ニンニクを植える深さは何センチか
ニンニク栽培はあまりすることがない。草の勢いが弱まる10月ごろに種を植え付けるため、年内は草取りもする必要がない。年を明けて春先になると多少草が生えてくるため、数回草取りをするだけだ。
大きなニンニクを収穫するコツは追肥にアリ! と色々な所で言われているのを見る。確かに立派な、大きなニンニクは追肥の量、タイミング、何を使うかで結構左右されるらしい。
だが、私たちは無肥料・無農薬栽培を基本としている。100点ではないけど、60点くらいのニンニクを資材の投入をしないで作りたい。それには自然の仕組みを上手く活用した土作りと、その土地に馴染んだ自家採種が欠かせないと思っている。そして、その土地に合った最適な栽培管理が求められる。
ニンニク栽培ではできることはあまりない。種を植えたら、あとは草に負けない程度に草取りをするだけ。だから植える深さはとても大事な要素になる。ここでニンニクの一生が決まると言っても過言ではないはずだ。
そこで今年はよりニンニクが本来の力を出せる栽培方法を探ることにした。
浅すぎると冬場に痛む、深すぎると太りが悪い
ニンニクは秋に種球を植え付けて、年内に数センチくらい葉っぱが成長した状態で越冬することになる。そのさい、葉っぱは枯れても問題なく翌春に新しい葉っぱが出てくる。しかし、種球自体が寒さで凍ったりするとそのまま枯れていってしまう。
そのため、深めに植えておかないと寒さの厳しい地域では冬越しできない。大根やニンジンなどを冬越しする際にも地中に埋めることで凍害から避けることができるのと同じ原理だ。
ニンニク栽培の場合、深すぎると肥大が悪くなるため注意が必要だ。これについてはこれといった根拠があるわけではないがいくつか理由が考えられる。
まず一つに、深さが浅い方が芽が出るのが早く、その後の生育期間が長くとれることがあげられる。ニンニクは発芽までに2~3週間かかるため、早く出た方が大きく育ちやすい。また春先も出芽も早くなり、肥大に有利だと思われる。
二つ目に表土に近い方がより肥沃で豊かな土だからだ。特に自然農では耕す事をせず、草や残渣を地表に積んでいくことで土を肥やして行く。そのため、表層数センチがとりわけ豊かになっていく。深い所に植えてしまうと豊かな土に根を張ることが出来ず、結果生育と肥大が劣ることになる。
これらから、ニンニク栽培では植え付ける種の深さが非常に大きな要因になってくる。
植え付け深さを二通りに分けて比較栽培
植え付け深さの設定
2021~2022年のニンニク栽培では種を植える深さを二つに分けて栽培している。
まず、当地の気候を確認する。御代田町は長野県にあり、隣町に全国的にも有名な軽井沢町がある。軽井沢町はケッペンの気候区分で亜寒帯湿潤気候に属する。御代田町は軽井沢町よりも2~300mほど標高が高いがほぼ同じ気候だ。
年間平均気温は9度前後で冷涼であることがわかる。体感的には東北地方の沿岸地域とさほどわからない。冬は最高気温が氷点下の日もあり、最低気温は-15度付近まで下がることがある。
ニンニク栽培という観点からみると、ここで栽培に適しているのはホワイト六片に代表される寒地系ニンニクだ。ニンニクの一大産地、青森県とも冬の降雪量以外は似た気候をしている。
今回は植える深さが生育に及ぼす影響の検証として、二通りに分けて栽培してみた。植え穴の深さを①7cm、②10cmとした。それぞれ7cm、10cmの深さの穴をあけて、底に種ニンニクのお尻がぴったりつくように植え、土で埋めた。種の高さが約3cmあるため、種の頭から地表までは①4cm、②7cmとなる。
寒冷地のニンニク栽培について調べると、植え付ける深さは5~6cm(全農青森)、6~7cm(JA庄内みどり)、10cm(宮城県登米)となっており、結構バラつきがある。しかも、この深さがどこからどこまでも深さなのかわからない。種の上に被せている土の深さなのか、この深さの穴に種を植えているのか、どちらかなのかによって約3cmの差が出来る。後で今年の比較結果を紹介するが、3cmというのは大きな差になった。
このようにどこから何センチなのかわからないと栽培結果も変わってしまう。今回は指定の深さの穴をあけて、そこに種ニンニクのお尻をぴったり合わせるという基準を取った。
