知名度はないけれど昔からある野菜 ルタバガ
食糧危機を救った野菜?
普段一切聞いたこともないであろう、「ルタバガ」という野菜だが、実は歴史あるすごい野菜だ。
時は1620年。スイスの植物学者によって、スウェーデンで自生している原種が発見された。ということでルタバガはスウェーデン原産とされ、「スウェーデンかぶ」、単に「西洋かぶ」などとも呼ばれている。
ルタバガはアブラナ科アブラナ属で、カブやキャベツの仲間とされている。根部は黄色がかった白色で、品種によって上部が紫色、緑色になるものに分かれる。
第一次世界大戦時、食糧が尽きていよいよ食べるものがないという状況で食べるものとされていた。特にドイツでは1916~1917年にかけて、「ルタバガの冬」と呼ばれた食糧難に陥り、ルタバガを食べて飢えをしのいだとされる。その結果、不人気となり生産量も減少した。
日本では明治時代初期に他の西洋の食べ物と一緒に導入されたが、やはり味が受け入れられず、飼料用にとどまったと言われている。日本でもあまり定着することなく、生産量は激減した。
あまり好かれていない野菜であるが、北欧を中心に今でも伝統料理として食されており、近年では様々なレシピと共に紹介されている。
岩手県に伝わる矢越カブ
そんな不人気野菜のルタバガだが、なんと国内で在来種として定着している。
岩手県一関市矢越地区では「矢越カブ」として、ルタバガの栽培が復活した。
元々ルタバガが日本に導入された明治時代に同地区にも導入され、盛んに栽培された。しかし、米やそのほかの野菜が増産され、一旦栽培が途絶えてしまう。その後平成初期に矢越カブを復活させようと種を探したところ、宮城県気仙沼市に残っていた。その種が再度矢越に持込まれ、矢越カブの生産が再び始まった。
現在では20aほど栽培されている。今は在来種が見直され、栽培が広がっていく可能性もある。
ルタバガのすごいところ
脅威の貯蔵性 自給用に最適
ルタバガは元々野菜というより、主食としての役割があったようだ。日本では食糧が乏しい時代に米の代わりとして嵩増しに使われていた。
それはルタバガの貯蔵性の良さがあるからだ。ルタバガは収穫後、適切な条件に管理すれば最長6カ月も貯蔵できることが知られている。むしろ、収穫後に貯蔵することで甘みが増し、食味が良くなる。
貯蔵に最も適しているのは気温0度、湿度95%と言われている。温かい地域ならば軒下、寒さの厳しい山間部や寒冷地では廊下や玄関に置いておくだけで良い。乾燥させ過ぎると良く無いため、新聞紙でくるんだり、段ボールに入れて置くと良いだろう。
耐寒性抜群 寒冷地でも良く育つ
ルタバガの特筆すべき特徴のとして耐寒性が高いことがあげられる。もともとスウェーデン原産の野菜であり、かなり耐寒性が高い。そのため、日本では北海道や岩手県の内陸部など寒さの厳しい地域での栽培が盛んだった。
旬の季節は秋冬で、霜にあててから収穫することが推奨されている。植物は寒さに当たると、自分が凍ってしまわない様に糖分を蓄えるため、霜が当たるような寒さの中で甘くなっていく。
大根やかぶなどの似ている根菜類も霜が当たると甘くなるが、強い寒さに当たり過ぎると枯れてしまう。-5度以下になると概ねだめになってしまう。しかし、ルタバガはなんと―15度の低温を耐えることができるとも言われている。葉の部分も氷点下の低温に当たっても青々としている。
寒冷地の真冬は食べられる作物が限られてしまう。その中でも貴重な野菜としてルタバガは重宝する。
ルタバガの調理例
じっくり焼く
ルタバガはかなり固い野菜だ。特に真冬の寒さに当たったルタバガは非常に固くなる。生でも食べられるが、やはりルタバガは火を通して食べるのがおすすめだ。
おすすめはオーブン調理。ルタバガだけでなく、じゃがいもやかぶ、人参、大根などの根菜をまとめて放り込んでおく。200度で20分ほど焼くと、ほくほくの根菜ローストの出来上がり。軽く塩を振って食べると、甘みが強調されて美味しい。放っておくだけで完成するため、とても簡単だ。
フライパンでじっくり焼いても良いが、かなり時間が掛かる。コンロで焼く場合は少量の水を入れて蒸し焼きにすると良い。
煮る
ルタバガは煮るのもおすすめだ。実が締まっており固いため、火を通しても実崩れしにくい。じゃが芋と味が似ているため、その代わりに使うと実崩れが気にならずじっくり煮込むことができる。
和風よりも洋風のシチューやコンソメスープに合う。火が通りにくいため、小さめにカットしておくが時短になる。
ポタージュスープ
私たち一押しの食べ方がポタージュだ。ルタバガの甘みやうまみがストレートに感じられ、ほっと息を付ける美味しさだ。初めてルタバガを食べたのもポタージュだった。その時の優しい甘さに心を奪われた。
ルタバガは火が通るのに時間がかかるため、1cm角くらいに切って茹でる。皮を少し厚めに切ると、甘さを引き立てることができる。沸騰して15分ほど茹で、柔らかくなっているか確認する。
茹でたルタバガと牛乳をミキサーにかける。しっかりと火を通しておかないと滑らかにならないため注意する。塩で味を調えて完成。調味料は塩だけで素材の味を存分に発揮させる。
番外編 葉っぱを食べる
ルタバガは地下部の根を食するが、地上部の葉っぱも食べられるのではないかと思い、実際に食べてみたことがある。
外側の大きい葉っぱは固くなっているため、内側に近い、新しい葉っぱを使う。長さ15cmくらいまでの葉っぱを使うと良い。
味はキャベツに近いような、少し癖がある。ケールに近いかもしれない。生よりは、炒め物として食べるのが良いだろう。結構味がしっかりとあるので塩を効かせると美味しく食べられる。
スーパーには売っていないスーパーベジタブル
基本的にルタバガは一般のスーパーでは売られていない。栽培者も限られているし、他の野菜と比べると使い道もないからだろう。しかし、ルタバガは適切な調理をすれば、十分美味しく食べられる。
大規模に栽培されていないが、小規模でこだわった野菜作りをされている人は意外と作っていることがある。直売所やマルシェなどに足を運んだ際に探すと、案外扱われていたりする。ルタバガを栽培している生産者は他にも珍しい種類の野菜を栽培していることが多い。