ、虫食いが少なく済んでいるのか。そして、消毒を一回もせずとも今のところ病気も無いのか。その秘訣はやはり無肥料にあると思っている。
虫は過剰に植物が吸い上げた肥料分を狙って、食害を起こすと言われている。それは化学肥料の施用にやり、過剰な養分が吸収しやすい形で土にあるからだ。一方、無肥料栽培を続けていくと、周りには養分があまりないため、必要最低限の養分を根っこをしっかりと伸ばしながら集めることになる。
結果として、無肥料栽培では過剰な、虫の食べたい養分が少なく、根っこも初期にしっかりと張るため、それに応じて地上部も健康に育っているのではないだろうか。自然農、自然栽培実践者の方々も同じようなことを言っている方が多い。
そして無肥料栽培といえば、垂直仕立て栽培である。垂直栽培なら白菜も無肥料でしっかりと巻くらしい。そろそろ縛れるサイズになってきたため、垂直縛りにして様子を見てみたいと思う。
アブラナ科葉物でも綺麗に育つ品種
虫に食べられやすいアブラナ科の葉物類だが、中には良く育つものもある。
小松菜と同時期に播種し、虫食いはほとんどない野菜がある。
まず一つ目はルッコラ(英名はロケット)だ。ルッコラはアブラナ科の中でも特有のキバナスズシロ属に属し、小松菜やかぶとは別のグループになる。ルッコラには独特のピリ辛な風味があり、時にごまに例えられる。この独特の香り、味で虫が付きづらいのかもしれない。また、比較的品種改良がされていない種類なので自然に近い環境では、虫に発見されにくく育てやすいという面もあるのだろう。
もうひとつは高菜だ。うちで栽培しているのは紫系の高菜で、ルッコラ同様ピリ辛な風味が強い。やはり、ピリ辛が強いと虫も好んで食べないのかもしれない。こちらも虫食いがなく、すくすく育っている。
マスタードに使われるからし菜(マスタードリーフ)やワサビ風味のワサビ菜なども無農薬で育ちやすいと言われている。
無肥料・無農薬は可能性のある農法
無肥料・無農薬栽培は地球環境に与える負荷がとても少ない農法だ。肥料を使わず、農薬も必要としない代わりに、収量や見た目はどうしても劣ってしまうのが現実だ。
それでも、野菜の自給を第一目標にするなら無肥料・無農薬栽培は選択肢の一つに成り得る。自分たちの生活の中でうまく循環するからだ。
一般的に無肥料・無農薬では栽培できないと言われている白菜なども土が出来てくれば、十分食べる事の出来るものが栽培できる。そのことを身をもって証明するために頑張りたいと思う。