植え付けから四月までの様子
2021年10月15日、ニンニクの種まきを行った。
種は種苗店で購入した福地ホワイト六片1kgと昨年収穫したホワイト六片数十個を用意した。植え付け前に薄皮まで剥いて冷蔵庫で発根処理した。
畝は植え付け1ヶ月前に生えていた草を刈り、植え付け前日にもう一度刈払機で深刈りした。地表をレーキで整え、大きな根は取り除いた。
植穴は角材に印をつけてそれぞれ深さを一定にした。そこに種ニンニクを優しく置いたのが画像の通りだ。左側が深さ10cm、右側が7cmとなっており、見える種ニンニクから深さが違うのが分かると思う。
それから1か月後、11月半ばに浅く植えた右側の列は芽が出そろい、もう少し生長すれば冬越しに理想的な大きさだ。一方、深植えの左側はまだ芽が出ていない。
春の兆しが見られる三月上旬の様子。結局深植えのニンニクは芽がちょこっと出ただけで冬越し。浅植えはある程度葉が残った状態で春を迎えた。この段階では浅植えの方が良い結果になると予想していた。
さらに一ケ月経過し四月上旬。深植え、浅植え、ほとんど差がなくなった。気温が上がりだし、一気に生長しだした。
五月から収穫まで
草取りと草マルチで肥大を促す
五月に入り最高気温が20度を超えてきてからは、草の勢いが出てくるため、収穫まで二回程草取りをした。草マルチの下から生えて来た草をのこぎり鎌で地際で刈っていく。刈った草はそのままニンニクの周りに敷いて、地面の露出が無いように管理した。
ニンニクは肥大に養分と水分を多めに必要とするため、ニンニクの根と競合する草は刈っておく。草マルチをしておくことで雨が少ない春先に水分を逃さないようにしておくことが大事だと思っている。
このあたりではもう二通りの差は見受けられない。背丈は両方とも50cm近くまで伸び、茎の直径は1cmほどまで成長した。
収穫! 結果は10cm植えの方が良い!
6月16日に収穫を迎えた。今年は梅雨入りが早く、雨が続くことが予想された為、例年より1週間ほど早いが収穫した。今回の比較は購入した福地ホワイト六片の種球のうち、大サイズ(概ね2cm×3cmほどのもの)の種の収穫物で行う。
下葉も枯れ出し、ニンニクのお尻も平らになっていたため、早すぎるということはなかった。
まずは浅植えの結果から。6cm以上の大サイズはなし、4.5~6cmは11個、4.5cm弱は13個、ミニサイズが5個という結果だった。
一方、10cm、深植えの結果。6cm以上の大サイズが1個、4.5~6cmが14個、4.5cm弱が9個、ミニサイズが4個だった。
合計 | 6cm以上 | 4.5~6cm | 4.5cm弱 | ミニサイズ | |
浅植え | 29 | 0 | 11 | 13 | 5 |
深植え | 29 | 1 | 14 | 9 | 4 |
少しサンプル数が少ないため、分かりにくいかもしれない。売り物になるくらいのサイズが4.5cm以上とすると、浅植えでは11/29(38%)、深植えでは15/29(52%)と結構差がある。また小サイズも少なく、なんとなく大き目だ。
ちなみにミニサイズは株の真下をモグラが通ったと思われる。この圃場がモグラが活発でしばしば野菜の根が傷んでしまっている。何個か確認したら空洞がぽっかり空いていたため、間違いないと思う。
結果としては10cmの方が立派なニンニクが育ちやすかったと言える。次からは10cmの深さに植えていこうと思う。
さらに病害も深植えの方が少なかったように感じる。特にさび病や紅色根腐れ病は浅植えの株に多く見られた。寒さでより根が弱った結果なのかもしれない。
まとめ 植える深さは10cmにする
初期生育の良さや浅植えの方が豊かな表土の養分を吸いやすいと言った考察から、浅植えの方が大きいニンニクが収穫できると考えていた。
しかし、実際は深さ10cmに植えた方がサイズが大きくなった。やはり寒冷地では凍害の影響が大きいのだろう。
最近、無肥料環境で好成績をあげる「垂直仕立て栽培」に取組んでいる。ニンニクでもその効果があるか検証したいと思う。今回の結果を踏まえて、改めて検討するつもりだ。
「【自然農】寒冷地でのニンニク栽培。種ニンニクを植え付ける深さで違いはあるのか【ノーマルチ】」への1件のフィードバック